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悪役令嬢は病弱令嬢 王子様は悪役令嬢を囲いたい  作者: 白まゆら


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ルーゼット視点 15

完結です。ありがとうございました。

 前世を引きずっていた僕は、不確かな存在だったのだろう。

 リリを……前世の妹とシンクロさせて、必要以上に守らなければとミリアルを蔑ろにして、レオンからも隠していた。

 レオンの事も完全無欠の王子様として見ていた僕は、たまに見せるレオンの喜怒哀楽に戸惑っていた部分もあった。

 ゲームのレオンじゃないレオンを見るたびに、心がざわついた。

 そして他の三人にも……ゲームでは完全無欠の王子様に侍る三人として完璧に演じていたのに、レオンに甘え、くっついて取り合っている姿を見ると、ゲームとリアルの境が分からなくなった。

 レオンはそんな僕に気付いていたのかもしれない。

 穏やかな……とは聞こえがいいが、どこか浮世離れしていた僕をわざと揶揄って、素を出させようとしていた。リリが絡むようになってからは、特に顕著になった。

 王子の頭を叩くなんて、普通ではないからね。不敬罪で即処罰だよ。

 それをレオンは笑う。大声で、ここは現実なんだと教えてくれる。本当に凄い王子様だよ。

 そして僕は、今を現実だとちゃんと理解した時、いつまでもゲームだと思っている彼女、ヒロインに怒りが湧いた。

 ここを勝手にゲームと同じにするな。

 お前なんかが、僕の現実を壊すな。

 僕は皆に全てを話して、これで終わりだと思った。

 やっと現実を生きられると。


 そして数日が立った頃、あいつはまさかの暴挙に出た。

 魔法で僕達の前から姿を消したレオンの後を追って、ユーリック公爵邸に戻った僕の目に飛び込んできたのは、倒れているリリを抱いて腹部に手を当てているレオンの姿。

 腹部には鮮血が溢れている。横にはこの厨房で使われていたとみられる包丁が落ちていて、そして……。

 皺のある顔は、目だけが異常にランランと輝いていて、ショッキングピンクだった髪はバサバサの白髪と化していた。

 女が歪な笑顔の後、驚愕の表情に変わり、どうして変わらないのかと叫んでいる。

「早く……どうしようとしてるんだ」

 思った以上に低い声が鳴り響いた。

 自分でもびっくりするが、心が冷えて感情がコントロール出来ない。レオンがいるから大丈夫。頭では分かっているのに、どうしようもない。

 女は僕をバグと呼び、許してやるから協力しろと言ってきた。

 協力ってなんだ? リリを殺す協力か?

 ふざけるな「リリは僕の妹だ!」

 結局、レオンとリリが冷静に対応して女を捕まえた。

 僕は怒りのまま、感情を露わにしてしまった事が気恥ずかしくて、成り行きを見守っていると、クスクスとレオンとリリがイチャつき始めた。

 ……何やってんの、君達。

 僕は思わず間に入ってしまったが、何かこの二人を見ていると肩に力が入っているのが馬鹿らしくなる。

 本当、僕なんかには一生かかっても敵わない、最強の二人だよ。


 改めて行った婚約式も無事に終わった。

 今度はお互いの瞳に合わせた衣装を身に着け、穏やかな前回のイメージとは違う華やかな雰囲気になった。翡翠とアンバー。二人共出しにくい色合いだったが、グラデーションを駆使した青い衣装のレオンと黄色のドレスのリリは、とても煌めいて見えた。


 前回の時にお披露目してしまった二人の力。

 光の魔法保持者のレオンと闇の魔法保持者のリリ。

 当然レオンには神殿から聖王自ら挨拶にやって来た。

 桁違いの魔力。次代の聖王をという話からレオンは一笑した。

「あの力、なくなりました。あの時に全部使ってしまったんでしょうね」

「……………………」

 飄々とするレオンに誰しもが『嘘だあああぁぁぁ!』と言いたかったに違いない。かくいう僕もその一人。だってレオンはその後、刺されたリリの傷を治していたのだから。

 けれど、それこそ証拠の出しようがないのだ。本人が使わなければ分からない事だから。

 レオンは膨大な魔力を持ち、幾つかの耐性もある。主に火と風と本人は言っているが、本当のところは僕達でさえ分からない。複数の能力持ちの為、全ての耐性を示すのは難しい。

 本人の協力があれば可能なのかもしれないが、なにせレオンは次代の王。

 本人や王族から否定されれば、いくら神殿とはいえ強くは出られない。そうしてレオンの話は立ち消えになった。

 反対にリリの闇魔法は公にした。

 いまだにレオンとの婚約に否定的な貴族に対し、今まで謎に包まれていた闇魔法の持ち主として、特別な人間だと打って出たのだ。

 そして前回の事件でリリによって助けられた貴族が後押しした。素晴らしい力だと。

 筆頭公爵家の令嬢で、清らかな心と天使と見間違える程の愛らしい容姿。

 何よりレオンが溺愛している少女。

 〔完全無欠の王子様〕の相手として〔完璧令嬢〕以外の者はいないと。

 レオンの作戦は見事に功を奏した。

 リリは闇の魔法を解明していき、一人でも多くの命を救いたいと力を入れている。

 そんなリリにレオンは、せっかく神殿との繋がりも出来た事だし、造花に光の魔法を込めた魔道具を作り、妊婦に配る事を提案した。

 こちらで魔道具を作り、神殿で光の魔法を入れてもらう。

 レオンはリリの愛と尊敬を確実に勝ち取っている。

 天使のようなリリに『力を貸して下さい』と懇願された神殿と貴族達は、こぞって力と財力を提供してくれているとの事。

 ……恐ろしい。

 二人の最強ダッグは誰も太刀打ち出来ない。と僕は密かに楽しんでいる。

 だって楽しいんだもの。

 見てて飽きない二人は今度は何をしでかすのだろう。


 因みにココリス・マーガレットは、マーガレット男爵とは縁を切られ、ただの平民ココリスとなった。そうしてリーファル国、最北端の地に生涯幽閉とされた。

 マーガレット男爵家は、領地の半分が没収となり、王都の出入りが禁止となった。ココリスに至ってはもっと重い処分を。との意見もあったが、流石にレオンがせっかく助けた命を、処刑して奪うわけにはいかなかったらしい。

