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滅びた城

雲の中に隠れながら城下町を見下ろした。ダヴィンレイズ王国は、地上から見る城下町と全く違う顔を見せた。空気さえ黒魔術に汚染されてしまっているのか、他の地域と違って景色が濁っているように見えた。城を含めた建物は全て倒壊し、所々翠色の炎が燃え上がっている。

「百年前と変わらないな……夜、空から見る城下町の景色が好きだった。夜も活動している民は、まるで星空のようだった。」

「ステラ姉……。」

「一つ一つの建物に、生活があったんだ……なのに、守れなかった。」

きっと、活気のある街だったんだろうな。煉瓦でできた大きな道には、人がたくさん行き交ってて、空にはドラゴンがたくさん飛び回ってたんだろうなぁ。

「私はあいつを……絶対に許さない。」

うちらは雲の中で城下町上空を何度か旋回した。誰も居ない。

「宝探ししてた時は、よく見かけたんだけどな。」

「まったく危ないことを……。」

何時間経っても幹部はおろか、厭世部隊1人も現れなかった。

「入ってみる?」

「宝探しがしたいだけだろ。」

「違うって。色々と騎士団の暮らしをステラ姉に聞きたくて。」

「別にわざわざここで聞く必要ないだろ。」

「い、いいじゃない。実際にその場所を見ながらの方が分かりやすいと思うし。」

「はぁ。仕方ないな。」

あれ?意外とすんなり。ステラ姉なら黒魔術が〜とか言いそうなのに。

龍舎の中に入ると、ドラゴン達をそこで待たせた。ステラ姉が掛かっていた松明を手に取り、火をつけて歩き出した。

「ねぇ、どうしてすんなりとうちの言うことを受け入れてくれたの?黒魔術が残っているのに。」

「あんたが行きたいって言い出したんだろ。」

「でもいつもなら黒魔術が〜って言うよね?」

「……探し物があってな。」

「どんなの?」

ステラ姉は少し言うのをためらった。

「お父さんの形見だ。」

「へぇ〜。そのペンダントとは別のもの?見つかるといいね。」

「あぁ。そういえば、ここには何度も来ているのか?」

「えぇ。もう数え切れないほどに。」

「何度も言うが、危なっかしいやつだな……しかしまぁ、まさか生き残りの卵があったとはな。」

「まだ残ってるのかな?」

「見たんだろう?」

「そうだけど、グランツの卵は少し見えてたから。他に卵があったかは分からなかったかな。」

さっそく騎士団寮に来た。

「ねぇ、色分けされてるのはどうして?」

「分かりやすくするためだな。他にも、性格で合わせるという理由もある。ドラゴンの色によって乗り手の性格は人間の頃と比べて変わるんだ。たまに変わらない奴もいる。」

「そうなの。じゃあ、このエリートとコモンは?」

看板に指を指しながら言った。

「精鋭部隊と一般部隊を分けるためのものだ。精鋭色のドラゴンとその乗り手は精鋭部隊に配属される。見習いを卒業したばかりでもな。」

「精鋭色ってどんな色?」

「黒、白、金、銀、赤、青の六色だ。黒と白が一番強く、金と銀がその次に、最後に赤と青だ。そして大きく離れて一般色が占めている。ドラゴン騎士団は色を強く意識していた。そのせいで、地位や格差は酷く、一般部隊は使い捨てのコマのような扱いだった。」

「え……まだ色を分けた部隊なのは分かるけど、そこまで区別する必要あるの?一般色の中に、優秀な人もいたかもしれないじゃない?」

「実際そうだったよ。私が育てた一般部隊の2人は優秀だった。すぐに部隊長と一般部隊司令官にまで上り詰めたんだ。」

「そんなに早く……?」

「まったく、優秀な者が一般部隊に教えてやれば、死者数を減らせると言うのに。」

そういえば、一般部隊の司令官について、何か読んだ気がする……そうだ。

「ねぇ、それって本当に優秀だからっていう理由なの?」

「じゃなかったらなんだ?」

「その人、もしかして黒魔術を使えたりする?」

「……そうだが?」

ステラ姉が目の色を変えてうちを睨みつける。

「うち、読んだのよ。ダレスが残したメモみたいなものを。」

「何?」

グランツの卵を見つけたあの日、多分、総帥部屋と書かれた部屋を探索していた時のことを思い出す。

「その人が司令官になったのは、黒魔術を使うから、傍に置いておくことだって。」

「そんなはずは……二人は確かに私から見ても優秀だった。見習いを卒業するのも二人が一番早かったんだ。教官もよく二人のことを話していた。」

「それと、審判についてなんだけど……」

「なぜそのことを?」

「そのことも、書いてあった。死刑という名目で、支配するって。」

「全部あいつの計画だった?いや、そうか、最初から気づこうと思えば気づけたのか。」

「どうしたの?」

ステラ姉は少し目を閉じて、軽くため息をついた。

「黒龍の乗り手の性格として、裏の顔を隠すのが上手いんだ。自分がした悪事を巧みに隠す。そして、世間には善人として生きる。」

「えっと、じゃあステラ姉は?」

「私はそれが嫌いだ。その事について仲間を何人罰したか数え切れないくらいだ。」

「そう。」

ずっと一緒にいて、確かにステラ姉ならそんなことをしなさそうだなと思った。レトーラの対応も見た感じ。その変わり自分が不幸な目にあったら、それを隠している気がする。……隠すの下手だけど。

