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第48話



 戦闘が始まって10分近くが経過しただろう。

 ……なのに俺は未だデュラハンに対して攻めあぐねていた。


 あまり時間をかけたくはない。長引けば長引くほど、街への被害が広がる可能性があるからだ。


 そんな俺の心情を理解したかのように、俺の一撃を受けたデュラハンが一度大きく距離をあけた。


 ……怯んだ?

 その希望は一瞬で砕かれることになった。デュラハンの体からあふれた魔力が彼の全身を飲み込んだ。


 あれは――。

 理解した次の瞬間。


 憑霊を二つ同時にまとった俺へと、デュラハンが迫っていた。

 身体強化系と思われるデュラハンのスキルだ。


 俺が戦ったときも一度見せられたスキル。

 一瞬でデュラハンの大剣が俺へと迫る。

 これまでと同様にかわしてから、反撃を――。


 そう思ったが、それより先にデュラハンが動いた。

 結局俺の攻撃がデュラハンを傷つけることなく、憑霊の限界時間を迎える。

 足を止めた俺をあざ笑うようにデュラハンの大剣が振りぬかれた。


 嘘だと思いたかった。

 しかし、デュラハンの速度は二つの憑霊をまとった俺とほぼ同じ程度まで上がっていた。


 【ウォリアオーク】、【サムライオーク】。

 現状俺が持つ中で最高の憑霊を同時に二つ、まとう。


 先ほどはたまたまだと。そう自分を納得させるためにデュラハンへと迫り、剣を振り下ろす。

 しかし、デュラハンはその速度についてきた。


 あっという間に活動限界を迎え、俺の足が薙ぎ払われる。

 ……デュラハンのスキルが解除されるまで時間を稼ぐ。

 情けなく、泥臭い戦いだとあざ笑われても構わない。

 

 俺がデュラハンを倒すために時間を稼ぐことを考えたが――奴のスキルは一向に解除されない。


 どうすれば……。

 どうすればいいんだ……!


 打開策が思い浮かばなかった俺は、さらにもう一つ憑霊を発動する。

 合計三つの憑霊……これまで一度も試したことがなかったそれはしかし――。


「ぐぅぅぅぅ!?」


 激痛が全身を襲った。【再生の勇者】のレベルが上がってからはなかった久しぶりの痛みに、むせてしまう。


 ……二つのとき以上の反発が体内を襲い、とてもじゃないが体を動かすことはできなかった。

 その隙に、デュラハンの大剣が俺の首をはねた。


 ……打つ手が、ない。

 それでも迫るデュラハンを、何とか二つの憑霊で捌く。

 捌くのが限界だ。

 すぐに活動限界を迎え、解除されてしまう。


 その隙に再び体が両断された。


 ……くそっ!

 勝ち目のない戦いだ。


 考えろ……考えるんだ!

 ここで何としてでも俺が倒すしかない。


 この15階層から今は誰も外に出られない。援軍は期待できない状況だ。

 もしかしたら扉の外では騎士隊長とギルド長が待っているかもしれない。

 その援軍を入れるには、ここにいる冒険者の誰かを殺すしかないんだ。


 そんなことは……出来ない。

 かといって、ここでずっと俺が戦い続けるわけにも行かなかった。

 外は確実に魔物たちが増え、街を襲う準備が整っているはずだ。

 

 そうなればルーナが……大事なルーナまでも、魔物たちの餌食になってしまうかもしれない。


 このままここでじり貧な戦いを続けていくわけにはいかない。

 急がなければならない……だが、俺の剣はデュラハンには届かなかった。


 体が殴り飛ばされ俺は、入り口近くまで弾かれてしまう。

 ごろごろと大地を転がった俺の体をべったりとした血が付着した。


 そこは、アローの死体が転がっていた。

 血のいくらかは固まりつつあったが、それでも彼のまぎれもない死体がそこにあった。


「……」


 俺は片腕を伸ばした。

 その手の先は、アローの心臓を掴んだ。

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