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Space Fantasy Game  作者: うぃざーど。
第一章 キッカケが整うまで
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第12話




 いつもとは違う、何かが。

足音が三つ…それに、移動している訳じゃない。同じ場所でしつこく鳴ってる。耳が良いってのはありがたいものだ…こういう時に役立つ。普通に通過すれば何も起こらないのかもしれない。だが、この音の鳴らし方は不自然だ。



 「…明らかに、わざとだ」



 …だとすれば、何らかの行動と考えていいだろう。ただこの下町にいるというだけではない。それに…なぜ人気のないこの時間帯に、それもあからさまに音を鳴らす必要があるのか。

 考えている、場合じゃない。気になったら、確かめてみるしかない。俺は上着のポケットから初期装備ブラスターのエネルギーパックを取り出し、ブラスターにはめ込んだ。10発入り…護身用としては、十分すぎる量だ、と思う。まだ実戦経験がない俺には…だが、とにかく今は確かめるしかない。

 俺は、従業員専用の駐車場があるビルを目指していたが、もう一度取引相手のビルに引き返す。この動作をすれば、向こうが何らかの動きを見せてくるかもしれない。それによっては…。



 「…」



 こつ、こつ。

やはりそうか。俺が道を引き返したら、奴らも動き出した。これだけ静かな夜の街だ。そしてこの辺りは周りが広い。相手の音はよく聞こえる…だが、こちらの音もよく聞こえるだろう。それが俺に反応してきたということは、間違いない。何か目的がある。

 この辺りで何かあると、まずいな。ついさっき取引相手と話してきたばかりなんだ。変に怪しまれては、ゼウ商会に迷惑をかける。ならば…と、俺は駐車場のあるビルから反対側の、取引相手のビルからも離れる。こんなことをしなきゃならんのが面倒だが…。



 《この世界では、俺たちはスキルを使わず、自分の手足で相手を攻撃することができる。そういう意味では、現実と同じだ》



 《リアルのプレイヤーは、リアルで人を殺すことと変わらない行為を、このゲームで出来る》




 …もし、奴らがその類のものだとすれば?

放ってはおけないだろう。いや、逃げれば済む話だが、それでは面白くない。なぜか…確かにPKはやや怖い点もある。だが、いつまでもそれに怯えていては、いざって時に困るのは俺だ。


 ここは、ゲームなのだから!



 「さて…どうすっ…!?」



 …掠めただと!?

奴らか…いやしかし、一人しかいない!分散したのか…だがあれは間違いない。相手もブラスターのようなものを持ってる。若干距離があるようにも思えたが、こっからでも撃ってきたか…!!

 だったら、俺も一発!



 「チッ…!!」



 ブラスターのセーフティーロックを手慣れないまますぐに解除し、瞬時に後ろを振り返ってアレンはトリガーに指をかける。振り向いた先、およそ200メートルほどあるだろう距離にうつる、街の光に照らされた陰に向かって、発砲した。グリップに若干の振動が伝わった瞬間、ブラスターの上部スライドが一瞬で作動してわずかな排熱を行う。排熱動作と同時にブラスターの銃口から若干の青色に染まった光が周囲の暗い地面を照らし、そして一発のエネルギー弾が放出される。超高速で直線状を描くエネルギー弾の軌道が、アレン本人にも見えた。



 「はずれたか…まずい!」



 ヤバい。いつの間にか囲まれていた…とにかく走れ!!相手の武器がよく分からんが、当たったらヤバそうだ。しかし、この荒廃してそうな下町にも公園…いや、なんだろうな、緑地があったとは思わなかった。ここなら若干隠れながら移動できるか…。

 これで疑いようもなく、奴らの狙いは俺だってのが分かったな。しかし…ここからどうする?相手は音を消した。俺が潜んだから、相手も静かに俺を探してるんだろう。3人相手か…周りを上手く使う必要があるな。



 「…」



 静かだ。不気味なくらい。だが…なぜだろうか、この危機感を楽しんでいる気がする。襲撃されているのは俺なのに、逆に俺は相手を倒そうと考えている。妙なもんだな…。

 俺は、木の下で太い木の枝を広った。枝というかもう丸太みたいなもんか。よし、深い茂みに隠れて…そろそろだな。



 静かな空間の中で、若干聞こえる静かに歩く音。それが間近に迫るのを、アレンはよく聞いていた。相手の顔も分からない恐らくプレイヤーが自分の目の前を通過しようとする時―



 「…!?」



 アレンは、持っていた木の枝を相手の顔面にヒットさせる。そばまで来てようやく相手の顔が若干見えた。黒いマスクで口を覆っている。何かが飛んでくるのを分かった相手の顔は、驚いた表情をしていた。アレンにも見えていた。

 そして彼は、ブラスターを両手で瞬時に構え、その人が右手に持っていたブラスターめがけて発砲する。



 「うわぁっ!!」



 …しまった!ブラスターは破壊判定があるのか…!!

