24話
ロムア様はうなずくと、私の薬に魔力を流し込んでくれる。薬が青白く輝き、出来上がった。
レオン様は私が何も言わなくてもすぐに、私のことを抱き上げると、リリーお姉様の所へと連れて言ってくれる。
「くそっ! させるものですか!」
メリザンドの声が響き渡ると青い炎が立ちのぼり、私達の邪魔をしようとする。
そんな私の道を開くように、ジョンが咆哮を炎に向かってすると、道が出来上がる。
私は、レオン様に向かって叫んだ。
「レオン様! 私を投げてください!」
「なっ!? それは!」
「お願いしまう!」
レオン様が戸惑っていると、妖精達が私の周りへと飛んできた。
「シャーリーは私達が守る!」
「だから、いっけぇ!」
「飛べー!!!」
レオン様は覚悟を決めると言った。
「今回だけだぞ!」
「はい!」
「信じている」
レオン様はそう言うと私を勢いよく炎のトンネルの中へと投げた。
そんな私の周りを妖精達がくるくると回っていて、ちょっと熱いけれど、堪えられる。
「きゃー! あっつい」
「シャーリーったらおてんばさん!」
「けどそんなシャーリーがだいすき!」
妖精達の光が私を守ってくれる。そして炎のトンネルを出た先にお姉様の姿があり、私はお姉様に抱き着いた。
「お姉様!」
「うううううううううう」
お姉様はうなり声をあげていて、意識がないようだった。
メリザンドに体を乗っ取られていたから、きっと苦しかったと思う。
「大丈夫。今度こそ。さっきは魔女と繋がってしまっていたから、魔女の力で効果を打ち消されたのだと思います。だから今度こそ!」
お姉様の口の中へと薬を流し込むと、お姉様がゴクリとそれを飲み込んだ。
私はそれを見てから、今度はお姉様の背中に生えている翼に、魔力抑制剤をかけた。
すると、翼は見る見るうちに小さくなり、青い光が瞬いたかと思うと、小さな青い鳥へと姿を変えた。
魔力抑制剤により、メリザンドが吸い上げた魔力は空気中に霧散していった。
「やった!……けど、うわあぁぁぁぁぁぁ」
体の中の魔力が無くなり、青い鳥との繋がりが切れたお姉様と私はそのまま真っ逆さまに落ちていく。
アカ・キイ・アオの三人が私達の体をどうにか空中できゃっちするも一緒に落ちていく。
「きゃー! 二人はむりー!」
「おちるぞー!」
「たすけてー!」
妖精達は大きな声でそう叫ぶ。
「お願い! お姉様を助けて! 私はいいから!」
妖精達はその声に、驚くものの、下からジョンに乗ったレオン様が来たのを見て笑って言った。
「じゃあ、お姫様は王子様に任せるわ!」
「そうね!」
「賛成~」
私から妖精達がぱっと手を離すと、ジョンに乗ったレオン様に私は抱き留められた。
「きゃっ」
「大丈夫か?」
「レオン様……はい。二人とも、ありがとうございます」
するとジョンに運ばれ私達は地面へと降りる。
そこには、ルッソとロムア様と対峙するルパート様の姿があった。
ルパート様の肩には、青い炎の薔薇が咲いており、そこからメリザンドの声が響いて聞こえた。
「くそぉ! ルパート! 青い鳥を取り戻して! あれだけは!」
魔女の声に皆の視線が、青い鳥へと向かう。
青い鳥はぴよぴよと鳴きながら、私の肩へとちょこんと乗った。
これが魔道具? 確かによくよく見れば生きている鳥ではないことが分かる。
ただ、想像していたものよりもかなり可愛らしい。
ロムア様が私の横に立つと、指を差し出す。
青い鳥はロムア様の指にちょこんと移る。そんな鳥に、ロムア様がちゅっとキスをしたその瞬間、小さな青い鳥は、美しい大きな青い鳥へと姿を変え、ロムア様の腕に停まる。
「あぁ。クラーク家の悲願が、ようやく叶った」
その瞬間、周囲に雪が降り始め、近くに会った青い炎の薔薇は、その勢いを弱めていく。
