かのちゃんへ
かのちゃんへ
かのちゃん、ごめんなさい。
かのちゃんがこの手紙を読んでいる頃には、私はもうこの世にはいない。
私は自殺するの。
でも、私が死ぬ理由は、かのちゃんとは少しも関係がない。
だから、かのちゃんは、私が死んだことで悲しんだり、悔やんだりしないでね。
かのちゃんは、私の身勝手に付き合わされた被害者でしかないから。
とは言っても、かのちゃんは納得できないと思うから、私が自殺する理由を少しだけ書くね。
私は、元々生きていちゃいけない人間なんだ。
七年前のビル火災で、死んでいるはずの人間。
だけど、私は生き延びちゃった。本当は生き延びるはずの人たちを犠牲にして、私は生き延びた。
犠牲にしちゃったのは、私が大好きだった人たち。
その人たちは、きっと私に前を向いて生きて欲しかったんだと思う。
でも、私にはそんな強さはなかった。
ビル火災の後、私は、ずっと死にたいと思って生きてきた。
早く死んで、大好きな人たちと一緒に暮らしたいってずっと思ってた。
だけど、私は本物の臆病者。自ら命を断つこともできなかった。
そのせいで、かのちゃんを含む、多くの人に迷惑を掛けることになった。
二年前、私は、アイラッシュを結成した。
それは、天国にいる大好きな人たちへの恩返しのつもりだった。
だけど、実際には、それは私の自己満足に過ぎなかったんだと思う。
私は、私自身が夜にうなされないために、アイラッシュを作ったんだ。
私の大好きな人たちは、私が過去に追いすがることなんて、望んでないと思う。
だけど、私は、こういう生き方しかできなかった。
七年前のビル火災を忘れることも、克服することも、私にはできなかった。
だから、私は、アイラッシュを結成してしまった。
それによって、多くの人を騙すことになった。
メンバーになってくれたまおりちゃん、りんなちゃん、さつきちゃんには本当に申し訳なく思っている。
特に、さつきちゃんはあんなことになっちゃって、私はどう責任を取って良いのか分からない。
それから、アイラッシュのファンになってくれた人たちも、私はずっと騙してた。
私の自己満足に付き合わせちゃってごめんなさい。
そして、じゅりちゃん。
じゅりちゃんはアイラッシュのせいで狂ってしまった。だから、じゅりちゃんは、私に対して、あんなことを……
それは、じゅりちゃんの責任ではなく、私の責任。全部私が悪いの。
だから、私は自殺する。
私が死んで、アイラッシュを終わらせることが、私ができる唯一の償い。
そして、それは本来のあるべき姿に戻すこと。
私は、本来生きていてはいけない人間。
アイラッシュも、本来存在してはいけないユニット。
ヒナノがいないのであれば、なおさらに存在してはいけない。
私が死ぬことで、全てを正常に戻すことができるんだ。
アイラッシュさえ終わらせれば、私が死ぬ必要はない、とかのちゃんは思うかもしれない。
でも、それはできないの。
私は、アイラッシュに依存してしまっている。
私はもう、アイラッシュなしでは生きていけないの。
私は死ぬことを決意した。
だけど、一つだけ心残りがある。
何か分かるよね?
かのちゃんだよ。
まず、かのちゃんには、心から謝りたい。
せっかく付き合えたのに、こんなことになってしまってごめんなさい。
ディズニーに行く約束も、USJに行く約束も反故にしてしまってごめんなさい。
翌日に自殺するなんて、あり得ないよね。
じゃあ、最初から約束するなよって感じだよね。
ただ、私は決して、かのちゃんをからかうつもりで、守る気もない約束をしたわけではないの。
私が自殺を決意したのは、かのちゃんと約束してからシャワーを浴びた後、瓶の中の毒薬に気付いた時。
それを見て、じゅりちゃんに殺されるわけにはいかないと思ったの。
毒薬を見た時、私は、さつきちゃんもじゅりちゃんに殺されたんだと気付いた。
だから、私は、じゅりちゃんがこれ以上罪を重ねる前に、私が死に、アイラッシュを終わらせようと決心した。
そこでようやく踏ん切りがついたの。
でも、私がかのちゃんを抱いたのは、自殺を決心した後。
かのちゃんとしては騙された気分かもしれないけど、私は、最後にかのちゃんと一緒になれて良かった。
あの時だけは、辛いことを全部忘れられた。
本当だよ。昨夜が永遠に続けば良いのに、と心から思った。
かのちゃんともっと早く出会えていれば、私の人生を変えられたのかもしれない。
かのちゃんともっと早く出会えていれば、私は、私のために生きることができたのかもしれない。
最初に戻るけど、かのちゃんは、私が死んだことで悲しんだり、悔やんだりしないでね。
私は、かのちゃんが私の死に囚われることを少しも望んでない。
私の分まで生きて、だなんておこがましいことを言うつもりもない。
かのちゃんには、前だけを見て、かのちゃんの人生を生きて欲しい。
ただ、私に一つだけわがままを言わせてもらえるのであれば、かのちゃんには、じゅりちゃんが幸せになるための手助けをして欲しい。
じゅりちゃんは、私なんかと立場が違う。
じゅりちゃんは幸せになって、じゅりちゃんの人生を全うしなきゃいけないの。
かのちゃん、本当にごめんなさい。
謝ってばかりは良くないね。
最後に感謝も伝えさせて。
かのちゃん、私と出会って、私を愛して、シオンを愛してくれてありがとう。
私、思うの。
もしかすると、本当の私は楠木なずなじゃなくて、シオンだったんじゃないかって。
七年前の十字架を背負っていないシオンこそが本当の私だったんじゃないかって。
だから、かのちゃんがシオンのファンになってくれて本当に嬉しかった。
そのかのちゃんが、楠木なずなも愛してくれて、短い間だったけど、私は幸せだった。
それから、かのちゃん、今日はお弁当を作ってくれてありがとう。
これから劇場に行って、かのちゃんの手作り弁当を食べるのを楽しみにしてるんだ。
最期に食べれるのがかのちゃんの手作り弁当で、本当に良かったな。
なずなより




