第47話
デュラハンが俺の方へと体を向けてくる。
……顔があるわけではないので、本当に俺を見ているのかはっきりとは分からない。
しかし、デュラハンに睨まれているような感覚はあった。
デュラハンがゆっくりと迫ってくる。
よろよろと体を起こしたエフィへと、デュラハンは走り出す。
エフィへと距離を詰めたデュラハン。俺はその間に割りこみ、ウォリアソードを振りぬいた。
デュラハンが大剣で受けとめる。
「おまえの相手は俺だ!」
どうやらまだエフィへとヘイトが集まっているようだ。
だからこそ、俺を印象付けるために刀を振りぬく。
俺の抜刀をデュラハンは身をそらしてかわす。しかし、俺は斬撃をデュラハンがかわした先へと放つ。
俺の見える抜刀はかわしたが、見えざる斬撃まではかわしきれなかったようで、デュラハンの体を斬撃が襲う。
その黒鎧に傷をつけながら、体を弾いた。
地面をすべるように受け切ったデュラハンは足を止め、こちらをじっと見た。
「……」
……ようやく、俺を敵として認識してくれたようだな。
あまり周りを庇いながら戦えるほど余裕があるわけではない。
これでようやく、周りを気にせず一騎打ちが出来るというわけだ。
「……」
一瞬の間のあと、デュラハンが大地を蹴りつけた。
速い。
それをぎりぎりで捌いていく。
やはり、デュラハンは格上だ。俺はデュラハンの攻撃のすべてを捌き切ることは出来ず、腕、足へと切り傷が生まれる。
だが、多少の傷であれば【再生の勇者】で瞬く間に傷はふさがる。
デュラハンの大剣にまとわりついていた黒い魔力が俺の体へと襲い掛かる。
なんだこれは? 一瞬、気力などが持っていかれたような感覚があったが、すぐに俺は普段の状態へと戻る。
振りぬいたウォリアソードがデュラハンとぶつかる。
片腕では受け切れない。だが、こちらも攻撃の手を緩めるつもりはない。
俺は即座に刀を振りぬく。デュラハンは寸前で攻撃をかわし、俺の左腕へと大剣を叩きつけて来た。
「ぐぅ!?」
左腕が切り落とされる。
俺は取りこぼしたウォリアソードを右手で回収しながら、腕の再生を待った。
……やはり、強い。
俺は一度距離をとり、デュラハンと改めて向かいあう。
そして、剣戟が始まる。
デュラハンの攻撃を寸前でかわし続ける。
ぎりぎりまで引きつけ、敵の隙を突いていくのだが攻撃は当たらない。
デュラハンの大剣によって、頭を弾かれた俺は……一度深呼吸をしてデュラハンと睨み合う。
「……足りない、か」
今の俺では勝てない。それははっきりと分かった。
ここで長時間戦闘を繰り広げるわけにもいかない。
なぜなら、外では今も魔物が発生し、街を危機にさらしているからだ。
……まだまだ、上手く使いこなせるわけではないが、やるしかない。
俺は【ウォリアオーク】と【サムライオーク】の両方を纏い、一瞬でデュラハンとの距離を詰め、刀と剣を振りぬいた。
俺の二撃は、これまで以上の速度で以てデュラハンの鎧を傷つけた。
――押しているッ。
二つ同時に憑霊を行えれば、デュラハンの身体能力を上回ることができる。
しかし、攻撃はその一瞬だ。体の維持が難しくなり、俺は憑霊を強制的に解除してしまう。
痛みのほとんどを感じなくなった体に、憑霊による負担がどっとのしかかり呼吸が厳しくなる。
動きを止めた俺へと、デュラハンの剣が襲い掛かる。
「くっ!」
あっさりと体が両断される。
すぐに再生し、何とか続いての攻撃をかわすことはできた。
憑霊を二つ同時にまとえば攻撃を当てることもできる。
だが、それによって反撃をくらってしまう。
……【再生の勇者】がなければこれは無謀な特攻だ。
だが、俺には無限に再生できるアドバンテージがある。
「ハァ!!」
さらにもう一度憑霊を二つまとい、デュラハンへと攻撃を当てた。
デュラハンの様子がまるで変わらないため、ダメージが入っているのかどうかも分からない。
だが、俺にはこれ以外の技は何もない。
これが、今の俺が出来るデュラハンを倒しうると考えられる最大の攻撃だった。
俺は二つ同時の憑霊を繰り返し、デュラハンを削っていく。
何度も腕を斬られ、頭をはねられようとも。
憑霊による疲労と痛みに襲われようとも。
俺がこのデュラハンを破るにはこの技しかない。
それをただ、繰り返すしかない。
圧倒的強者を破れると、自己暗示でもなんでもいい。
自分の今の戦いが正しいと信じ、俺は刀と剣を振りぬいていった。
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