ロムア様が私を見ると笑顔を浮かべた。
「小さな妖精さんのおかげだな」
するとメリザンドは悲鳴を上げた。
「あぁぁぁ。やっと手に入れた青い鳥が! くそ。くそ! ルパート! あれを、取り戻すのよ!」
「無理だな……今は、どうにか逃げるしかないだろ」
ルパートの言葉にメリザンドは怒り狂う。
「そんなのダメダメダメ!」
ルパートはこちらに向かって両手をあげると言った。
「降参する。命だけは助けてほしい」
「だめぇぇぇぇぇっぇ」
その言葉に、メリザンドは叫び声をあげるが、そんなことを気にしないようにルパートは告げる。
「敵うわけがない」
「そんなの、わからないでしょうがぁぁぁぁあ! この役立たずがぁぁぁ!」
諦めの早いその様子に私は違和感を覚える。
ルパート様はこんなにも聞き分けのいい方だっただろうか。
その時、森のいたるところで魔獣の鳴き声が響き渡り始め、煙が上がる。
ルパートは微笑みを浮かべると言った。
「だがまぁ、俺達のことよりも、森や、仲間のことを心配した方がいいかもしれないな」
爽やかな笑顔で告げられ、一体何のことかと思った時のことだった。
ルッソが突然、膝をつき、胸を抑えた。
「ぐっ……な、なんだ……」
すると、森の陰から、こちらへと森の民の子ども達が走ってくるのが見えた。
「シャーリー! 聖獣様ぁぁぁ」
森の民の子ども達は、出来るだけ安全な位置で、伝達役に走ることが多い。
どうしてこんなところに!?
私は駆け寄ってきた子ども達に尋ねた。
「皆、一体どうしたの!?」
すると、一人の子どもが荒い呼吸を整えながら叫んだ。
「森の中の、至る所で魔獣同士が争って煙が! それに、森の民の皆が、変なんだ! 胸を押さえて倒れだして!」
「え!?」
私は胸を抑えるルッソの方へと駆け寄ると、胸に文様が広がっている。
これは魔女の呪い!?
慌ててルパート達の方を振り返った瞬間、青い炎の火柱が立ち、こちらに向かってルパートが手をひらひらと振る。
「いずれ、また」
ジョンや妖精達が捕まえようとしたが、その姿は一瞬で消えてしまった。
「くそっ! 油断した!」
妖精達は声を上げた。
「私達は追いかけてみる!」
「ジョンは森の獣を!」
「もうもう! 大忙しすぎるー!」
妖精達は飛んでいき、ジョンは私達の方へと視線を向けると言った。
「シャーリー! レオン! ここは任せてもいいか!」
その言葉に私は一瞬悩む。
ここを任される? ということは、私達だけで呪いの症状の出た森の民と、そして森に広がる青い炎の薔薇に対処しなければならないということだ。
私に、出来るだろうか。
すると、レオン様が私の手をぎゅっと握る。
そうだ。私は、一人ではない。
私はジョンを真っすぐに見て答えた。
「えぇ! 分かったわ!」
ジョンはうなずくと、大地を蹴ってかけていく。
その背中を見送りながら、私は考える。
「森の民については、薬を調合しロムア様にご協力いただければどうにかなると思います」
私は立ちあがるとロムア様に告げた。
「ロムア様、力を貸していただけますか?」
「もちろん」
すぐに言葉が帰って来て私はほっとする。
だが、考えるべきは森全域に広がった青い炎の薔薇だ。
一つずつに薬を撒いていっても追いつかない。
「どうしたら……」
その時、空でゴロリと雷の音が鳴り、ぽつぽつと弱い雨が降る。
「雨……」
「聖域の森はよく天気が変わるな。シャーロット。おいで」
顔に当たる雨粒を見つめていた私を、雨から守るようにレオン様が上着をかけてくれる。
私は地面に落ちる雨粒を見て、ハッと気づいた。
この方法ならば、上手くいくかもしれない。
そう、思いついたのだった。







