事件後
二人の女子中学生が揃って飛び降り自殺した事は、小さな田舎町にとっては巨大な騒ぎとなって吹き荒れた。マスコミもやってきた。
しかしそれらは全て、馬鹿騒ぎに過ぎなかった。彼らは、自分達が見たくもない嫌なものを見せられたのだ、という感じがした。とりわけ、アオイをいじめていたキザトには厄介な出来事に違いなかった。キザトはそれからずっと、「自分は何も悪くない、悪いはずがない」という呪文を自分に唱えるようになった。キザトはその事件以降、非常に長い期間、その呪文を唱え続ける事になった。
二人の両親、兄弟の反応もそれに近い所があった。両親は揃って泣き、自分の辛さを感じ、その事をマスコミに話したが、それは悲しみの海に溺れて、自分達が何も出来なかったのではないか、自分達は彼らの中にあるものに気付く事ができなかったのではないか、という問いを忘れようとする意図があった。ただ、その意図は無意識的なものだったから、彼ら自体、それに気が付かなかった。
学校の方でも、色々と大変だった。特に担任教師には非常な心労がやってきた。しかし担任教師はそれについて愚痴をこぼさず、なんとなく二人の事を想像しつつ、事務処理をした。
二人の死は街にとっては大きな波乱となった。特に二人の家族にとっては一生消えない傷となった。
もっとも、それでも、二人の内面で何が起こったのかについて想像する者はほとんど一人もいなかった。マスコミはいじめがあったかどうかを詮索し、学校はいじめなどなかったという事を必死に立証しようとしていた。結局、どちらも自分達の体面や記事の為の素材を求めていたので、二人の存在そのものについてはどちらも興味がないのだった。
二人の死はそのように片付けられていった。
一ヶ月もすると街は平穏に戻った。以降、街の人は二人の少女の死の事をできるかぎり思い出さないように務めた。こうして二人の内面で何が起こったのか、それはこの世界に隠されたままとなったのだった。
※本作品は自殺・心中を推奨するものでありません




