10話
「あの、聖獣様がよければ、ここにまた来てもいいでしょうか? あの、あそこの扉を通ってくるのですが、だめ、でしょうか?」
「ふむ? ここに来るのはいいが、何かしたいことがあるのか?」
「出来れば、ここに生えている魔法植物を観察したり……採取、したり、させてもらえないでしょうか?」
ちらりと見るだけでも、いたるところに魔法植物が生えているのが分かる。
私にとっては楽園のような場所だ。
「なるほど、だが、ここには危険も多いからな……ふむ。よし、ならば、契約を結ぶか」
「え?」
私は何だろうかと思いレオン様へと視線を向けると、レオン様が説明をしてくれる。
「聖獣と契約をすると、どこにいても、主となった者の危機が分かるのだ。また、聖獣よりも強い獣や魔物は、主を襲おうと思うことすら、なくなる。ただ……聖獣は簡単に契約をしてくれるような相手ではない……聖獣殿、本当に契約を?」
訝しむようにレオン様がそう尋ねると、聖獣様は大きくうなずいた。
「あぁ。救い主は、魂の色も美しい。うむ。我が主としても相応しい。さぁ、手を我の方へと向けてくれ」
「え? ……は、はい」
私はいいのだろうかと思いながら、手を聖獣様へと向けた。
あれよあれとという間に話しが進んでいくので、本当にいいのだろうかと悩む暇もない。
レオン様は驚いた表情のままである。
「よし、では契約しよう」
次の瞬間、私の視界はぐるりと回り、瞼を開けると虹の中に自分が浮かんでいるような感覚であった。
『汝の名は?』
『……シャーロットです』
『シャーロットを、我が主とし、ここに主従契約を結ぶ。主よ、我に名を名付けよ』
『名前? 私が名前をつけてもいいんですか?』
『あぁ。なんでも構わんぞ』
私は頭の中で、何がいいだろうかと考えた時、先日離宮の図書室で読んだ犬の物語を思い出して口を開いた。
『ジョンってどうでしょう? 可愛らしくないですか?』
『……ジョン……う……うむ。斬新だな……まぁー……いいか。では我が名はジョン。これからはそなたが主だ。これで、安全に採取も出来るだろう』
「ありがとうございます!」
そう、返事をしたところで、先ほどの虹色の空間ではなく、現実へと戻ってきていた。
どうやら、一瞬だけ、ジョンと心の中で喋っていたようだ。不思議とそれは分かった。
「これにて、契約はなされた。後は好きにすればいいさ。あぁだが、ここへの立ち入りは、主とこの男だけにしてくれ。主と違って、この男は襲われたところで自分で対処できるだろうから、まぁ大丈夫だろう」
その言葉に私はレオン様を見上げた。
「そ……そんなにお強いのですか?」
尋ねると、にこりと微笑みだけ返された。
さすがは、国の英雄だなと思いながらも私はちらちらと近くに生えている魔法植物の方を覗き見る。
「もし、採取するなら、手伝おう」
「いいんですか! ありがとうございます! ジョン様! 採取してもいいですか?」
「うむ。ジョンと呼び捨ててくれ。たくさん採れるといいな」
「はいっ! ジョン! ありがとう!」
「ジョン……」
驚いたような顔で、レオン様に視線を向けられる。
「名前をつけてとのことだったので、この前読んだ、犬物語に出て来た素敵な名前をつけさせていただきました。真っ白で、とても可愛くて似ていたのです。素敵な名前でしょう?」
うきうきとそう告げると、レオン様が、微妙な微笑みを浮かべてうなずく。
「あ、あぁ。素敵な名前だな」
「はい」
ジョンを見上げると、こちらに向かって小首をかしげている。
可愛らしいなと思いつつ、ジョンに向かって頭を下げる。
「本当にありがとうございます。では、魔法植物採取させていただきますね」
「あぁ。もちろんだ」
どこに何が自生しているのかも記録していきたい。今度来る時には、ペンとノートも持ってこないといけないなとそう思った。
「ねぇ、私達ともお友達になりましょう」
「私達、妖精と友達になると、お得よ!」
「そうそう。貴方面白そうだから」
三人の妖精が私の元へと来ると、両肩と頭にちょこんと座る。
友達という言葉に私は思わず瞳を輝かせてしまう。
「友達になってくれるの!? わ、私、お友達出来るの初めてなの」
そう告げると、皆が私へと視線を向ける。
なんだろうかと思いながら、変なことを言ってしまっただろうかと思っていると、妖精達が私のことをよしよしと撫でる。
ジョンも前足で私の頭をちょんちょんと撫でてくる。
「あ、あの……」
どうしようと思っていると、レオン様も私に優しい瞳を向けながら言った。
「たくさん魔法植物を探そうか」
「は、はい」
「「「私達も手伝うわ」」」
「我も手伝おう」
その後は、皆で魔法植物の採取を行った。
手伝ってもらったおかげですぐにたくさん採取することが出来たのであった。






