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もう一度魔王様に会いたい  作者: んまい棒
第一章
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第11話「魔力」

 長話も終わり、ようやく魔法訓練を始める。ダリルは練武場の端で他の騎士と一緒に見学するようだ。

 魔法は今ではほとんどの人が使える物であり、今の世を動かしている力の中心でもある。

生まれてすぐに適正を診断され、小さい頃から魔力の使い方を親に教わる。

属性は主に、火、水、風、土の四属性。そこから派生している属性もあるそうだが、大まかに4つに区分されている。

 属性は血筋などで決まるものではないそうで、火と水の両親から土の子供が生まれる等、まだまだ謎が多いそうだ。


 魔法を使うにはまず魔力を感じ取る必要があるらしく、魔力を感じ取って、それを体外にイメージして小さなものから作り出して、ようやく魔法になるといった手順。

 ようは、ただ小さな火を出したり、ちょっとした風を起こすなんて事は魔法とは言わない。水流を自在に操ったり、土塊から人形を象ったりしてようやく魔法と呼べる。


「と、いうわけでまずは魔力を感じ取る所から始めよう。久しぶりで忘れているかもしれないが、魔力を失うという事例はないから魔力自体はあるはずだ」

「魔力を感じ取る……?」

「まずは、自分の体に意識を集中させてみて? そうすると、体の奥底から力がこみあげてくるような感覚が掴めるはずだ」


 言われた通りに体内に意識を集中してみるが、何も感じない。

そもそも、教え方が抽象的過ぎると思わないのだろうか。なんだ、体の奥底から力が込み上げてくるというのは。全く理解できない。


「全然感じられません。もう少し詳しく説明していただけますか?」

「そうだな……。魔力というのは自分の体を常に巡っている不思議な力のことでね。これは人を動かす原動力と言っても差し支えないというのが通説だ。実際、魔力を使いすぎると無力感に襲われたり、実際に動かせなくなるからね。

 そして、その魔力というのは人の魂から流れ出てきていると言われている。魂がどこにあるのかというのはよくある話題だが、なんとなく自分の魂をイメージしてみてくれ。そうすると流れがわかるはずだ」


 つまり、魔力は血液で、魂は心臓という事だろうか。説明されて理屈はわからなくはない。が、それは血流を感じて心臓を想像しろと言っているようなものではないか?


 あまりの理解の浅さに頭が痛くなってくる。今の体は人間だし、恐らく昔はそういう感覚で魔力を感じ取っていたのだろうが、今は出来そうにない。

 なぜなら今の知識の基本は大鎌、というよりも魔族の物ばかりだからだ。

魔族にとっては魔力は文字通り生命の根幹だ。人間と違い、魔力を失えば死ぬし、消える。ケインは魂から流れ出るといっていたが、魔族の考え方は心臓から流れると考えられている。魔力は魂から体内を流れる不思議な力ではなく、心臓で作り出され、血流によって全身を巡る生命力だ。


 魔族の属性は親から遺伝するのがほとんどである。魔族の子供は主に母親の属性を引き継ぐことが多いが、父親の属性を引き継ぐ事もある。そのため、子供が成長してから行われることは魔力の伝達だ。体内を巡る魔力を想像力でもって魔法にするというのは同じだが、そのためにはまず魔力を分けてもらうという行為が行われる。

 魔族が魔力を感じ取るのは誰でもできる。しかし、あまりに自然過ぎて逆に理解ができないので、外から別の魔力をぶつけてもらってその違いを体に教えることで自分の魔力を自覚するという行為だ。これをすればものの数秒で自分の魔力を感じ取れる。

 人間はなんとなく体内に魔力があってなんとなくそれを感じ取ってなんとなく放出するのだろうが、魔族の場合は魔力があるのは自然な事であって、故になんとなくでは感じ取れない。


 しかし、ここでそんなことを説明するのは無理だ。そんなことをすればどこからその発想が出てきたのかと聞かれてしまうかもしれない。なんとかなんとなく魔力を感じ取るしかないのだろう。


「……そういえば、私の魔法属性はなんでしょうか?」

「あぁ、そうだった。フィオラの属性は氷だよ。属性は遺伝しないと言われてるけど、何故かうちの家計はほぼ間違いなく氷属性なんだ。母は火だけど、父が氷だね」

「なるほど……」


 大鎌と同じ風の属性であれば良かったのかもしれないが、よりによって水の派生属性の氷か……。


「感じ取れたかな?」

「申し訳ありません……。もう少しやってみますが、一度兄さんの魔法を見せていただけませんか?」


 残念ながら全く魔力を感じ取れる気がしない。

なので、強引な方法ではあるがケインの魔法から魔力を感じ取って肌で感じてそれを吸収するという手順を踏んでみることにする。

 魔族であれば誰しもが相手の魔法から魔力を感じ取れるのだが、それが今でもできるかは半ば賭けである。


「分かった。一度見れば思い出すかもしれないしね。フィオラの得意だった魔法でも見れば何かつかめるかもしれない」


 そういってケインは胸元から杖を取り出す。その杖は鉱石で作られているのか、全体が透き通る程綺麗な青い物で、長さは20cm程だろうか。しかし、魔法を使うだけなのに杖?


