1:醤油みたいな後悔と砂糖みたいな反省と
恋愛もの初めてです。おてわらやかにお願いします。
時刻は午前七時になったばかり。食卓では私の他に一人の男子が朝御飯を食べている。私の弟の龍弥だ。自分が食べ終わってもそのまま食卓で待っている。じーっと見られてるとお姉ちゃんは食べにくいんだぞ……? 結局私が食べ終わってから龍弥は口を開いた。
「莉沙! お願いがあるんだけど……、いい!?」
昨日からもしかしたら、と思っていたんだ。何か言い出すのではないかと。だって挙動不審だったんだもの。別にお願い事ぐらいはいいけど、お腹が痛くなるような願い事は勘弁だ。
とりあえず事情を説明される前に驚かないよう自分の情報を復唱しよう。もちろん心のなかで。
私の名前は楼莉沙。今年十六歳になる予定の遠山学園一年生。優しくて気遣いができて笑顔が可愛い双子の弟がいる。私と似なくてほんとに格好良い。今までにもらったラブレターの数言ってみろお前。
両親は十四歳の時に亡くなった。でも母に毎日お小遣いという名の大金を貰っていたので、私立の高校にも通えている。断じて私は普通の一般的な女子高生だ!
さて、一応弟のことも覚えていられるよう、弟のことも復唱しておこう、勿論心のなかで。
目の前にいる私の弟、楼龍弥は同じ学校に通っている双子の弟だ。スポーツ推薦で学園に入学した。ちなみに私は特待制度使ったよ!
そして今は遠山学園トップ6の一人。贔屓目から見ても格好いいと思う。「トップ6とかまじか」って本人も言ってた。苦笑いで。
そして龍弥のお願いというのは……。
「先輩を家に住まわせたい!」
と言うことだった。弟よ、暮らしていくにも色々大変なんだぞ。私たちにはお金が必要なのだよ。そして私の答えは決まっているしな。聞くだけは聞くけれど。
「とりあえず説明して?」
「ストーカー被害に悩まされてる先輩を助けたいんだ」
下から目線で「ダメ?」とかいうなよ……。お姉ちゃんは純粋すぎる視線に心が痛いよ。そして答えはもちろん。
「いいよ」
「やたっ!」
可愛い弟の頼みだしな。少しぐらいは我慢するさ。
「ただし、その人のお母さんにしっかりと話をしなさい。私たちの家には大人がいないんだから」
「うん! ありがとう莉沙ちゃん!」
テンション上がるとちゃん付けになるんだよなぁ。別にいいけど。
……一応後で家賃のことも検討しておこう。
◇◇◇◇◇◇
「結局泊めることにしたの?」
「うん。弟の頼みだしね」
学校に行ってお昼休みになった。余り人が来ないお気に入りのスポットで私は親友である浜松結城を待っていた。
しばらくして結城がやって来て、先生に捕まっていたのだと話してくれた。というか愚痴だった。
結城の愚痴が終わった頃、入れ替わるように朝の件を話してみた。
そして言われたのが。
「あんたバカにも程があるよ」
ひどいっ!
「何でよ」
少し頬を膨らませてみた。すぐに潰されたけど。って、つねらないでください結城様っ!
結城はつねる手を離して説明してくれた。
「何でって、莉沙はトップ6とは関わりたく無いんでしょ?」
それはもちろんと、首肯する。関わったってろくなことがないし。ただひたすらにやっかみを受けるだけだ。
「莉沙の弟が仲がいいなんて言う先輩なんてトップ6辺りでしょうが」
愕然。私はそれを身をもって体験した。そう、トップ6は仲が良いのだ。
「今からお断りとか……」
「できないだろうね」
即答ですか! へこむよ!?
どうしようと頭を抱えたらちょうどチャイムがなった。
授業中に何とか考えよう。そう思って結城の後を追いかけて教室に向かった。
そして授業が終わる。名案が考えついたかと問われれば……スライムのようにぐんにゃりしている私を見て察して欲しい。
「次からは安請け合いしないんだからぁ!」
結城がため息を吐いた。いつもなら「幸せが逃げるぞー」と言って、「もともとそこまで幸せではない」というやり取りをするのに。
「別に住ませるのを辞めさせるとかじゃなくてもいいんじゃないの?」
唐突に結城が言ってきた。
「うぇ?」
「絶対に守ってもらうルールを決めるとかしたら? それにまだトップ6だとは決まってないし……」
跳ね起きて抱きつく。そうだね、まだ決まってない!
