企業戦士、木を折る。
はじめまして。
本作は「企業×能力バトル」というテーマで描く物語です。
商談が戦いになり、契約が勝敗として決まり、
その結果が株価として市場に反映される——そんな世界を舞台にしています。
現場、会議、市場。
すべてが戦場になる中で、企業と人はどう戦い、どう成長していくのか。
まずは第1話、東都建材と柏木林業の一件から。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
コーヒーは、少し苦かった。
時任明は紙コップを傾けながら、会議室の空気を測っていた。
決算月。
数字が落ちれば——吸収される側に回る。
「今月は材木系を取る」
社長・鷹名の一言で、空気が締まる。
そのとき。
——コンコン。
ドアがノックされる。
中田祥子が入ってきた。
「柏木林業から連絡です。取引内容に不備があると」
ざわつく。
柏木林業。老舗。格上。
中田が続ける。
「担当は柏木ミツキ部長です」
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一瞬。
岡田の手が止まる。
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「……ミツキ?」
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低い声。
いつもの軽さが消える。
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「……あいつか」
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拳がわずかに握られる。
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「俺が行く」
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椅子が鳴る。
立ち上がる岡田。
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「座れ」
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鷹名の一言。
短く、重い。
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「今回は時任だ」
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沈黙。
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岡田は時任を見る。
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「……あいつは」
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言いかけて、止める。
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「……いや、いい」
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ゆっくり座る。
だが、その目はどこか遠くを見ていた。
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(因縁か)
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時任は理解する。
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「行きます」
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エレベーター。
中田が資料を差し出す。
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「柏木ミツキ。植物操作能力者です」
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ページをめくる。
整っている。
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「ただし」
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一枚の資料。
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「植物があれば増殖・擬人化が可能です」
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写真。
喫茶店。
観葉植物。サラダ。
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「相手に有利な環境です」
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時任は小さく頷く。
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「十分だ」
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喫茶店。
木目のテーブル。
落ち着いた光。
新人二人が座っている。
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「風間ユウキです。よろしくお願いします!」
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「剛田リョウっす。任せてください!」
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「力むな」
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時任がコーヒーを置く。
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「仕事だ」
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「お待たせしました」
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ヒールの音。
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「柏木ミツキです」
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柔らかい笑顔。
だが——
“揺れている”。
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ランチが運ばれる。
サラダ。
パスタ。
コーヒー。
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和やかな会話。
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(来る)
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サラダの葉が震える。
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——バサッ
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葉が弾ける。
空中で形を変える。
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「……立って」
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ミツキの声。
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葉が蠢く。
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丸い体。
葉の耳。
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小型ドライアド。
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「なっ……なんだこれ!」
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風間が前に出る。
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「風間ユウキ、行きます!」
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ドライアドが突っ込む。
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(速い……でも!)
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「見える!」
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ギリギリでかわす。
背後を取る。
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だが——
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蔓が地面から伸びる。
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「うわっ——!」
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足を取られる。
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「ユウキ!」
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剛田が前に出る。
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「剛田リョウだ!ナメんなよ!」
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蔓を掴む。
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「うおおおお!」
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ブチッ——
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一度だけ引きちぎる。
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だが次の瞬間。
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さらに絡まる。
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「……っ、キリねぇ!」
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(分断された)
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新人二人は足止め。
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ミツキは座ったまま。
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「3対1、なんて思っていませんよね?」
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微笑む。
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(戦場を分けてる)
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時任は視線を落とす。
資料。
数字。
違和感。
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(起点は……サラダと観葉植物)
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(なら——増やされる前に崩す)
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ネクタイに触れる。
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『調整』
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時間が、わずかに伸びる。
音が遅れる。
動きが鈍る。
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時任だけが、通常の速度で動く。
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「一点、いいですか」
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言葉を差し込む。
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「御社の過去契約、数値が合っていません」
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止まる。
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ミツキの流れが乱れる。
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「それは——」
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「この履歴と帳票、整合していない」
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畳みかける。
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「風間、資料」
「はい!」
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「剛田、抑えろ」
「了解!」
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流れが逆転する。
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ドライアドの動きが鈍る。
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ミツキの能力が絡まり、崩れる。
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沈黙。
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ミツキが目を閉じる。
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「……条件を飲みます」
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契約成立。
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ドライアドが崩れ落ちる。
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そのとき。
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ミツキが、わずかに笑った。
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(……余裕?)
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この状況で。
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違和感だけが残る。
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数日後。
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柏木林業。
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吸収合併、決定。
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月末。
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画面に表示される。
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東都建材 +7.3%
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社員がざわつく。
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「一気に来た……!」
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中田が静かに言う。
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「市場が評価しています」
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時任は画面を見る。
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(戦いは終わった)
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(市場で)
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岡田が壁にもたれる。
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「……勝ったか」
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タバコを取り出す。
だが火はつけない。
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「ミツキ……」
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小さく呟く。
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その頃。
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高層ビル。
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「東都建材、ですか」
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資料が閉じられる。
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「面白い」
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都市が、わずかに歪む。
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次の戦いが、始まろうとしていた。
第1話を読んでいただきありがとうございます。
今回は主人公・時任明の初陣と、
植物を操る柏木ミツキとの対戦を描きました。
この作品では、戦闘だけでなく「株価」や「企業の成長」も
重要な要素として描いていきます。
今後は、四天王とのバトル、証券会社との市場戦、
そしてスパイによる情報戦など、戦いのスケールも広がっていく予定です。
少しでも「面白い」と感じていただけたら、
ブックマークや評価をいただけると励みになります。
引き続き、よろしくお願いします。




