第9ターン➁
「ヘタレ」
まあ、確かにあの時私の国の人々を、国民をバカにしたから思いっきりひっぱたいてやった時の事を思い返した。
その時のギャン泣きで、スゴスゴ帰って行ったのを思い返せばそれも納得かな、と。
アナベルは納得。
「彼は一国を治めるにはヘタレすぎます。」
ターニャ。
「そこで、父君が出張って来たと。」
私。
「そうです、目障りな国を潰すのと、ヘタレ王子に戦の実践を積ませるのと、奪い取るのと兼ねての行動だと。」
そこで、私はハッと思いついた。
「そうだ、あの時あのハンス・オーゲン・ユルゲンス侯爵子息と色々条約を交わしたはず。」
ターニャはしずかに首を振った。
「あんなものは気休めでしかありませんお姉様。強国が一方的に破棄するなんてこの戦国時代、当たり前のこと。」
それを聞くと、折角ここまで築いてきたものがまた、めちゃくちゃになるなんて。
悔しく歯噛みしていると。
「でも、大丈夫よ、お姉様。お兄さまが何とかして下さるはず。」
そっと、私の手を握って。
「私のお兄さまが全軍上げてこの国に援軍の用意をしてるわ。そして私の未来の旦那様も前面に出れないけど、後詰めの用意をするって約束してくれたわ。」
「でもなぜそこまで?」
ターニャは意味ありげにニヤニヤしながら。
「愛しの姫君をお救いするのは、それはそれは颯爽と白馬に乗った王子様の役目ですわ。」
「はい?」
フンスと息巻いてターニャはいった。
「もう、お姉様も鈍感ね、お兄さまがお慕いしているのは、お姉様、アナベル様なんです。」
あれは、冗談だとばかり思っていた。
私の呆けた顔に、ターニャは深いため息をつきながら私の肩をガシッと掴み。
「いいこと、お姉様、奥手なのは淑女としてそれは美徳かもしれませんが、愛の勝負所を見極めて一気呵成に突き進むのもこれもまた女の戦、勝負所でしてよ」
フンスと鼻息荒く、ターニャのその肩を握った手により力が入った。
「あの」
執務室を離れ、会議室の前室の隅で話込んでいた私たちに声をかけてきたのはヴァル君だった。
「失礼します、探しましたアナベル様」
チラとターニャの方を見た事でピンときた私は。
「大丈夫です、この方はわたしの大切な妹ですから、言ってもらっても差し支えありません」
そう言うと。
「お姉様」
と、首に飛びついてきて整体の時のように、腰がゴキッと鳴った。
「分かりました、国境守備隊からの報告で貴族盟約国の三個師団が移動している模様、現在緩衝地域手前一REまで進軍との事」
「「え」」
私とターニャは同時に声を上げた。
ターニャの顔に余裕の色が無くなったのが分かる。
「三個師団も動かすなんて。脅しとばかり思っていたけど」
ターニャは呟いた。
「大本営は当該地域の住民に退避命令と主力軍団を現地に向かわせました、それと確認中ですが敵後方にまだ後続の軍が移動中との報告があります」
ヴァル君の最後の報告に私たちのさっきまでの空気が、一気に凍りついた。
(戦は回避しなくては、折角ここまで復興したのに)
ギリッと拳に力が入った。
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