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【5月1日コミック2巻発売】呪われ王女は魔法植物を研究したい~公爵様が婚約者!?私、呪いで幼女になっているのですが~  作者: かのん
第二章

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8話

 温室の中は、太陽の光を受けてとても温かだ。


 少し湿った土の香りが私は好き。


 今日は朝からレオン様の魔力を測定する予定であり、温室に来ていただいた。


 魔力測定の魔道具の調整をすると、そこにレオン様に手を当ててもらう。


「今から、魔力を計測していきますね。腕が少し疲れるかもしれませんが、大丈夫ですか?」


「ん? もちろん大丈夫だ」


 今日はレオン様から以前提案されていた魔力について、計測実験をする予定である。


 魔力の最大値についてはレオン様の屋敷で図ってきてもらった。


 それから魔力を極限まで枯渇させてもらった。


「装置はつけたまま、記録を取っていきますね」


「あぁ。シャーロット、もし体調が悪くなったらすぐに教えてくれ」


「もちろんです」


 計測をすると同時に、私自身の記録もつけていく。


「いつもはどのくらいで魔力量は増えるのですか?」


「少しずつ増えていく。大抵、半日もあれば、半分ほどは戻る。だが、体調やその日によって違うことはままある」


「あれ? でも、今まで一緒にいたこともありましたよね」


「そう言う時には、ジョンに頼んで森で魔力を発散させてもらっていたんだ」


「そうなのですか……」


 知らなかった。


 私はこれまで、レオン様に気を遣わせてしまっていたのだなとそう思う。


 魔力過多症でこれまできっと苦しんできたのだろう。


 エレニカ様の研究を引き継ぎ、レオン様用に調整していけば改善の見込みはある。


 私が、レオン様を助けたい。


「レオン様、私、頑張ります」


 レオン様に告げると優しく微笑みを返される。


「ありがとう。私は……これまで、すぐ隣に死があった。だが君と出会って、欲が出た。もっと長く、君と共に生きてみたい」


 私と、共に……。


 顔が熱くなる。言葉一つで、ドキドキしてしまう自分が恥ずかしい。


 赤くなる顔を見られたくなくて私は後ろを向く。


「わ、私も、レオン様と共に、生きていきたいです」


 ただその為には、早く妖精に自分の姿も戻してもらわなければ……。


 そう思っていた時であった。


 温室の扉が音を立てて開き、視線を向けると、なんとルードヴィヒお兄様とロベルトお兄様がやってきたのだ。


「お兄様、また会いに来て下さったのですか。嬉しいです」


 私はそう言ってから、ハッとした。


 私は現在、幼女の姿なのである。突然見ず知らずの幼女にお兄様と呼ばれた二人はさぞ驚くだろう。


 そう思いちゃんと説明しようと二人に視線を向けると、二人は驚いた状態で、固まっていた。


「ルードヴィヒ兄上……私は、目がおかしくなったようです。シャーロットが、小さくなっています」


「あぁ、ロベルト……どうやら、私も目がおかしいようだ。可愛い子ども姿のシャーロットが見える」


 どう説明するべきだろうか。


「えっと、ルードヴィヒお兄様、ロベルトお兄様、あのですね、私はシャーロットです」


「あぁ。それは、分かります」


「幼い頃も見ているからな。なんなら、シャーロットの小さい頃からのアルバムも部屋にある」


「え?」


 私のアルバムが、お兄様の部屋に、ある?


 どういうことだろうかと思っていると、ガタリと魔道具に手を当てたままレオン様が立ちあがり声を上げた。


「そのアルバム、見せていただきたい」


「レオン様?」


 はっとしたようにこちらに視線を向けたレオン様は咳払いをしてから椅子に座り直す。


「なんでも、ない」


 そう言いながらも、すごく残念そうな顔を浮かべている。


 私は気を取り直して、お兄様達に何があったのかを簡潔に説明をした。


 妖精に姿を変えられてしまったなんて、まるで絵本の物語のようだなと、説明しながら自分でも思った。


 それと同時に私は現在はレオン様の魔力測定中だと言うことも伝えておく。


「妖精が……」


「その、扉というのはどれのことか教えてくれるか?」


 私はうなずくと、レオン様に告げた。


「レオン様は魔道具に手を触れたまま待っていてくれますか?」


「あぁ。ルードヴィヒ殿下、ロベルト殿下、このような姿勢で申し訳ございません」


「いや、魔力計測中にすまなかったな」


「この前のこともありますし、私達は、少ししたらお暇しますから」


「すみません。本来ならば私が席を外すべきなのですが」


 その言葉にルードヴィヒお兄様が言葉をかえす。


「いや。仕方あるまい。突然来た私達が悪かったのだ」


 その言葉にロベルトお兄様が言葉を付け足す。


「ほら、ここに手紙を届けられないですからね」


 確かにそうだなと思いながら私はお兄様達に頭を下げる。


「そうですよね。お兄様方にもご不便をおかけしてしまいすみません」


「いや、私は、こうやってシャーロットに会いに来れるのが嬉しいんだ」


「ルードヴィヒ兄上の言う通り。さぁシャーロット案内してください」


「はい」


 私はお兄様二人と共に温室の奥にある扉の所まで連れていく。


「この扉です」


「私達も中に入れるのだろうか」


 もちろん入ることは出来るだろう。そう思い扉に手をかけた。


 だが、何故か扉が開かない。


「あれ? あの、いつもだったら扉が開くのですが……あれ?」


 私が戸惑っていると、ロベルトお兄様が扉の方へと近づきそれに触れようとした瞬間、静電気のようなものが走り手が弾かれる。


―――――パチンッ!


