個人訪問
家族全員げほげほしています。
その日門番から緊急警報が発信された。
俺はラケシス様に食堂で待機していてほしいとたのんだ。
ラケシス様は俺の真剣な顔に何も疑わずに頷いてくれた。
俺はラケシス様に笑顔をむけて言った。
「ありがとうございます。」
「私が居たら、やり辛いって事だろ。」
「いえ、隊長はラスボス的に最後に出てきてほしいと思っているだけですよ。」
「………解った。」
ラケシス様は、いちよう納得してくれたようだ。
俺はそのまま門番のもとに向かった。
門番の案内で客の前に出向くと俺は頭を下げた。
「どうしましたか?水の隊長ルドルフ先輩。」
「お前なんか呼んでないんだが?風の隊長はどうしましたか?」
「何であんたなんかの前にうちの大事な隊長を差し出さなきゃいけないんだ?」
暫くの沈黙の後ルドルフは手のひらを地面にむけて呟いた。
「ウエーブ。」
精霊か?
俺は一歩後ずさった。
地面から女性の形をした水の精霊が現れるのと同時に俺の目の前にラケシス様の契約精霊のウンディーネが立ちはだかった。
「下級精霊の分際で私の男に手を出そうって言うの?覚悟は出来てるのかしら?」
ウンディーネの言葉にルドルフの精霊は慌ててルドルフの後ろにまわり、ルドルフを楯にした。
「ウンディーネ。俺はお前のじゃないぞ!」
「ケチケチしないでよ!折角助けに来たんだから!」
「ラケシス様に言われたのか?」
「私を呼ばれないと姿を現せない下級精霊だとでも思ってるの?失礼しちゃう!」
どうやら、ウンディーネはラケシス様に命じられたからではなく俺を助けに来たようだ。
「クライブ!お前いつから水の精霊と契約しているんだ?」
ルドルフは眉間にシワをよせている。
「ウンディーネは俺と契約している訳ではなくて、ラケシス様の契約精霊ですよ。」
「なんと!ではやはり、ラケシスは水の隊に入る方が良いじゃないか!」
ルドルフの言葉にムカついた。
まあ、ムカついたのは俺だけではなかった。
門の脇に焚かれた松明からフェニックスが飛び出してきた。
腕をグルグルと回しながらフェニックスは言った。
「よう~兄弟!こいつを消し炭にしても良いよな!」
「フェニックス、ラケシス様にこっぴどく叱られるぞ!」
「俺が駄目なら、パズズをけしかける!」
「魔王召喚は近隣の被害がでかすぎる。国を滅ぼすってラケシス様が決めた時だけにしてくれ。」
フェニックスはあからさまに不服そうに口を尖らせた。
フェニックスを見てルドルフは目を見開いた。
「火の精霊?」
「彼もラケシス様の契約精霊です。安易に水の精霊を連れているからって、水の隊になんて馬鹿なこと言わない方が良いですよ!どっちにしろラケシス様はすべての精霊に愛されて居るのですから。」
「精霊に愛されて居る?」
フェニックスはルドルフから視線をそらした。
「いい匂いがするな。」
フェニックスの呟きに俺は少しだけ食堂の方を見て言った。
「ラケシス様がアップルパイを焼いてる。」
「マジで!手伝って来よう!」
フェニックスは鳥の姿に変わると食堂に向かって羽ばたいた。
「フェニックスにまかせて大丈夫なの?」
「何か不都合があればラケシス様が言うことをきかせるさ!ウンディーネが心配することない。」
ウンディーネは心配そうに食堂の方を見ている。
俺はウンディーネの頭をポンポンして笑って見せた。
ウンディーネはニッコリ笑顔を返して言った。
「私はクライブのそばに居てあげる。」
「別に大丈夫だぞ?ラケシス様が心配ならそっちに行っても。」
「良い男が居るんだからこっちの方が良いでしょ。呼ばれたら飛んでいくけどね。」
俺は少しだけ笑って見せた。
「さあ~て、水の隊長。お帰りはそちらですよ。」
俺は笑顔でルドルフの後ろを指差してやった。
苦苦しい顔のルドルフに俺は内心高笑いだった。
それでもルドルフは帰る気がないようだった。
「クライブ!お客さんか?」
「違います!」
そこに、食堂の窓からラケシス様が顔を出した。
まずい。
「風の隊長!水の隊長ルドルフです!今日は貴女に会いにやって来ました!」
ラケシス様はキョトンとした顔の後笑顔を作って言った。
「貴方とは関わらないとエイラム様と約束をしています!お引き取り下さい。」
ルドルフの心の折れる音を聞いたきがした。
ラケシス様は俺の言ったラスボスの役目を忠実にこなしてくれたようだ。
「ラケシス様はエイラム様が絶対だからな~!」
俺は遠くを見つめて呟いた。
この数日後に火の隊長のオルロフも同じ目に合う事をその時の俺は予知することが出来ていた。
旦那様が肺炎だと診断されました((('_';)




