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【11/1書籍2巻&漫画1巻発売】呪われ王女は魔法植物を研究したい~公爵様が婚約者!?私、呪いで幼女になっているのですが~  作者: かのん
第二章

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7話

 ローレン王国の第一王子であったルパートだが、現在は罪人として地下牢へと幽閉されていた。


 暗い牢屋の中で看守とのやり取りをしたルパートは、鍵と着替え、そしてグレイがどこの牢屋に収容されているのかを聞き、牢屋の外へと出る。


 聖域の森を手に入れられることが出来なかった代償は、重かった。


(はぁ……父上は私を見限った。だが、私はここで終わる男ではないぞ)


 最初はどうにかして復権できると考えていたが、ルパートのことを後ろ盾として支えていた貴族達の面々は、手のひらを返した。


 最終的にどうにか得ることが出来たのは、幽閉を脱出するという道筋だけ。


 ルパートは祖父に最後の手段と頼みこみ、脱出の手助けと金品を受け取った。ただ、ここからは自分でどうにかしろと伝えられている。


「ははは……皆、私がここで終わると考えているのだな……」


 第一王子として期待され、皆から羨望の眼差しを受けてきたルパート。


 けれど、振り返ってみれば自分の居場所は地下牢の薄汚れた部屋。


「……ここで、私は終わらない……」


 その瞳は未だ野心に燃えていた。


 ルパートは幽閉された部屋から、別の地下牢へと移動をすると、その中でうずくまっているグレイに声をかけた。


「急いで脱出するぞ」


「……ルパート?」


 グレイはこちらを見上げると、乾いた笑い声をこぼした。


「はは……脱出してどこへ?」


「聖域の森を今度こそ手に入れる」


「聖域の森か……なぁ、ルパート」


「なんだ。早くしろ。今鍵を開けてやる」


 看守から受け取った鍵で牢屋を開けようとしたが、グレイの言葉に動きを止める。


「これ、お守りだ。もって行け」


 ルパートは視線をグレイへと向けるが、グレイは手を差し出すのみで、ルパートと視線を合わせずに言った。


「一緒には行けない」


「……何故」


「……今、自分は、何もしたいことがない。母様はもう、いない」


「共に来い」


 物音ひとつしない、牢の中から、小さな弱弱しい声でグレイは一言返す。


「……すまない」


 ルパートはため息をつくと、グレイの手からの餞を受け取る。


 それから背を向け、一度立ち止まると言った。


「……ではな」


 ルパートは顔をあげ歩き始めた。


 振り返ることはない。自ら手を離した者を引き上げられる程の力が、自分にはないことをルパートは自覚している。


 だからこそ今はまだ。


 マスクをつけ、ルパートは顔を見られないようにしながらどうにかローレン王国を抜け出す。だがしかし、しばらくした後に辺り一帯が騒がしくなり始めた。


「くそ……もう追手が……気づかれるのが、早い」


 どこから情報が漏れたのか。


 看守かはたまた、祖父か。


 わからないが、ルパートの残されている道は逃げることしかない。


 用意されていた馬に乗ったルパートはただ必死に森の中を突き進む。


 そして、休むことなく進んで進んで、そして、途中いくつかの町を経由しようとした。だがすでに王国からの追手が迫っており、危険があることを分かっているのに、立ち寄ることは出来なかった。