だが、これで相手は怯んだだろう。死んではいないか…?おっと、余裕している場合じゃないな。



 「次…あと二人だ」



 どうやら至近距離でブラスターの爆発を食らった相手の一人は、怯んだようだな。その場に倒れてるのが一瞬で見えたが…もう既に二人目が近くまで来てる。この緑地にいては危険だ。そうだな…駐車場に近くはなるが、あのビルの合間に…。

 恐らく、相手は俺がこのビルの合間に逃げ込むのを見ただろう。…ん、走ってくる音も聞こえるな。どうやらこのまま真正面から来そうだ。さてどうする…どう排除するか。出来るだけ殺したくはない。上手い手を使って…



 「この中だ。いくぞ!」

 「野郎…!!」




 …そうだ。もう少し、もう少し来い…!



 「よし、今だ…」



 アレンは、残り二人が狭いビルの合間を進んでいくのを見て、タイミングを見計らって突然飛び出す。すぐに殺すことも出来ただろう。しかし、彼は今回襲撃された側であり、相手を殺せば自分がPK扱いとなってしまうと考えた。

 アレンは、二人に撃つのではなく、ビルの合間の窓枠二ヶ所に向けて瞬時に発砲した。目の前に現れた彼に向けて発砲しようと、二人も瞬時に拳銃を向ける。その時のアレンの顔は、やや自信に満ちた顔だったのだ。

 二人がトリガーに指をかけるよりも前に、なんと上から植木鉢が二つ、しかも相手二人の頭に直撃する形で落下してきた。



 「うがっ!!」

 「おおぅっ!?」



 そして、彼は水道の蛇口根本に向け発砲する。エネルギー弾に直撃を受けたその部分は破裂し、同時に二人に向かって大量の水が勢いよく噴射し始めた。



 …よし、これでいい。逃げる!!





 ゼウ商会 オフィス


 「おぉ、エナ。早かったな。お疲れだ」

 「あまり手間のかかるものではなかったので。無事に終わりました」



 今日、ゼウ商会は総出で仕事を片付けに入った。エナも今日は外で仕事を済ませてきたのだ。オフィスで仕事をしていることが多いエナではあるが、今日一番最初に帰ってきたのは彼であった。ゼウはテレビをつけながら、右手にコーヒーが入ったマグカップを持ち、ラップトップの画面を見続けていた。エナが見ても、ゼウがNPCだとは思えなかっただろう。NPCのために消費アイテムが存在しているのも、このゲームのある意味特徴である。



 「そうだ。この間の…あれは、もう誰かが使っているんだろうか」

 「まだ、情報が確かではありません。噂では、限定された人にしかあれは使えない、とか…」


 「噂か。確証がない限りは、色々飛び交うだろうな」

 「でしょうね。気になりますが、正体不明です…そもそも物であるかどうかさえ…ん?」



 エナはシステムが自動起動するのを確認した。目の前にウィンドウが表示される。文字は認識できないが、ウィンドウの表示そのものは、ゼウも見ることが出来る。エナはシステム表面に、電話が入っているのを確認して、そこをすぐに指でタッチした。

 相手は、アレンだ。



 「もしもし、エナだ。…なんだって?」

 「…?どうした、なにかあったのか、エナ」


 エナはアレンと通話をしながら、右手で少し待ってと、ゼウに無言で合図を送った。ゼウはそれに頷く。


 「…分かった。アレン、すぐに戻ってきてほしい。詳しい話が知りたい」



 エナはそう言ってアレンとの連絡を切って、システムを閉じる。彼の表情は特別変わりはなかったが、ゼウは次にエナから発せられた言葉をはじめ信じることが出来なかった。



 「アレンが、全ての取引相手との連携確認をし終えた後、待ち伏せにあったようです。プレイヤーに…」


 「なんだと…本当か!?アレンは無事なのか!?」

 「はい。取引先とは距離を取って対処した、と…」



 アレンが待ち伏せを排除したと言うのだから、ゼウはそれを聞いて少し落ち着いたが、それでも信じられないような表情をしていた。まさか自分の商会のメンバーが襲撃に遭うとは思ってもいなかったのだろう、とエナはその場で判断した。事実、エナ自身がそう思っていなかったのだから。

 しかし、これで厄介な事態が発生したことになる。もし待ち伏せしていた人が、はじめからアレンを狙っていたとすれば、状況は悪化する一方だ。しかし、誰でも良いからとにかくPK狙い、という場合には、今後陸輸の安全面を確保する必要がある。