「名案だ!! さっすが親友! 大好き!」
私の親友は女神だった。少し耳が赤くなるからツンデレ女神だ。
「失礼なこと考えたでしょ?」
「いえいえそんな。大好きだよゆーき!!」
「……うるさい」
顔を真っ赤にしてそっぽ向いちゃった。照れてるところも可愛いなぁ!
そうやって私が結城にくっついていると龍弥がきた。なんか不機嫌に見える。
「莉沙」
「龍弥? どしたの?」
あー、むすっとしてるなぁ。まあ、可愛いからいいんだけどさ。
「あーっと」
龍弥は結城を見て言葉を濁した。
「一緒に帰るなら私、先に帰るよ」
「ごめ、浜松」
「いいよ。後日莉沙にデートしてもらうから気にしないで。ね?」
気を使ってくれた親友は最後に微笑んで帰って行った。もちろん私はその言葉に頷いておくことは忘れなかった。
「デートって……」
呆れてる、呆れてるよ! あの龍弥が! いつもなら「ふーん」で終わるのに!
「どしたの?」
「……」
かと思ったらまたむすっとしたなぁ。心配なんだけどな。
そのうちにそういう顔になるぞ?
「まあ、いいや。とりあえず行くよ。……行けば分かるだろうし」
歩き出した龍弥を見て最近学園で龍弥に会っていないと思った。会ったら会ったで大変だから別にいいけど。
それでも改めて久しぶりに一緒に帰るな、とか思うとついつい嬉しくなるなぁ。
「うん!」
「……」
あれ、顔が赤い。
「大丈夫?」
「平気だから! 行くよ!」
そういえば、行けば分かるって何のことだろう?
最近龍弥のことがよく分からない。今度は不機嫌になった。ふいってされた。
「会って欲しい人がいるんだ」
会って欲しい人? 誰のことだろう? というより、帰るわけじゃあ無いんだ。
……なんか少しだけ嫌な予感がする。
「本当は余り会わせたくないけど……」
龍弥が何か言ったようだけど、しつこく聞くと嫌われるから追求はやめておく。
連れていかれたのは、旧校舎の三階の空き教室だった。ここにはほとんどの生徒が着たことがないだろう。私もそうだ。
その中の窓際、一番後ろの席で制服の上着を枕がわりにして眠っている人がいた。髪は茶色で男の人だった。
それしか分からない。
「あの人?」
「そう。あの人が莉沙と話したいって」
寝てるんだけど……。そんな心配をよそに龍弥が起こしに行った。
「先輩、先輩! 起きてください!」
よく寝てるなぁ。というかもう帰ってもいいかな? ご飯の準備したい。
「六会先輩!」
呼ばれた先輩が動いた。そろそろ起きるみたいだ。
それにしてもどこかで聞いたことのある名前。たしか……。
「遠山学園トップ6の人!?」
私の声で先輩が起きてしまった。ゆっくりと顔を上げていく。顔を見られる前に逃げなきゃ!
「ちょっ! 莉沙? いきなりどうしたの?」
答えている暇はないのだよ! 命の危機だから!
「ゴメン先に帰る!」
龍弥を置いて逃げ出した私は学園の外にある公園にたどり着いた。
まだ息切れしているけど結城に電話をした。何をするよりもまず、親友に電話だ。
すぐに出てきた。
「どうだった?」
「六会って人だったぁ! なんか聞いたことのある人なんだけどぉ!」
「それはそうでしょう。トップ6の人なんだから」
なんか結城落ち着いてるよ? なんで?
「で、どうだった?」
「逃げ出して来ました」
「逃げ出すって、龍弥はどうしたの?」
「……ヤバイ。置いてきちゃった」
あ、向こうからため息が聞こえるなぁ。
「たぶんだけど、帰ってきたら問い詰められるね」
「まさか。嘘でしょ」
「それでバレるんじゃない?」
思わず固まってしまった。そう、私はトップ6と関わり合いになりたくないということを龍弥に言っていないのだ。
理由はただひとつ。龍弥がトップ6に入っているから。
私たちの姉弟仲は良くなくてはならないのだ。
「ど、どうしよう結城~!」
「……しょうがないな。今日は家に泊まりに来なさい。明日も明後日も休みなんだから好きなだけ居たらいい」
「結城ありがと!」
やっぱり結城は優しいと思う。私の大切な親友だ。
「ついでに醤油買ってきて。お砂糖も」
訂正。私の親友は人使いが荒い。
読んでくださってありがとうございます。感想やご指摘などお待ちしています。
この物語は不定期更新ですが、途中で放り投げることはありません。