 寝ずに走り、そして、どこにも行きつく場所がない。


 走らせすぎた馬は途中で転倒し、動かなくなったため、乗り捨てて、それでも森の中を一人走り続けた。


 そして、ルパートが追ってから逃げて逃げてたどり着いた先は、空気の違う、聖域の森の入り口であった。


「ははは……ここ……か」


 この森に今自分が入れば、死、しかないだろう。


 中には魔獣や摩訶不思議な虫や生き物が共生する森だ。聖域とは言われているが、魔の森と言っても過言ではない死と隣り合わせの場所。


 ただ、この時のルパートは追い詰められていた。


「馬が捨て置かれた場所からしらみつぶしに探していくぞ!」


 声の主から隠れるように、物陰に身を潜める。


 ちらりと草陰から覗き見てみれば、それはローレン王国の騎士であった。


 もうすぐ近くまで追手が迫っている。


 ルパートは覚悟を決めて聖域の森の中へと駆けこんだ。騎士達は聖域の森には入って来れない。

逃げ込むならばここしかない。


「絶対に死ぬものか。私は絶対に、この森を手に入れ、ローレン王国の王座を手に入れるのだ」


 泥水に汚れながらも、ルパートは野心を捨てない。


「その為ならば、なんでもしてやる」


 泥濘の中を、重たくなる足を引きずりながらもルパートは進む。


「絶対に、諦めるものか!」


 青い月が、禍々しく揺れる。


――――――ボウッ。


「なんだ」


 振り返ると、青い炎の薔薇が、そこに一輪咲いていた。


 幻想的なその花に近寄ると、それは消えうせる。


「……なんだ」


 視線をあげると、少し遠い位置に、また青い炎の薔薇が咲く。


 まるで、誘われているかのようだった。


「……ははは。さすがは聖域の森だな。不可思議なものだ」


 そう思いながらもルパートはその花の後を追う。


 青い炎の薔薇が、一輪、また一輪と先に咲いていく。


 歩いて行けばいくほどの、咲いている本数は増えていった。


 そして青い炎の薔薇が咲き誇る花畑のようなその場所は、風が吹けば甘い香りがその場に広がっていく。


 その中央には、神々しい白い鳥かごがあり、その中には美しい青い鳥がいた。


「ふふふ。禍々しい程の欲を感じたから導いてみたけれど、人間よ。どうしてこの森へ?」


「はっ……人語を話すとは、魔獣の類か」


 睨みつけてくるルパートをからかうように、青い鳥は言った。


「さぁ、どうかしら」


「騙そうとしても無駄だ。ではな。魔獣に構っている暇はない」


 ルパートがそう言い背中を向けようとした瞬間、青い薔薇の炎が高く伸び、ルパートを取り囲む。


「っく……熱い……」


「ねぇ、助けてくれない?」


 振り返り青い鳥を見ると、青い鳥は翼を大きく広げながら言った。


「私が欲しいのは、魔力。それがあればここから出られるのよ。貴方の願いも叶えてあげる」


「魔力……」


「えぇ。私は魔力を奪われそしてこの籠の中に封印されてしまったのよ。可哀そうでしょう?」


 正当なる王族であるルパートも、魔力を有している。


 ただしその魔力は微力であり、何かに使えるわけではない。


「魔力を渡せば、どうなる」


「私と契約が完了することになるわ。そして貴方の願いを叶えてあげる」


「お前の願いは?」


「え? 復讐よ。私をこの森に追いやったフォーサイス王国のやつらとこの森へと封印した者へのね!」


 その言葉に、ルパートの瞳は輝く。


「は、ははは。いい。私もだ。フォーサイス王国へは恨みがある」


「あら、じゃあ運命かしら」


「魔力がないと言ったが、誰に奪われたのだ?」


「フォーサイス王国の王によ……でもこの青い鳥を奪ったから、どうにか姿を保っていられたの」


「青い鳥? それは、お前の体ではないのか」


「違うわ。これは魔道具。うふふふ。これがあれば、私はより強大な力を得ることが出来るの! ここから、出られたら、ね」


 ルパートはじっと魔女を見つめる。


「契約をかわそう」


「では、手をこちらへ」


 ルパートが鳥かごの中へと手を入れた瞬間、神々しい鳥かごの檻を、青い炎の薔薇のツルが絡みつき、そして青い炎の薔薇が次々に咲いていく。


「私は青の魔女。メリザンド」


「ローレン王国第一王子、ルパート・ローレンだ」


 そして、鳥かごは青い炎に呑まれ、砕け散る。


 その瞬間、青い髪の美女が、青い薔薇から姿を現し、ルパートの両頬へと手を添えて、その唇に自らの唇を重ね合わせた。


 妖艶な瞳がルパートを捕らえる。


「はぁぁぁ。魔力が、体を巡っていく」


 恍惚とした表情を浮かべるメリザンドの姿を、ルパートが見つめる。


「でも、まだ、足りない」


 次の瞬間、ルパートは心臓を抑え、その場にうずくまる。


「ぐ、ぐぅぅぅぅ」


「あら、もう魔力が枯渇? はぁぁあ。もっと欲しいのに」


「ハッ……これが、魔力を奪われる苦しみか。あぁ、だが別段いい。魔力が欲しいと言ったな」


「えぇ」


「大量の魔力を有する男を知っているぞ。フォーサイス王国のカーライル公爵家のレオンという男だ」


 次の瞬間、メリザンドの表情が怒りを現し、周囲の青い炎の薔薇が囂々と燃える。


「あぁ、あぁ。憎き四大公爵が一つ……ルパート。私と貴方の縁は、必然だったのかもしれないわねぇ」


「あぁ……」


「さぁ、まずは私の依り代を探さなくちゃ……ね」


 憎しみは憎しみを引き合わせるのか。


 運命とはどこかで繋がるものなのか。


 森の中で、今、一つの契約が果たされたのであった。



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