「フィオラが好きだったのは綺麗な物だったね。この魔法を見せた時はまだ6歳くらいで、その時は僕の魔法ではしゃいで何度もせがまれたものだ」

「じゃぁその時は兄さまは8歳ですね。よく覚えているもので」

「勿論覚えているさ。あの時のフィオラはずっと僕の後を付いてきていてね。どこにいくにしても、何をしてもマネをしようと……」

「いいから始めてください」


 また可愛い妹語りが始まりそうだったので話の腰を折って魔法を催促する。そんなものを聞いてもどうせ何も思い出せないのだから聞く必要はない。


「んん……残念だ。それでは……≪氷結神殿(テンプルディグレース)≫!」


 現れたのは氷で造られた巨大な神殿。高さは30m程にもなるだろうか。その見た目は全て氷とは思えない程繊細なもので、飾りつけも豪華だ。入口などもあり、細部にもこだわっているので実際に存在しますと言われて納得できる。


「どうだい? 見事なものだろう? 少し小さいけど、王都のリーファ教会の神殿そっくりに作ったんだ。中にも入れるけど、見てみるかい?」

「本当にお見事ですね。是非中も見てみたいです」


 まさか魔法でこんな無駄な物を作り出すとは思ってもいなかった。

大規模な魔法と言えば相手を攻撃するものばかりだと思っていたが、ただの神殿を作るためだけにあんなに魔力を使ったのか……。


 しかし、魔法は魔法だ。先ほどのケインの魔力を感じ取り、無理やり吸収して自分にぶつけてみた。その結果は目論見通り、自分の中に異物として感じ取られ、元の自分の魔力と反発しあった。体内を流れる自分の魔力を感じ取ったが、違和感を覚える。


「中は一般人も見れる範囲のところまでしか再現はできてないよ。主に礼拝堂だね。他にも部屋はあるけど、教会の関係者以外立ち入り禁止だからほとんど作ってない。建物の大きさのわりに中はちょっと寂しいね」


 そう謙遜するケインだったが、それでも見事なものだった。中には礼拝者が座るであろう長い椅子が均等に並んでいる。そして、奥には恐らくステンドグラスと思われる窓と、女神像が設置されている。確かに他の部屋はほとんどないようだが、それでも十分過ぎると思う。

 試しに椅子に座ってみるが、全く壊れる様子もない。氷だから大分冷たいが、それだけきちんと魔力が込められているのだろう。魔力が半端だと、脆く雑なものしかできないはずだ。


「どうだい? 何か思い出せたかな?」

「あ、はい。思い出せはしないですけど、魔力は感じ取れました。何か懐かしいものに包まれた感覚です。恐らくこれが魔力なのでしょう」

「ほんとかい? それは嬉しい限りだ。魔力を感じ取るのは早くても数日かかると思ってたけど、やっぱり体が覚えているんだろうね。懐かしい感覚か。もしかしたら、記憶もいつか戻るかもしれないね!」


 すまないケイン。懐かしい感覚なんて微塵もなかった。魔力を感じたのは確かにケインのお陰だが、方法は魔族流のものを応用しただけだ。そうだとしても、魔力を感じ取れたのは事実だ。


「ん? 魔力を感じ取るのは数日かかると言いましたか? どういうことでしょうか」

「本来魔力を感じるというのは難しいことだからね。自分の体内に不思議な力を感じ取るというのは、子供のころから教えられるけど大体1,2週間くらいかかるのが普通だね。僕もフィオラも早い方だったけど、それでも6日程かかったと聞いてる。

 もしかしたら体が覚えてるかもしれないと思って数日かかると思ってたんだけど、まさかこんな数分で思い出せるなんて、やっぱり記憶にはなくても体は覚えてるものなんだね!」


 どうやら強引に魔力を感じ取る必要はなかったそうだ。最初に説明してくれなかったケインを少しだけ殴ってやろうと思ったが、都合よく解釈してくれているのでここは流してやることにする。

 あの方法は大鎌の経験と賭けで行ったものなので、失敗していたらどうしようかと思っていたのに……。


「無事に魔力を感じ取れたようだし、早速だけど魔法を使ってみよう! まずは、簡単な所から徐々にね」


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