第27話
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あとがき追加
こんなにも宇宙は広いのに、いやそのはずなのに、ゲームだと結構あっという間だ。そりゃまあ…何年何百年とかけて移動する訳にはいかんから、しょうがないって感じだ。その方がゲーム的には良いんだろう。
ついさっきのことだが…初めてゲームで、本物の戦争を見た。いや、経験した。この間まで、ゼウ商会にいた頃までは、戦争なんて考えなかったのに、ケスラーさんに出会ってなんだかんだ教えられてから、ここまで来るのがとても早かった、そんな気がする。たぶん。
ゲームでの軍人、という道を選んだことが、間違っているのか、それとも正しいのか。今はそんな判断つく訳がないし、見極められもしない。だけど、前も言ったかな…そう、このゲームが俺にとってもう一つのゲーム、ただのヴァーチャルゲームだという枠組みを超えてるっていう風にするんだったら、いろんなことに挑戦するのも悪くない。ひょっとしたら、この経験が将来に役立つかもしれない。リアルで軍人にはなれないが…。
「そうだな。リアルはもう0時過ぎたか。じゃ、俺も落ちるよ。またなアレン」
先ほどの戦闘、自分たちの敵となる「帝国軍」との初めての戦いを終えた二人は、リアルでの時間をシステムで確認し、お互いにログアウトした。彼、フューリーも話によるとアレンと同じ年齢のようで、やはりこのゲーム、特にヴァーチャル世界という新発想に興味を持って買ったのだという。戦闘の手際の良さから、何か前にそういったシューティングゲームの経験があるのか、と聞いたところ、フューリーは「戦闘機ゲームをやりこんだ」と、アレンに返答した。
戦闘機ゲームか…はー、なるほどね。色々昔あったよな。確か「飛ぶ前にやられる…」うんぬんかんぬん、あの言葉も戦闘機ゲームじゃなかったかな。なんといったか…昔過ぎてちょっと分からんけど。
そしてアレンは、いつもと同じようにして、ベッドのうえで目覚める。今はこの生活がまた当たり前のようにして続いている。学校へ行き、帰ったら家事をしてご飯を食べ、そして数時間ゲームへログインする。それでも、彼の今までの生活と比べれば、多少ハードであっても「退屈」するようなものではなかった、と言うことが出来るだろう。
彼は雲に隠れた月を窓から見ながら、少し涼しげな風を浴びて携帯を眺める。今日も様々なニュースが流れている。明日は晴れか。学校は短縮授業だ。放課後は予定なし。一日のスケジュールを、アレンはメモ帳に簡潔に書いている。面倒だと思っても、もはやそれは習慣になっていた。
「もしこのゲームが売られてなかったら、今俺何してたんだろうな」
…もっと、リアルのいろいろ、出来てたかもしれない。
天王星。
現実の話では、太陽系の惑星の中で三番目に大きい星だと言われている。水素やヘリウム、メタンなどの大気を持ち、またその惑星の形成に氷が含まれている、と言われている。外見はとても綺麗な星で、もしかして人間が住めるのではないか、なんて思う人もいるかもしれない。しかし、現実には不可能と言われている。
SFGでは、やはりそこをゲーム設定ということでアレンジしている。簡単に言えば、太陽光に頼り辛いこの惑星では、惑星上に存在する幾つもの大陸が一年中冬のような極寒地域になっている。永久凍土の土地、人が住めるといっても雪が降り続く、など。しかし、そういった対応に、このゲームではもちろん地上で生活するもよし、また地下都市で生活するという方法もある。天王星で初回ログインを迎える人もいるのだから、その辺の配慮はある程度なされている。
それと同時に、他の惑星も同じく、何らかの配慮があると考えていい。
「閣下。予定降下ポイントから外れたらしいですが…」
「まぁ仕方ない。燃料はまだあるから、ゆっくりいこう」
戦闘による疲労や各艦との連携の乱れ、損傷からか、本来天王星降下前に予定していたルートから、外れてしまっていた。だからといって致命的な間違いということにもならず、元のポイントへ舵を取りながら残存艦隊は動き続けている。やや低空を飛ぶことになり、視界が悪いながらも、下の土地を眺めることが出来る。
「とにかく、雪ですな…」
「中佐は、こういう土地は知ってるかい?」
「いいえ、私は元々南の土地の出身です。雪とは、無縁でした」
このゲームは、暑い、痛い、といった感覚を再現することに成功している。当然下に降りれば寒さが襲い掛かってくるだろう。だが、彼ら「地球人」にとって、アレンジしたとは言っても、他の惑星へ足を踏み入れるのは特別な思いが浮かんでくるものである。もしリアルのことであれば、それは人類史に残るものとなる。
「これより、艦隊は天王星にいくつもある補給基地のうち一つ、チタニア共和国軍基地に着陸する。着陸後指示があるまでは、その場で待機」
それから数十分後。降下前に伝えていた予定時間より遅れたものの、艦隊はチタニア補給基地に到着した。地上に戦艦を停泊させ、運営は地下都市で行われている。無論地上でも整備員などによる作業は行われている。出来るだけ短い間隔で、また出撃をする可能性がある。目的は、海王星が現在どのような状況にあるのか、ということである。そのために、残存する艦隊は修理や補給を受ける必要があったのだ。