 だけどあの老い方では、たとえ生きていけたとしてもどれほど耐えられるのか……そこは僕が考える事ではない。


 そうしてもうすぐ僕の誕生日が来る。

 皆より一足お先に、僕はミリアルと結婚する。今からすごく楽しみだ。

 ポクッ。

「いたっ」

「何ニヤニヤしてるのさ。気持ち悪い」

 僕を叩いた犯人、もといトーマスは呆れた顔をしながらも、僕の机にある書類を持っていく。

「どうせ結婚の事でも考えていたんでしょ。や~らし」

 自分の席に着くと数枚、目を通して黙々と作業に入っていく。

「やらしいって……皆だってすぐに結婚する癖に」

「私はまだまだ先だよ。レオンが結婚してからする」

 そう言ってトーマスと同じく、書類を取って自分の椅子に座るセル。

「え? だってレオンはリリが十四歳になってからになるから、まだ三年は先になるよ」

「知ってるよ。私は卒業すると魔術師団に入るから慣れるまで大変だろうし、魔道具造りの依頼も来てる。もとよりシーラも僕より二歳下だから、それでいいって言ってる。結婚しても忙しくて相手にしてくれない夫より、忙しい時間を捻出して会ってくれる婚約者の方がいいらしい」

「真理だな」

 マルロスがやって来て、トーマス・セルと同じように書類を持っていく。

「因みに俺も先っぽい」

「え、マルロスまでなんで?」

 マルロスは僕の次ぐらいに結婚するかと思ってた。

 僕の頭に一瞬〔婚約破棄〕の文字がよぎる。

「……別れるわけじゃないからな」

「ハハハ……」

 ジト目で見るマルロスの視線を逸らして、僕は笑う。

「今回の事でリリを守れなかった自分が歯がゆかったそうだ。多少武術の心得があるからと慢心していたと。もう少し腕を磨いてリリを護衛が守れない時に守れる、確かな戦力になりたいそうだ」

「……ヴァイオレット嬢はどこに向かおうとしているの?」

 ありがたい。とてもありがたいのだが、結婚を延期してまでしてくれる事じゃないと思う。

「まあ、そう言うな。俺はそんなヴァイも好きだからな」

 ニカッと笑うマルロスは、充分納得出来ているようだ。

「じゃあ、すぐに結婚するのは、僕とトーマスだけかぁ」

「は? 何言ってんの。僕もレオンが結婚してからしかしないよ」

 黙々と書類に立ち向かっていたトーマスが顔を上げて言う。

「え、なんで? トーマスも政務官になるんだろうけど、新しい仕事が忙しいとか関係ないタイプだろ。ファン嬢も同じ年だから何の問題もないし、なんで結婚しないの?」

「すぐにしたら面白くないじゃん」

「………………」

「ファンは良い子なんだけどね。ちょっと浅はかなところがあるから、世の中には自分の思い通りにはいかないんだって事も教えてあげないと」

 黒い……黒すぎるよ、トーマス。Sっ気全開だ。

 僕はファン嬢の身を案じずにはいられなかった。

「……というわけで、今年結婚するのはルー、君だけだ。家庭と仕事、頑張って両立してくれ」

 ポンッと両肩を叩かれて後ろを振り返れば、満面の笑みのレオンがそこにいた。

「え~と、レオン?」

「差し当たっては卒業に向けて、次代の生徒会の引継ぎと準備、それから新しく入ってくる新入生の確認、寮の修繕と管理、教師達の根回し。それでようやく宰相の仕事に入っていけるわけだ。ガンバレ~」

 僕はクラリとした。

 特に最後のガンバレ~はすごく心が籠ってないのはなんでだ?

「……レオン、なんか僕に恨みある?」

「幸せ者に対してのやっかみだ。甘んじて受けとけ」

 酷いよ、レオン。泣いちゃうぞ。

 僕が涙目で見ていると、レオンはやれやれと肩をすくめた。

「……とはいえ、未来の兄上夫婦には円満に過ごしていただかないとな。俺達が結婚する時にお鉢が回ってきたら大変だ」

 お鉢って……なんでそんな言葉知ってるの? あ、僕が以前使ったのかな?

 僕がキョトンとしている間に、残りのほとんどの書類を自身の机に運ぶレオン。

 この居心地のいい生徒会室にいられるのもあと少し。

 これからはレオンの執務室が、新たな僕達の居場所となるだろう。

 結局のところ、悪役令嬢だけでなく、僕達をも囲ってしまった王子様。

 囲い込まれるっていうのも、案外楽しいのかもしれないね。

初投稿作品でした。

お忙しい毎日の一時に、お付き合い下さりました事感謝いたします。

自作はレオドラン殿下の子供の頃、他国であったゴタゴタを書きます。

他国の話なので、今作とは別物としてお読みいただけますが、子供の頃のレオドラン殿下も登場致しますので、ご興味を持たれましたら引き続きお読みいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。

今作は目標の〔毎日投稿〕が達成できましたので、自作も目標にしたいと思います。

ホッとする時間って大事だよねえ。

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