黒龍部隊の部屋に着くと、ステラ姉がスタスタと壁の中にある通路に歩いていった。通路はまるで廊下のようで、何回か階段を上った。最上階に着くと、一番奥の部屋に入った。

「ステラ姉の部屋?」

「まぁな。」

部屋は2、3人くらい入れる広さで、同じ家具が2つずつあった。

「……イーサンと一緒に過ごした部屋なんだ。」

「そうなの。」

ステラ姉は、1つの引き出し付きの小さな机の中をあさった。

「あったあった。良かった。」

取り出したのは、円柱の形をした金属の塊だった。真ん中にはドラゴンの意匠が彫られていた。

「それが?」

「あぁ。お父さんの遺品であり、使っていた武器だ。」

「受け継ぐのね。」

「いや、誰にも扱えない。お父さんにしか使えないんだ。」

「そうなの?」

「騎龍武器と言って、ドラゴンの魔法が込められている。言わば、ドラゴンともう1つの相棒のようなものだ。本来なら持ち主が死んだら一緒に弔うのだが、私のお父さんは……ドラゴン諸共遺体が見つからなかった。葬式をすることが出来ないということで、お父さんの幼なじみであるグランクに渡され、私に渡った。これは、この首飾り以上にお父さんが近くにいる気がするんだ。」

「見つかって良かったね。」

「あぁ。」

部屋を出てさらに散策した。びっくりするくらいあいつらはいなかったし、気配も感じなかった。

「……平気なの?」

「何が?」

「だってほら、ここは……辛くないの?」

「……辛くない時なんて、無かったさ。」

「……そう。」

何も会話しないまま更に歩いた。今度は学校の教室みたいなところに来た。机と椅子が沢山あるが、全てボロボロになっていた。ここが見習い生の勉強部屋であることはすぐに分かった。

「ねぇ、見習い生はどんな暮らし?」

「ほとんど寮のある学校みたいなもんだな。三割が座学、7割が実技だ。成績の良い者から先に正式に入団する。」

「座学は寝ちゃいそう。」

「基本的に実技を中心的に見られるから、座学はほとんど出席しなかったな。本を読めば事足りるし。」

「でも生物はやってなかったんでしょ?」

「やめろ。」

「座学と実技、どんなことをしたの?」

「座学は歴史や色について、大陸の地域差や国についてとかだな。実技は飛行訓練やサバイバル特訓、スピード向上訓練、基礎、属性魔法の取得とかだな。」

「楽しそう!」

「サバイバル特訓は過酷だぞ。場合には深夜にやる時もあった。」

「でもドラゴンがいれば…」

「ドラゴンがいない場合を想定して単独で行う時もある。」

うちの言葉を遮って言った。

「ふーん。うちもそんな暮らしがしたいな〜。」

「やめとけ。私も小さい頃はライダーになって騎士団として働くことに憧れてたさ。」

「楽しくなかったの?」

「あぁ。むしろ、最悪だった。」

「なら、うちらで変えればいいじゃない。」

「もう滅んでるのにか?」

「それはその、ほら、ね?」

「やれやれ……いたた。」

ステラ姉が左目を手で抑えて顔をしかめた。薄かった黒い筋は、また黒ずんでいた。むしろ広がり、悪化していた。

「ステラ姉、出よう。」

「もういいのか?」

「うん。ありがとう。」

うちらは早足で龍舎に戻り、グランツに乗るとすぐさま空へと飛び立った。

「アデラ。」

「なに?」

「平気なのか?」

「なにが?」

「寮内は特に黒魔術が酷かった。ライダーでもそんな平然としていられるわけが無い。」

……そういえば、うち、黒魔術に汚染された時どんな感じなのか、知らないかも。具合が悪くなるのかなって思ったけど、普段と変わらないし。

「……ライダーになる前からちょくちょく来てるけど、その時も平気だったかな。」

「どういうことだ?」

「さぁ?うちもよく分からないのよね。」

「……?」

「にしても、狙ってみると案外出ないものね。」

「あ、あぁ。このままこうしていても埒が明かない。他を当たろう。」

「そうね。どこに行くの?」

「すぐ近くのコンヘラ地域にでも行ってみるか。」

「やった!行こう行こう!」

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