対話
「王進殿。それでは、今日からよろしくお願いします」
勝利は出ていき、修行の日がはじまった。
「畑を一緒に耕しましょう。そして、必ず書を読むこと。字はわかりますか?」
「…わかりますが、武術の稽古をつけてくれるのでは?」
返事をせず、開墾に使う道具を全員に渡した。
とりあえず、関羽達は開墾を手伝うことにした。
一言も喋らないまま、石を取り除き、畑を広げていく。
太陽がちょうど真上にくるくらいで、王進の母が呼びに来た。
「ご飯ができましたよ。畑仕事で疲れているでしょうから、食べやすいものにしておきました」
「みなさま、向かいましょう」
みんなをつれ、一緒にご飯を食べる。
「昼もこの調子で畑を広げ、日が傾いて来たら書を読みましょう。それで、今日は終わりです」
「王進殿。修行をつけてくれるのではなかったのか?」
甘寧が、戸惑ったような感じで聞く。
「これが、私の指導です。嫌でしたら、どうぞお帰りください」
「な…!」
「…甘寧、落ち着いて。暫く、様子を見よう」
「さて、冷めてしまいます。食べましょう」
それから一週間、王進の言った通りの修行がはじまり、武術の稽古がなされることはなかった。
「関羽。王進殿は、我らに修行をつける気がないのではないか?」
「ううむ…。人を疑いたくはないが、もしかしたらそうなのかもしれないな…」
「我らのことを見くびっておるに違いない。次の畑仕事の時、全員で打ちかかろう」
「無理矢理稽古をさせるのか!面白いなー!」
「…賛成」
「み、みんな!?ううむ…まあ、仕方あるまい」
次の日に備えて、寝ることにした。
「さて、今日も耕すか」
いつものように、王進は畑の方へ向かう。
「王進殿!覚悟!」
後ろから甘寧が稽古用の剣で切りかかった。
同時に、関羽、呂布、張飛もそれぞれの武器で襲いかかる。
武器が届く範囲に踏み込もうとした時、いきなり体が動かなくなった。
「な…!?」
踏み込めない。全員、体が止まっていた。
「懐かしい。まるで、昔の勝利を見ているようです」
王進が、張っていた気をふっとぬいた。それで、全員の体から力が抜け、その場に座り込んだ。
「王進殿…!なぜ、我らを強くしてくれないのですか…?我らが、女子だからですか?」
「あなた達は、まだ、強さが何かを知らない。人と比べて、誰より強いというところで満足している。本当の強さとは、そんなものじゃないんです」
「…分かりません。自分ではどうしようも勝てない相手がいることは、知っています。でも、少しでも追いつきたい」
「人と比べるものではないんです。畑を耕している時、自分と心の中で語り合ってください。無言で開墾していると、そのうち土が、自分が、話しかけて来ます。しっかりそれと対話をしてください。それが出来るようになれば、武術の稽古もはじまります。それこそが、武術の稽古なのです」
「…」
「行きましょう」
ようやく立てるようになり、畑に向かう。その日から、全員、黙々と畑作業をし、書物を読むようになった。