「いっ……たいですね」


 手をブンブンと振りながら、ロベルトお兄様は今度は扉に触れないように調べていく。


「兄上、シャーロット、これはかなり特殊な魔道具のようです。私は趣味で結構色々な魔道具を所有していますが、見たことがありません」


 瞳を輝かせながらロベルトお兄様は扉を食い入るように見つめ、そして姿勢を正すと言った。


「この扉を開けるための制限があるのか……」


「私とレオン様は、通れたのに……」


 どういう仕組みなのだろうか。


「もしくは、扉が通れる人間を選んでいるか……判断が難しいですね」


「扉が選ぶこともあるのですか?」


「あぁ。古い魔道具には今では分かりかねる技術が使われています。これもその一つだと考えられますね」


 その言葉にルードヴィヒお兄様はうなずく。


「なるほどな。では、ここにいても仕方あるまい。レオン殿の所に戻ろう」


 私達はうなずくと元の部屋へと戻る。


 まさか、扉が通る人間を選んでいるなんて考えてもみなかった。


 誰でも通れるわけではないということか……どういう基準なのだろうか。


 私とレオン様は今日のような現象は起きたことはないし、レオン様も私がいなくても扉を通ることができる。


 私達は選ばれたということなのだろうか。


 すぐに帰って来た私たちを見てレオン様が首を傾げる。


「早いお戻りでしたね。どうしたのです?」


「どうやら、あの扉は、通る人間を選ぶらしい。私とロベルトは開けることすら出来なかった」


 その言葉に、レオン様はうなずく。


「そうなのですか」


「あぁ。触ったらロベルトの手が弾かれた」


「ふむ……どういう理由なのでしょうか。今の所私はそうしたことを体験した覚えはありません」


 レオン様が真面目な声でそう言い、ロベルトお兄様は近くにあった椅子に腰を下ろす。


 ルードヴィヒお兄様は、流れるような仕草で私のことを抱き上げると、膝の上に乗せてから椅子に座った。


「そうか。ロベルト、お前は魔道具が好きだろう。この一件について調べてくれるか」


「はい。もちろん。ですが兄上」


「なんだ」


「ずるくないですか? なんでそんな当たり前のようにシャーロットをお膝抱っこしているんですか」


 ルードヴィヒお兄様の膝の上で固まっていると、そんな私の頭をルードヴィヒお兄様がなでなでと撫でながら言った。


「いいだろう。ずっと抱っこしたかった。我慢していた私はえらい」


「ずるい! いいな! 交代してください!」


「嫌だ。そろそろレオン殿の魔力に当てられそうな予感がする。故にこの時間は私が独り占めしたいと思う」


「兄上!」


 私はどうしたらいいのだろうかとおろおろしていると、レオン様が魔道具に手を当てたまま立ち上がった。


 助け舟を出してくれるだろうかと思っていると、レオン様が言った。


「私も抱っこさせていただきたい」


「「ダメに決まっている!」」


 ルードヴィヒお兄様とロベルトお兄様の声が重なる。


「いいか。まだ婚約者だ。レオン殿、触れ合いは最小限にすべきだ」


「兄上の言う通りです。いくら子どもの姿とはいえ、弁えなければいけない。シャーロットに気軽に触れないでほしいですね」


 眉間にしわを寄せるレオン様と、お兄様達が睨み合う。


 私はその様子を見て、ふふっと吹き出した。


「お兄様達ったら。ふふふ。おかしい」


 三人は私の方へと視線を向ける。


 ルードヴィヒお兄様は真面目な顔で私に告げた。


「シャーロット。君はレディなのだぞ?」


 その言葉に、私は首を傾げる。


「えぇ。それは分かっております。ですがレオン様は私のことを子どもだと思って接してくださっているのに」


「子ども……」


「えっと……」


 二人が憐れむような視線をレオン様へと向ける。


 レオン様は少し考えこむように視線を伏せてから顔をあげた。


「いや、子ども扱いしているわけでは……いや……」


 歯切れの悪い言葉に、ルードヴィヒお兄様が言った。


「とにかく、過剰な触れ合いはしないように!」


「そうそう! 抱っこはだめですよ」


 レオン様はこれまで私のことを抱き上げたり膝に乗せたりしたことがあるはずなのに、なぜか悔しそうな表情を浮かべる。


 だっこされている側としては、何とも言えない気持ちだ。


 そんな時、お兄様達が胸を抑えた。


「うっ……」


「そろそろ、限界……ですかね」


 私はその様子に驚き尋ねた。


「どうなさったのですか!?」


「いや、そろそろレオン殿の魔力に耐えられそうにないな」


「うぅ」


 私は慌てて尋ねた。


「あの、お二人とも大丈夫ですか? いつから、体調に変化が?」


「入って来た瞬間からだ」


「魔力とはこうも体調に影響のあるものなのですね……」


 最初から?


 私は驚く。


「あぁ。むしろ、シャーロットは……大丈夫なのか?」


「結構、きついですけどね……」


 私は急いでレオン様の現在の魔力量の数値を見る。


 その数値が指し示すのは、レオン様の全体魔力の十分の一程度だ。


「レオン様、別室にてお兄様達の現状況について話を聞いてきますね。レオン様はそのままでお待ちください」


「あぁ。分かった」


「お兄様、別室へと移りましょう」


 私はそう言うと、お兄様達を別の部屋へと案内する。


 こんままレオン様と一緒にいてさらに体調が悪くなるといけないし、今の様子について話を聞いておきたいと思った。

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