「よし。じゃあ、しばらくはここで待機になる。兵士に休息を指示してくれ。この周囲の自由行動もさせると良いだろう」
「閣下は、どうするんですか?」
「私はまず、お偉いさんにお話を聞かないとね」
「なるほど…」
そう言って右手を挙げたユラは、そのまま艦橋後部の自動ドアから去って行った。しばらく動きは無くなる。ユラと話をしたサイクスは、これから何をしようかその場で悩んでいた。
一方で、自由行動が許可された兵士たちは、殆どの人が地下都市へ流れて行った。特段地下という施設が珍しい訳でもないが、規模は圧倒的に違うものであった。たとえば天井に大きな看板が設置していたり、ある地下高層ビルとビルを結ぶのに、ガラスのようなもので覆われたチューブの中を車が移動したり、など。まるで近未来都市のような光景を再現していたのである。
「へえ…いろんな店があるんだな。天王星お土産専門店!か…」
ヴァーチャルにしては、また妙にリアルっぽいというか。でもまぁ、現実にないものを仮想で表現するだなんて、自由だが難しいことではあるんだろうな。
ん…あの掲示板、見覚えがあるぞ。
「…こんなところに」
マジか。こんなところにも自由組織があるのか。しかも依頼沢山あるし!やっぱりあれかな、どこの星のどこの都市にいっても、こうやって稼ぐ人はいるんだろうな。前の俺とおんなじように。それにしても、どれもしんどいやつばっかりだろうな…『鉱山で資源採掘作業』とか、『仲間が遭難しました…』とか。ちょっと放っておけないやつもあるだろうけど、今は仕方ない。元々この土地に詳しい訳がないから、役に立つとは思えない。
外に出てみよう。もしかしたら、色々見れるかもしれない。空にいる時窓から見てもあまり見えなかったが、実際はどんなものかな。
「…寒い」
巡洋戦艦で移動している時、彼は窓から外を見ていた。雪が降り続けているのがよく見え、逆に地上がどうなっているのかがよく見えていなかった。実際に外出てみると、想像以上の寒さで、まるで本物の雪国にいるような体感であった。道は出来ているものの、見える建物と言えば見た目レンガに見えるもので出来たものや、明らかに倉庫だろうというものであった。都市に機能が集中しすぎているせいか、ここにはあまりプレイヤーはいないかもしれない。彼はすぐにそう思った。
それでも、彼は少し歩いてカフェを見つけ、その中へ入る。
「いらっしゃい。この辺じゃ見ない顔だね」
…前にも、どっかで言われた気がする。気のせいか?
「ええ。今日来たばかりです」
「おーそうかい。どこから?」
俺がこの人に地球から、と言ったらとても驚かれた。だけど、同時に羨ましい、と言われた。どうやらこの人はプレイヤーらしいな。しかし…珍しいことしてるもんだな。こんな人の来なさそうな場所でカフェ開くより、下の地下都市で開いた方が収益もあるだろうに。久々の客だったんじゃないか?
コーヒーと特製トーストを頼むと、すぐに用意してくれた。ちょっと外出ただけでこの寒さだ。あったかいものが嬉しい。
「そうか、貴方は軍人なのか」
「ええ、一様」
「それは大変だろう。今帝国との戦いはどうなってる?」
決して、穏やかとは言えない。つい先日までの戦いだって、あんな感じだ。もともとバランス崩れてたんじゃないか?と思うくらい。だけどそんなこと言ってたって、インダストリアルヘブンの人たちは直す訳ないしな。でも、このヴァーチャルゲームはそうやって差があるところから逆転するのも、楽しみの一つだろうからな。やるだけやってみるさ。
「そうか…でも、戦いは戦いだ。勝つか負けるか、これで決まる。だけどまあ、この星が戦場になる前までは、のんびりしておくとするかね。さてさて…よかったら、この周辺観光してみるんだ。特に、スコラクス氷山と呼ばれる山の麓は、綺麗だぞ?」
そうだな。まだ時間もあるし、色々見てくか。たぶん、セーブポイントも見つかるだろう。いまだにセーブポイント発見を楽しみにしてるんだからな。海王星にいければ更に増えるんだろうけど。
そう早い段階で出撃は無いだろう。だったら今は、そういうのも楽しんでみるか。
アレンは、システムから付近の自動操縦タクシーを呼び出した。見知らぬ土地にいる場合は、この機能が非常に役立つ。当然コロンは発生するが、アレンはそれを承知の上だった。ちなみに、システムから呼ぶタクシーは全世界共通である。どこでも呼べるという訳ではないが、すべてNPC管轄の車両が迅速にやってくるのだ。
そして彼は、言われた山、スコラクス氷山へと向かう。
Space Fantasy Game
―極寒地の、探索―
[執筆者より]
ここまで読んで下さってる読者様、また感想を頂いた読者様、いつもありがとうございます。正直な話、色々な理由があれ、趣味で書いてここまでブックマークが増えるとは思っていなかったのです。
これからも、ゆっくりと更新を続けていこうと考えています。自分なりに表現出来たらな、と思います。もちろんそれには賛否両論あると思います。しかしそれもすべて含めて、「この一文良いな」程度でも思っていただけるような話を展開できれば、と思っています。そんなゆるり(?)と更新を続けるこの小説を、今後ともよろしくお願いします。