 十数分後、彼が帰ってきた。



 「無事で良かったよ、アレン」

 「あぁ。何とか切り抜けた。焦った焦った」



 とにかく、無事に帰って来れて良かったな。奴らは気絶したままか、あるいはもう動いてるか…いずれにせよ、俺の後の行動は見られてない。これなら大丈夫だろう。

 俺はその後で、ゼウに事情を話した。ゼウははじめ信じられないような、そんな顔をしてたが、事実を認めた。そして、皆が仕事を終えて帰ってきた時に、こう言った。



 「まだ運営が始まってから数週間しか経ってない。が、既にPKを狙う奴もいるようだ。今後の仕事に関わる重大な事件だ。皆、くれぐれも気を付けてほしい。頼んだぞ」


 「チッ、厄介な野郎たちだな。アレンが無事で良かったぜ」

 「本当だよー。私も気を付けないとなぁ…」



 PKは、このゲームは規制していない。何故なら戦争が起こっているからだ。戦いがあるのなら、プレイヤー間で殺し合うのは当然だ。何ら不思議なことではない。今回は…俺がそれに巻き込まれた、と考えれば良いな。そうだ、エナ。



 「仕事外…ということになるんだろうが、エナに頼みたい。ここ最近街でPKが発生した事件や、犯人に関する情報を調べてほしいんだ。俺たちの間でも、危ない奴らの情報は共有しておく必要がある」


 「…うん、そうだね。良い意見だと思う。すぐにでも調査してみるよ」



 だが、エナが結果的にその情報を掴むまでには、一週間が必要だった。それはエナが悪いってわけじゃない。やっぱりあれだ、PKをやる集団ということを考えれば、人にばれないように気を付けてるってことだ。情報があまり出回ってないのも事実だろう。リアルのネットでは、既にPK集団の話が掲示板などで噂となってる。実際に集団にやられた奴が書き込んでたり、と。信頼していいかどうかは分からないが、大体の人は皆「デスペナルティ」を気にしていた。経験値の消失やアイテム耐久度の低下、所持金減少…どれにしたって、良いものなんて一つもない。



 エナが情報を手に入れるために、さらに一週間が経過した。ゲームが運営を開始してから、三週間となる。






 6月に入り、梅雨も本格的にやってきた。招かれざる客、追い返したい敵みたいなものだ。俺の住んでいるこの地域は、周りに山が多く、天候が変わりやすい。地元に住む人がいうには、この時期は太陽が顔を出すことが珍しいようだ。我ながら、おかしな土地に来たもんだ。



 「おいす零治!」



 学校についてみれば、すぐ大きな声で、俺の名前を呼ぶ奴がいる。俺がいつもこの時間に登校してくるのを知って、なんでかしらんが、この間から教室の窓を開け、顔を出して俺に声をかけてくる。



 「早く上がって来いよー」

 「分かった今いく今いく」



 何回目のやり取りだろうか。お互いが何も言わなくたって、毎日こんなもんだ。当たり前のようなやり取りになってるが、何と言うか、何か、違う。詳しいことが分かれば、苦労はしない。

 教室についてみれば、まだ朝早いのに、既にクラスの3分の2の生徒が中にいる。なかなかどうして、みんな勉強熱心なのか。否、誰も机に向かってテキストを広げて、ペンを利き手に持っている奴などいない。みんな、友達と話してる。今はまだ良いんじゃないかな、試験まであと4週間だし…。

 俺がテツと話をし、席に座ると、すぐ近くで話していた女子の高校1年生三人が俺たちに話しかけてきた。



 「相坂君原田君おはよう!」

 「おいすっ」

 「おはよー」

 「二人ともー、また夜遅くまで起きてたんだ?」

 「あったりまえさー!やめらんないからなー」

 「良いのかな?原田君この間の科学中間テスト…」

 「あー言うな言うな!ちゃんと勉強するっての!」



 その場にはすぐ笑いが生まれた。永倉さんが話す中間テストは、科学のみ抜き打ちで行われ、俺たちは先生の圧力を全面的に押し付けられた。満点はいないという。テツはその時のテストで平均点を大幅に下回る数字を叩き出し、危機感を覚えていたところであった。それが、この間のこと。今から約4週間前、だと思う。

 アレが出る1週間前だと、俺は記憶している。



 「相坂君も毎日してるの?」

 「あぁ。テツと同様、一度はまったら中々抜け出せないみたいだ」

 「そーなんだよそうそうそうなんだよ!だからさ、女性の皆様方もご一緒に―」


 なんて、テツが言っても、女性たちは相手にしてくれない。「高いから」「中々行動には移せない」などと、言う。

 さて、たぶん他の人がこの会話を聞けば、お前たち一体何の話しているんだ?となるだろう。



 「もちろん零治、今夜も潜るよな?」

 「あぁ。やっと情報を手に入れたからな」




 そう。俺たちをここまで引き込んだ、アレが、昨晩も、そして今晩も、今も開かれ続けている。

 それは、今から3週間前のことになる…。






 …そう。アレから3週間後、こう繋がるのだ。





 Space Fantasy Game

 ―初めての、対峙―




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