ラナから花へ 29
お母様の放った言葉、「あなたもなの!?」の意味がわからず、何も返事ができないでいると、お母様が畳みかけるように叫んだ。
「だれもかれもが、ルリが目をさまさないからって、言いたい放題、嘘ばっかり言って! ひどいわ!」
「だれもかれも? 嘘を言っている? あの……、それって、どういうことでしょうか……?」
ますます意味がわからなくなって、思わず、声にだして聞き返してしまった私。
「ラナ、さっき、あなたが言ったように、みんながみんな、ルリに関して嘘ばっかり言ってるのよ!
ルリを突き落とした女の彼氏とやらは、ルリに、女の手作りのとんぼ玉をとられて、1か月付き合わないと、そのとんぼ玉を壊すと脅されていたなんて、わけのわからないことを言い出したのよ! そんな女の作った、なんの価値もない、とんぼ玉なんて、壊れたところでどうだっていいし、脅しにもならないでしょう!?
そもそも、天使のように無邪気でかわいらしいルリが、人を脅すなんて、できるわけがないじゃない!
自分がルリを好きになったことで、あの女が凶行にはしって怖くなったのね。とんでもない作り話をして、全部、目のさめないルリのせいにしようとしているのよ!
なんて卑怯な男なのかしら! さすが、凶悪な女の彼氏だった男だわ!」
えっ……? ルリが脅した……?
確か、あの時、ルリは、彼女がいたけど、やっと別れてくれた……みたいなことを言って、喜んでいたよね?
その男子生徒は、彼女がいるのに、強引に迫るルリになびいんたんだろうと想像はしたけれど……。
まさか、ルリが脅していたなんて……。
ずっと、近くで見てきたルリは、ひたすら甘やかされて、なんでも自分の思いどおりにしたがる、わがままな妹。
ただ、他人を脅すことまでして、自分の思い通りにする人間だとは思わなかった……。
よく知っていると思っていたはずのルリが、なんだか、見知らぬ得体のしれない存在のような気がして、怖い……。
同時に、これは時間が戻る前には、私は聞かなかったことだと気が付いた。
スマホ越しに、お母様の金切声が響く。
「そうしたら、今度は、ルリが階段から落ちたところを見たという女子生徒がでてきたの!」
「え……、目撃者ですか……?」
思わず、私がつぶやくと、お母様が怒りにまみれた声で言い返してきた。
「目撃者なんかじゃないわ! でっちあげよ! だって、その女子生徒は、あろうことか、ルリは突き落されたんじゃなくて、勝手に落ちたって言い出したんだもの!
ルリが、手に持っていた物を、その女が『返して』とか言いながら、手をのばしてきて、そこでもみあって、ルリが階段から足を滑らせて転げ落ちただなんて言うのよ! もちろん、嘘に決まってるわ!
きっと、あの男の『とんぼ玉』の作り話と、内容を合わせてきたのよ。
ルリを突き落とした女って、奈良林グループの娘なんですって。きっと、女の親がお金で雇うか、圧力をかけて、嘘の証言をさせたのよ! 警察も学校も、まるめこまれたみたいで、ルリのことは事故だって言い出したの……。
ルリを傷つけただけじゃなく、汚い手を使って、ルリを貶めるなんて……!
ルリを突き落とした犯人の女は、ショックでしゃべれないなんて、仮病に決まってる。奈良林グループだか何だか知らないけれど、お金にものをいわせて、ぬくぬくと守られているのよ! あり得ないわ!
なんて、かわいそうなルリ……。あの女の家族も、加担した人たちも絶対に許さない……!」
突き落されたんじゃない……?
目撃者がいたなんて、時間が戻る前は聞かなかったことだ。
確か、お父様から聞いた話だと、記憶をなくしたルリ……まあ、中身はクリスティーヌさんだけれど、その時に何があったのか聞きたいとお父様にたずねてきた。
それで、お父様が正直に話すと、クリスティーヌさんは、突き落されたのではなく、足を滑らせたと言ったのよね。その証言で、ルリの件は事故になったって、お父様は説明してくれたけれど……。
本物のルリなら、他人をかばうような、そんなことは絶対に言わない。
逆に、突き落とされていなくても、突き落とされたと言いそうよね……。
つまり、私の知らないところでも、時間が戻る前とは、いろいろなことが変わってきているということ。
ただ、もちろん、かわらないこともある。
あの時、お父様から、ルリがしたことの詳しい内容は聞かなかったけれど、お父様も、あんなひどいことをするルリに、ぞっとしたと言っていたから、おそらく、ルリが、とんぼ玉をとって脅したというできごとは、時間が戻る前も、今も同じなんだと思う……。
色々とあわただしい日々で、更新が遅くなっております。
不定期な更新で、読みづらいところも多々あるかと思いますが、読んでくださったかた、本当にありがとうございます!




