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雑貨屋売買日誌  作者: 毛ムチ
20/25

雑貨屋売買日誌21

最初は投げやりな感じで開いた雑貨屋なのだが思いのほか売り上げが伸びた。

なんでも船の上に雑貨屋があるというのがオシャレだと人気らしい。今までよりも若干、若者世代の客が増えた。


しかし、まだ出入り口をしっかり整備していないのでつまづいて海に落ちそうになる人も多くないので修理も必要だ。


それと船であることを利用して貿易関係にも手を出そうと思ったりもしている。とは言え私は貿易には詳しくないのでいつになるかは分からないが。



ハール「ウプッ……気持ち悪い……」


メル「また船酔い?」


ハール「うん…ちょっと外にでてくる。」


そう言ってハールは言って街へ出て行った。


数分後


ハール「大変だ!」


ハールが片手に新聞を持ち帰ってきた。


メル「もう船酔いは大丈夫なの?」


ハール「それよりこっちだよ!見て!!」


メルの顔に新聞を押し付ける。

私も気になって見に行ってみた。


メル「………っとどれどれ? 『偽魔王死亡は未確定』ですって!?」


私も驚き新聞を詳しく読んだ。

『今日未明、北魔物連合共和国の兵が1週間前から続いていた魔王城の立て直しの際、偽魔王の遺体が動き出し、南西へ飛行して行ったとのこと。更に同じ証言も多数出ており、偽魔王の死亡確認が正確ではなかったのではないかとされている。

ドランフ国王は早急にドルネウス騎士団の再招集、及び北魔物連合共和国軍の協力の下偽魔王の討伐を決定。』


朝からゲルクがいないと思えば招集されていのか。


それより、あの偽魔王が生きているとは。


その時ゲルクが戻ってきた。


ゲルク「皆!すぐに準備をしてくれ!俺達はドルネウス騎士団と一緒に偽魔王の討伐へ向かう!今回ばかりはコミュ障だからと言って蹴れる状況じゃないからな!

店長さん、すみませんが店にはしばらく来れなさそうです。あなたを連れて行くわけには行かないので。」


ハロルド「気にしないでください。勇者として生きていれば当然のことですよ。無事を願います。」


ゲルク「ありがとうございます。では行ってきます。」


そう言って4人は店を出た。

私には彼等が輝いて見える。

なんだか息子と娘を持った気分だ。

いや、彼等の親だなんておこがましいか。





私は新しく買った回転椅子に座りながら考えていた。

そもそも何故、あの偽魔王は逃げ出したのだろう。両腕も視覚も失っていて更には部下さえもいないのに。

そして、何故南西へ逃げたのだろう。北西に何かあるのだろうか。確か南西は砂漠地帯が広がっていてまだ開拓も完全ではない土地だ。奴には生きて行くには難しいだろう。

それとも恐怖で混乱してがむしゃらに飛んで行ったのか。

どちらにせよ奴はこの世に存在してはいけない。

偶然とはいえ奴には魔王の力は強大すぎる。そのせいで常識的な感覚が麻痺しているのだ。

非情だが楽にしてやるのがベストだろう。



回転椅子って随分考えがまとまるな。楽しいし。


ドアに付いた鈴の音だ。誰かが店に入ってきた。


ハロルド「いらっしゃいませ。」


魔王「あぁ……新聞、読んだか?」


今回の魔王はかなりシリアスだ。


ハロルド「どうしました?」


魔王「何、奴が生きていたのが気に食わなくてな…

やはりあの時丁寧に殺しておくべきだった…」


ハロルド「はぁ……それで、何故ここへ?」


魔王「すまないが、私も奴の所へ行かねばならん。

お前にも着いてきて欲しい。」


ハロルド「そんな、私なんてなんの役にも……」


魔王「あぁ、立たない。しかし貴様には奴の最期を見届ける権利がある。奴と貴様は深く関わっている。安心しろ、貴様の事は私が命に変えても守る。」


ハロルド「……………わかりました。行きましょう……!」


魔王「ほんとか!?やった!!私は実は船に乗るのは初めてなのだ!楽しみだな!」


ハロルド「あんた、それが狙いだったんですか。珍しくまともなこと言ったと思ったら。」


魔王「さぁ!出発だ!」


ハロルド「はいはい……」


私は外にでて船の架け橋を取り出航の準備をすると舵を握った。


ハロルド「魔王様、失礼ですが錨を上げてもらえませんか?」


魔王「任せろ!くっ……ぐぅ……!!はぁ…はぁ…やはり、この身体は…使い勝手が悪い……」


ハロルド「偽魔王と戦う時は超人だったのに…?」


魔王「そうか。貴様ら知らぬのだな。」


ハロルド「何を?」


魔王「最近の研究で分かったことなのだがドルネウス騎士団や私の側近などの実力者は大抵[きっかけ]というのが有るらしいのだ。」


ハロルド「[きっかけ]ですか。」


魔王「あぁ、彼等にはそれぞれ潜在能力を一時的に引き出せる条件があるらしい。

例えば、前の私の身体ならば『変身』によって潜在能力を引き出せた。

聞いた話から推測するにゲルクの場合は『無意識』つまり眠ることによって、メルは誰かを護りたい『愛情』によって、カルビは『食欲』が限界を超えた時、ハールは誰かから強い『信頼』を寄せられた時だろう。

今の私の身体で奴に勝てたのもその[きっかけ]のおかげなのだろうがまだそれが何かは把握できておらん。いずれにせよ、この[きっかけ]による潜在能力解放には並大抵の努力ではできぬということが分かっている。」


ハロルド「私にも有るんでしょうかねぇ?」


魔王「[きっかけ]は誰にでも有るらしいのだが発現するどうかは自分次第だろう。ハロルドは何度も修羅場を潜って来たので、あるいは……」


ハロルド「ちょっと期待しちゃいますね。」


魔王「まぁ、老いぼれた貴様では発現しても大した戦力にはなりそうもないがな?」


ハロルド「さあ?どうでしょう?もしかしたら魔王様もワンパンしちゃうかも?」


魔王「かもな?」



[魔王城]


魔王の側近は書類への仕事に追われていた。


セルシウス「魔王様!我々に仕事を押し付けて!」


オルギア「つべこべ言うな!魔王様に従うのが我々の仕事だろう!」


ゲルラード「だからってこんなに溜め込んだ仕事を人に押し付けるかしら?」


オルギア「うるさい!我々は人ではないからセーフだ!」

 

魔王軍兵「魔王様早く帰ってこないかなぁ?早くしないと3幹部が過労死しちまうぜ。」


魔王「私はしばらく帰る気はないぞ!」

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