番外編:ピュアポップをめぐる人たち
「コンビニスイーツ2014夏」で登場したスイーツ・ピュアポップおよび、この宣伝をしているアイドルグループビビットのマネージャー・澤田さんをトムトム様の許可を得て拝借しております。
<とある日のミステリー編集部“おこもり部屋”:灯視点で>
木ノ瀬さんに呼ばれてミステリー編集部の“おこもり部屋”に行くと、部屋の雰囲気に似合わないカラフルなジュレが机の上にいくつも置かれていた。
これって、昨年発売して人気を博したピュアポップ!!今年も発売されてたのは知っていたけど売り切れが多くてなかなか買えないのだ。
「ピュアポップじゃないですか。こんなにどうしたんですか?」
「僕と蒼葉さんの結婚パーティーに出席してた澤田って覚えてる?彼は僕の高校時代の後輩で、これを宣伝してるアイドルグループのマネージャーなんだよ。
昨日うちに持ってきてくれたんだけど、2人で食べるにはちょっと多くてさ。好きな色を持っていっていいよ。なんなら全種持ってく?」
「澤田さんってビビットのマネージャーなんですか!人気アイドルの担当なんて、すごい人なんですね」
「すごい人ねえ……」
木ノ瀬さんがふっと笑うけど、微妙な感じなのは気のせいか。
「3色どれも美味しいんですよね。迷ってしまいます」
「竹倉、お前の分は3色1個ずつ俺がもらっておいてやるから選ばなくていい」
「宗佐、お前はこの場にいない男を竹倉が褒めたからって…小さい、小さいよお前」
「な、なにを言ってるんですか森川先輩」
おこもり部屋は似合うがピュアポップは思いっきり似合わない2人…森川編集長と神谷先生がジュレをはさんでしょうもないやりとりをしていた。
「とりあえず1個食べてみようぜ。木ノ瀬は何食べる」
「僕は家にありますから大丈夫ですよ」
「おー、そうか。宗佐は何にする。俺はレモンにしよう」
「森川先輩は冒険しそうに見えて定番が好きですよね。俺はアセロラをもらいます」
「俺は爽やかなレモン味が好きなんだよ。それにしても宗佐とピュアってあわねーよな~。納豆とケーキ同時に食べるみて~うはははっ」
「確かに俺とピュアは程遠いですけどね、そのたとえは意味不明なうえにピュアに全然関係ないじゃないですか。竹倉、森川先輩って失礼だよな?」
「えーっと」
2人ともピュアという言葉は同じくらい似合わないので返答につまる。それにしても、私はこの2人の大人げないやり取りには慣れてるけど、引き継いだばかりの木ノ瀬さんにはきついだろうな~とちらりと視線を向けた。
「どうしたの、竹倉」
「木ノ瀬さんは神谷先生の担当を引き継いでみてどうなのかなって思って。私は以前蒼葉先生の担当していたのでとくに違和感はないのですが」
「まあ蒼葉さんのときより騒がしいね。でも高校時代からの友人たちを見ているようで、けっこう楽しいよ。それにしてもスイーツの名前だけであれだけ言い合えるのもすごいよね」
「そうですね」
結局、森川編集長と神谷先生はピュアポップを食べ終わるまでしょうもないやりとりを続けていた。そして私のピュアポップは神谷先生の家で食べることになったのは言うまでもない。
<とある日の文芸編集部の残業時間>
残業時間に冷蔵庫を開けると“春田の分”というメモが貼られた青いピュアポップが入っていたので、ありがたくいただくことにした。少しクセがあるけど読みやすいその字は見慣れたものだ。
席に戻ってケースに書いてあるとおりに二層になっているジュレを混ぜて弾けるキャンディーをトッピングして一口。わ、口のなかでシュワシュワとなめらかが一緒になってる不思議な感じ。
「誰がいるかと思ったら春田か」
食べてる最中に顔を出したのは同期の森川くんだ。
「森川くん。これ、ごちそうさま」
ピュアポップを持ち上げると、森川くんは照れたように笑った。
「なんで俺だって分かったんだ」
「15年以上同じ会社の隣り合わせの部署で仕事してるのよ。森川くんの字は見慣れてる」
「ふん、今度はもっと違う字を書けるように努力するか。木ノ瀬の後輩がそれを宣伝してるグループのマネージャーやってて、たくさんもらったらしい」
「で、木ノ瀬くんがおすそ分けをしてくれたわけね。ところで森川くんは定番のレモン味を選んだんでしょ。違う?」
「な、なんで分かるんだよ」
「ピュアポップはアセロラ、ブルーハワイ、レモンの3種。意外と慎重な森川くんは、想像のつかない味には手を出さない。ということは、このなかでは味が想像しやすいレモンを選ぶと」
「まったく、なんで宗佐と春田はそうやって当てるんだ」
ぶつぶつと言う森川くんがなんだか可愛く見えてしまい、私はそういう自分に驚いた。まあ、本人には“かわいい”なんて言えないわ、さすがに。
これで「一擲千金の効用」は完結です。
「How About You」と時系列が一緒なので、登場人物が重複しております。
この作品を楽しんでいただいた方全てにお礼を言いたいです。
長い間お付き合いいただいてどうもありがとうございました。




