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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第二章 本質の渦中へ
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第25話




 あぁ。本当に、何もかも、一気に変わった気がする。確かに、この空間に来るのは夢見てた。一度は見たいと思ってたし、ゲームが始まってからも、あの光景に憧れてた。それを今、全く別の場所で、まさかこんなことしてるだなんて…世の中何あるか分かったもんじゃないな。




 『…君にも、じきに分かる。現実の中での仮想世界は、本来区別され続けてきた。それが、何を意味するのかを…』




 だが、結局のところあれには一体何の意味があったんだろうな。




 「ワープ完了。これより先は、海王星宙域の警戒エリアに入る」



 ここでいう警戒エリアとは、当然出征している彼らが敵と遭遇する可能性のある宙域を言う。情報を共有する全艦は、お互いの位置情報を常に送信しながら、見えない敵を探すための索敵活動を行っている。宇宙空間に出れば圧倒的な広さを持つ。その中で敵を探し出すのは、簡単なことではない。

 指揮を執る、いわゆる旗艦と、巡洋戦艦が3隻。それぞれ数度のワープ、ゲーム内の時間にして2時間未満で、予定の宙域に辿り着いた。


 「…終わったか」

 「そうみたいだな。この辺りは比較的穏やかな宇宙のはずさ。敵にさえ会わなきゃな」



 恐らく、この流れはそうはならんだろうな。運営サイドだって、この状況は上手く利用してほしいって、思ってるだろう。

 俺たちは海王星が近くにある、という宙域に辿り着いた。まだ小さい点でしかない海王星だが、そこへ立ち寄ることが俺たちは出来るらしい。でも、普通地球以外、人は住めないよな…って思うところだ。海王星は確か厚い大気に覆われて気圧も凄いもんだって、聞いたことがある。一様先輩らしいマルクスさんの話によると、ガス惑星やそれに類するもの、天王星系惑星とかは、ゲーム上でいろいろな手段を使って、人が住めるような工夫をしてるらしい。ゲームだから大気とか成分とかは、厳密にはならんはずだ。それに、ここらの惑星で初回ログインした人も、いるだろうしな。



 「よーし、パイロットは全員自分の機体整備に入れー!」



 そう言われても中々よく分からないが、とりあえず整備班長って人がそういうんだから、割り当てられた戦闘艇を調べてみよう。

 戦闘艇の武装は、もちろん一番はブラスター砲だ。こいつのエネルギーが無くなれば、他の武装は…うん、熱探知誘導ミサイルってやつだけだな。無駄打ち出来無さそう。というかこの手の話は本当によく分からない。軍備に詳しいプレイヤーなら喜んで志願するかもしれないね。



 「…静かですね、閣下」

 「その方が良い。何もすることが無い方がね」



 旗艦の艦橋で、足を机の上に投げ出しながら映像で外を見る司令官。普通こんなことする司令官はいないだろう、と周りが思いつつも、なぜかその場に馴染んでいるのが、不思議なところである。

 この宙域に入ってから、更に1時間が経過する。何も起こらないこの状態で、緊迫とした空気が続くと、流石にプレイヤーも疲れを感じるものである。ただ、ユラ准将はひたすら映像を見続け、集中力を維持し続けていた。この間に一度ログアウトしてリアルで用を済ませている人もいる。



 「ケン中尉。もし、冥王星が落ちていて、我々がこの宙域で敵と遭遇すれば、どんなことが考えられる?」


 「その場合は、海王星でさえ危ない状況に…」


 「そうだろうね。でも、敵がそこまで出来る集団であるかどうかの、確証がない。確かめるのは必要だが、深追いする必要はない」



 もっとも、この時言葉ではこう言っていたが、ユラの頭の中は既に我々の戦力の一歩先である、という予想が出来上がっていた。出なければ、こんなに簡単に緊急出撃することにはならなかっただろう。帝国側でログインを迎えたプレイヤーたちがあまりにも強いのか、あるいはNPCのおかげか。はじめは戦力差など全く無かったはずだが、今はそれを否定することが出来ない状況でいる。その中で、自分には何が出来るのか。ゲームの中でも「勝利」という気持ちを得るためには、それらしく最善の道を選択することも必要となるだろう。



 「何か信号となるものはキャッチできるか?」

 「依然、不明です」


 ケーンバークも望み薄いと考えながらも、出来る限りのことはしようと思っていた。あの記録映像からしても、相当ひどい状況である可能性は十分に考えられる。

 そしてその時だった。突然艦内に警戒コールがもたらされる。



 「所属不明の艦隊らしきものを発見。数はおよそ10隻程度。進路は、こちらへ向かってきています。予想会敵時刻30分後と推計」


 「…どう出るかな」

 「敵だと、厄介ですね」



 所属不明の艦隊を捉えたことは、すぐに各艦に伝えられた。その情報が流れると、各々緊張感が増してきたようにも見られる。無論、彼もそのうちの一人であった。

 これはゲームなんだ。そう言い聞かせても、なぜか訪れる不安に落ち着きを失いながらも、パイロットたちはコックピットで待機する。



 「怖がったってしょーがないさ。敵が強けりゃ俺たちが出る前に、船ごと吹っ飛ぶさ。そうすれば、俺たちはまた地球で再スタートすることになる」


 「…なるほど」



 なら、勝って海王星あたりにセーブポイントを置きたいところだね。わざわざここまで来たってのに、何もないんじゃ話にならない。とにかくは勝ってもらうしかないみたいだ。

 このゲームの宇宙戦闘は、当然のことながら、俺たち戦闘艇同士の戦いだけじゃない。よく言うかな、艦隊戦というやつも当然ある。どのタイミングで戦闘艇の力を借りることになるかは別にして、それまでは艦隊同士の戦いで戦況が左右されるって感じだ。現実は逆かもしれない。今はもう、戦闘機が戦争支配するみたいなもんだからな。


 …逆に、その状況にこのSFGも持っていけば、ゲームの質がまた変わってくるかも?



