第6話 企業戦士、本社に踏み込む。
本作は「企業×能力バトル」をテーマにした物語です。
商談は戦闘。契約は勝敗。
その結果は株価として市場に反映されます。
現場、会議、市場——すべてが戦場です。
どの話からでも楽しめる構成を目指していますので、
気軽に読んでいただければ嬉しいです。
アルゴ証券、本社。
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高層ビル。
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ガラス張りの入口。
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「……ここか」
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時任明が見上げる。
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「敵の土俵ですね」
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中田が静かに言う。
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「行くぞ」
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岡田が歩き出す。
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ロビー。
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人の流れ。
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だが——
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どこか“整いすぎている”。
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「……違和感があります」
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中田が呟く。
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そのとき。
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「ようこそ」
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男が立っている。
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白いスーツ。
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整いすぎた笑顔。
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「ご案内します」
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(……誰だ)
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中田の目が細くなる。
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「社員証、確認してもいいですか?」
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男は微笑む。
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「もちろん」
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だが——
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(整っていない)
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「……あなた、誰ですか」
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沈黙。
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男が笑う。
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「さすがですね」
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空気が変わる。
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「白鷺レイです」
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その瞬間。
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モニターが乱れる。
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ログが歪む。
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「記録って、面白いですよね」
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「あるようで、ない」
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中田が端末を叩く。
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「整合が取れていません」
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「このログ……存在していない」
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レイが首を傾ける。
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「それ、本当に“ありました”?」
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その瞬間。
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全ての履歴が消える。
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「……!」
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「売りは存在しない」
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「でも株は下がる」
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レイが微笑む。
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「矛盾って、美しいでしょう?」
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その頃。
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本社。
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機島のモニターが光る。
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「……異常検知」
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「ログ追跡……不可」
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一瞬。
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画面がブラックアウトする。
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「……現在、無防備です」
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沈黙。
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数秒後、復旧。
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「……ログが、ありません」
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「存在していない攻撃です」
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現場。
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時任が目を閉じる。
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『調整』
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(見える)
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(矛盾の流れが)
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「……そこか」
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中田が顔を上げる。
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「偽装、ですね」
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レイが笑う。
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「やっと気づきましたか」
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「これは“売り”じゃない」
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「“売りに見せた何か”です」
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中田の手が走る。
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「整えます」
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崩れたログを繋ぐ。
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歪みを戻す。
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レイの表情がわずかに変わる。
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「……やりますね」
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そのとき。
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中田の画面に、別のログが映る。
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【送信履歴】
岡田 → 柏木ミツキ
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「無理するな」
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「現場は俺が見る」
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「……来るな」
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中田の手が止まる。
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(……これは)
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一瞬だけ、目を閉じる。
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だが——
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画面を閉じる。
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「……関係ありませんね」
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その直後。
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時任の声。
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「どうした」
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中田は一拍おく。
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「……いえ」
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わずかに視線を落とす。
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「少し、気が散りました」
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時任はそれ以上聞かない。
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「任せる」
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その一言。
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中田の視線が、ほんの少しだけ戻る。
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「……当然です」
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再び端末へ。
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「整合、完了」
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その瞬間。
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株の流れが戻る。
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画面。
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東都建材 −3.8% → −1.2%
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「戻してます!」
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さらに。
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時任が動く。
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「ここだ」
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最後の一手。
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−1.2% → −0.4%
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だが——
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止まる。
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「……完全には戻らない」
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レイが微笑む。
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「今回は、ここまでにしましょう」
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「あなたたち、面白い」
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次の瞬間。
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姿が消える。
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「……逃げた」
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中田が静かに言う。
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「いいえ」
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「“最初からいなかった”のかもしれません」
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沈黙。
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本社。
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機島。
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「……アクセスログ」
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「存在しません」
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「追跡不能です」
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静かな恐怖。
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時任が画面を見る。
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「助かった」
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中田が一瞬だけ止まる。
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「……それは、困ります」
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ほんのわずかに、声が柔らぐ。
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また無機質に戻る。
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画面。
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東都建材 −0.4%
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「……守ったな」
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岡田が呟く。
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だが、その目は笑っていない。
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「次は潰す」
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戦いは、変わった。
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企業戦士は——
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“見えない戦場”へ踏み込んだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本作ではバトルだけでなく、企業の成長や株価の動き、
情報戦なども含めて描いていきます。
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