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 彼女は僕の腕にしがみつきながらもどうにか歩くことが出来た。

「どこまで送ればいいですか?」

「そこ」

 彼女が指さした先にあるのはラブホテルだった。

「えっ?」

 僕が戸惑っていると、彼女は急に力強く僕の腕を引っ張って歩き出した。

「はやく! もたもたしてたら誰かに見られるわよ」

 僕は仕方なく一緒のそのホテルに入った。彼女は適当にルームナンバーを推してフロントで鍵を受け取った。

 部屋に入ると、彼女はベッドに倒れ込んだ。そして、僕を追い払うように手を振った。

「もう、帰っていいわ。こういうところ、一人じゃ入れてくれないから…。ありがとう…」

 そうは言われても、一人でここを出て行くのも気まずい。そのうち、彼女はすくに寝息を立て始めた。

 結局、僕は彼女が目を覚ますまで部屋に居ることにした。


「あなた誰? 私に何かした…」

 彼女の声で僕は目を覚ました。ベッドわきのソファで。この状況に彼女はパニックになっているようだった。

「…いや、ごめんなさい。私が連れて来たのね…。またやっちゃったか…」

 ところが、すぐに思い出したようで僕に向かって頭を下げた。

「大丈夫ですか?」

 僕の問いかけに彼女は何も言わず、ただ頷いた。

「いつもはマスターに送ってもらうの…」

 彼女はこれまでの経緯を話してくれた。


 月に一度程度、旦那が出張するたびに彼女は一人であの店に来ていたらしい。初めて彼女が酔いつぶれた時、居合わせた客に声を掛けてホテルまで連れて来てもらったのだと言う。後日、店でマスターのその話をすると、それ以来、彼女が酔いつぶれると、マスターが車で家まで送ってくれていたのだそうだ。


 そんなマスターが昨夜は彼女を僕に押し付けた。

「きっとあなたなら安心だと思ったんじゃない?」

 彼女はそう言って笑った。初めて見た彼女の笑顔に僕はドキッとした。

 ホテルを出ると僕たちは別々に歩き出した。僕は駅へ向かって。彼女は反対方向へ。

 

 そして、もう会うことはないと思っていた彼女に次に会ったのは意外なところだった…。



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