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ホテルをチェックアウトして、僕たちはいつもの店へ行った。彼女の前にはオムライス。僕はビーフシチューをつまみにハイボールを飲んでいる。
「だけど、あの時は驚いたな」
「ホント! あなたが裕子の旦那だったなんてびっくりだわ」
よほど腹が減っていたと見えて彼女はスプーンに山盛りすくったオムライスを大きく開けた口の中に運んだ。
「ねえ、あなた。今度の日曜日、車出しと、ついでに運転手をお願いできないかしら?」
妻が唐突に口にした。
「運転手?」
「そう。テニスの大会があるんだけど、いつも車を出してくれるコーチが怪我で運転できないのよ」
「どこまで?」
「臨海地区のコロシアム」
「解かった」
「ありがとう」
ワンボックスカーの助手席に妻を乗せて集合場所まで行った。妻のほかに三人の女性が待っていた。
「お待たせ。どうぞ、乗って」
そう妻が促すと、三人は後部座席に乗り込んだ。
「よろしくお願いします」
三人のうちの一人が声を掛けた。僕はバックミラー越しに乗り込んだメンバーを見た。
「えっ!」
思わず声を出してしまった。
「どうかした?」
「いや、何でもない。じゃあ、出発しますよ」
試合会場に着くと妻たちは選手控室の方へ消えて行った。僕は試合が終わる頃に迎えに来ればよかったのだけれど、スタンドで試合を観戦することにした。妻がテニスをしているところを見るのは初めてだった。しかし、僕が見たかったのはダブルスで妻のパートナーをしている女性だった。ここへ来るまでの運転中も彼女がずっと気になっていた。
試合が終わって戻ってきた妻たちを僕は労った。
「この後、打ち上げやるんだけど、あなたも来る?」
妻がそう言うと、他の女性たちも「是非いらして下さい」と誘ってくれた。先に車で店に妻たちを送り届けてから、僕は車を置いて、後から妻たちに合流した。