 「識別信号該当なし!」

 「警告を呼びかけろ」

 「了解…前方の所属不明艦隊に告げる!貴艦隊は共和…」



 呼びかけても、応じる訳がない。ユラ司令官はそう思いつつも、まずは相手と接触を試みた。3回繰り返したが、予想通り、ある意味で期待を裏切って反応は無かった。彼としては、出来るならあまり戦いたくないと思っていた。この状況下でそうもいかないだろう、と考えてはいたが。

 その瞬間。艦橋部に警告音が鳴り響く。高音がわずか1秒ほど響き渡り、その瞬間眩い光が一つの太い線を成してスクリーンから艦の右側へ通過していく。小刻みに強く艦内が振動する。



 「おいおい撃ってきたぞ!!」

 「敵だ敵だ!!」


 「慌てるな。全艦に司令、主砲副砲にエネルギーを充填。すぐに応戦する」



 一方。戦闘艇のあるデッキにも既に「戦闘開始」の連絡は届いている。高揚感を高める者もいれば、彼のように、緊張や不安が募る者も大勢いる。もちろんこれはゲームだから、実際に死んでも命が無くなることはない。だが、出来るだけ仮想の中でも現実で表現できる、リアリティを追求している宇宙戦争であれば、そういった感情に飲み込まれそうになるのも、無理もないことである。



 「司令官!圧倒的に攻撃力が違います!これでは対応できません!!」



 第四、第七、月面基地からの増援により、どちらも同数で始まった艦隊戦だが、わずか3分で共和国軍の戦艦が一隻航続不能に陥った。別に特別な攻撃を仕掛けてきた訳ではない。エネルギーを媒介にしたブラスター砲の主砲や副砲が艦のあらゆる部分に直撃し、大破状態になったのである。ここまで来ると、ほぼ漂流状態に等しくなり、生還は厳しくなる。

 ユラは、艦隊をそのままの状態で後退させながら応戦するようにした。つまり、敵艦との相対速度を維持したまま、一定の距離で戦おうとしたのである。


 「熱探知ミサイル第一撃目、発射」

 「撃てい!」

 「ケン中尉、相手の識別信号を確認、傍受してくれ。以後その情報が敵か味方かを分ける大事なものになる」


 「了解」



 海王星宙域周辺にて発生した、本来であれば小規模な艦隊戦。しかし、両軍にとっては戦闘経験などほぼ無いに等しく、具体的な戦略などはなく、はじめは真っ向からの撃ち合いとなった。それゆえに、被弾した艦が航行不能になるのが目立ち、開始30分で共和国軍は3隻が撃沈、消滅した。当然ここに勤務していたプレイヤーたちは、全員が最後のセーブポイントまで、軽いペナルティを受けて復活する。対する敵軍は、まだ1隻大破がいるだけであった。



 「…色々やってみないと、分からないか」

 「はっ、何かおっしゃいましたか?」

 「いや良いんだ。無線を繋いでくれ。全艦に聞こえるように」



 その直後。残った艦は、いわゆる味方同士の「陣形」を変更し始めた。単純に横一列に並んで斉射するのではなく、ユラは左右の端に位置する艦を突出させ、全体を前進することにより、Uの字型に陣形を作ったのである。

 この辺りは、チェスや将棋、オセロなどからも応用できる可能性があるかもしれない。ユラはそう思いながら、とにかくやってみようという気持ちから艦隊を動かした。それまで彼は、思い切った行動が出来ずにいた。全体の指揮をする者として、戦いにおける犠牲が多過ぎては申し訳ないと思い、萎縮した、あるいは消極的といった態度を取らざるを得なかった。

 しかし、戦いはそうではない。ましてそれがゲームであれば、なんでも挑んで自分たちの形にするべきだ。そういう判断が、彼の重い腰を上げるにいたった。



 「攻撃態勢は、陣形を二分して行う。それぞれ敵艦隊の左右を圧迫し、消耗させた後、戦闘艇を発進させて更に突き崩す」


 「なるほど…!!」



 敵軍の攻撃は常に真正面から、それも共和国軍すべての艦隊に向けられた砲火であった。それで敵軍より共和国軍の方が撃沈数が多いのだから、火力や武装といった点などは、相手に軍配が上がっていると考えて良い。その結果、ユラはまず左右端にいる敵艦を集中攻撃し、そこから中央部を圧迫しようという作戦に出たのだ。

 すぐに命令が実行され、エネルギーが一つの大きな流れを生み出して敵軍を飲み込もうとする。劇的なまでの戦況変化はもたらさなかったが、不利な状況を脱するに至った。


 「よし。戦闘艇、発進用意」




 …ついに、俺が戦いに…ちっ、ゲームなのに、この緊張感。楽しみたいのにこの不安。ヴァーチャルなリアリティというのがこれほどの影響を持つのか。あまり考えたくなかったが…。



 「アレンです。出撃用意完了」

 「了解。自動誘導開始。第三カタパルトから射出」




 …でもまあ、やってみるか!




 Space Fantasy Game

 ―このゲームの、敵役―




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