78 好きなジャズ名盤を40枚紹介する(2023年版)
2023年は大変、ジャズを聴きました。年の暮れのせいか、妙にセンチメンタルな気分になっていますが、現在までの自分の愛するジャズのまとめをしたいと思います。
特に今年よく聴いたジャズを、40枚紹介していきたいと思います。
大好き度……◎
グルーヴ度……◇
快楽度…….○
芸術度……■
リズムの個人差があるだけで、グルーヴの無いジャズなど存在しませんが、ここでは一般的な感覚にしたがい「アップテンポでノれる」あるいは「タメを効かせていてスウィンギー」なものをグルーヴ度の高い演奏としました。
また『』はアルバム名、「」は曲名になります。
【ハードでゴリゴリのジャズ】
●リー・モーガン『サイドワインダー』
リー・モーガンが切り開いた新境地のジャズロック。エキゾチックな上、ファンクすぎて、どこがロックだかもはやわからないけど、リー・モーガンのトランペットが艶やかでノリが良いし、ジョー・ヘンダーソン(ts)とバリー・ハリス(p)も絶好調なので、こんな年の暮れには是非とも聴きたい。リー・モーガンが聴きたい時はこれか『キャンディ』で悩むけれど、あっちは正真正銘のハードバップジャズでお洒落、こちらの方が活きはいい。ジャズメッセンジャーズ『モーニン』から入ったジャズファンは同時にリー・モーガンの粋なトランペットのファンになっているもの。CD版のトラック6の「トーテム・ポール」はなにやら不思議な作風。バリー・ハリスの衝撃。このあたりを面白がって聴いている。
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おすすめ曲「トーテムポール(トラック6)」
●ケニー・ドーハム『カフェ・ボヘミアのケニードーハム』
これこそ夜のジャズの定番。ケニー・ドーハム(tp)をリーダーに、JRモンテローズ(ts)、ケニー・バレル(g)、ボビー・ティモンズ(p)、サム・ジョーンズ(b)という最強の布陣。雰囲気全体が黒い上に、よく聴くとかなり繊細なアドリブを繰り出す、味のあるメンツである。聴く方も珈琲を淹れて、じっくりと聴かなくてはなるまい。『静かなるケニー』も名盤だけど、ライヴ感を楽しんで聴くならばこっち。澄み切った空気の中に静かなる躍動感がある「チュニジアの夜」は名演。ただ今ではコンプリート盤になっていて嬉しいけど、正直長すぎるので、分けて聴きたいところ。
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おすすめ曲「チュニジアの夜」
●ジュニア・クック『ジュニアズ・クッキン』
これこそ我々がもっとも愛すべきジャズ。ジュニア・クック(tp)のファンキーな泥臭さもありながら、躍動感もあり、かつ味わい深いサックスの音色に手に汗握る。相方はまさかの爽やか系トランペッター、ブルー・ミッチェル。ジュニアクックは、普段はホレス・シルヴァーのバンドにいる。
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●ティナ・ブルックス『バック・トゥー・ザ・トラックス』
本当は一番有名な『トゥルー・ブルー』を紹介したいところだけど、有名すぎてやめた。抑制の効いた甲高くハスキーなティナ・ブルックスの音色はわりと甘い。こちらも名盤。実のところ、ティナ・ブルックスのアルバムは極端に少ないのだが、サイドメンとしての活躍ということなら、フレディ・ハバードの『オープンセサミ』などにも参加している。
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●アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズ『チュニジアの夜』
凄まじい暑苦しさである。アートブレイキーの『モーニン』でジャズに入門した人は悶絶するだろう。ひたすら暑い。いや熱い。「ソー・タイヤード」はノリがちょうどいい。名盤『バードランドの夜』や『サンジェルマンのジャズメッセンジャーズ』が好きな人は、このアルバムに歓喜するだろう。ひたすら暑苦しいのである。
◎◎
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おすすめ曲「ソー・タイヤード」
●チャーリー・パーカー『ジャズ・アット・ザ・マッセイホール』
9年くらい前、初めて購入したジャズのアルバムがこれだったので、最近の収穫とは違うが、いい機会なので紹介したい。チャーリー・パーカーといえば、絶頂期であるサヴォイ盤やダイヤル盤、あるいは『ストリングス』などで楽しむのが一番という気もして、これは若干、パーカーが不調な印象もあるが、メンバーがすごい。ディジー・ガレスピー(tp)、バド・パウエル(p)、チャールズ・ミンガス(b)、マックス・ローチ(ds)である。ジャズジャイアントが集結している。「ソルトピーナッツ」や「チュニジアの夜」のディズは元気いっぱいだし、ビーバップの熱演を味わえるのでおすすめ。
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おすすめ曲「ソルト・ピーナッツ」
【いつでも気軽に楽しめるジャズ】
●ソニー・ロリンズ『Vol.2』
ソニー・ロリンズの中でもっとも気軽に楽しめるアルバムかもしれない。セロニアス・モンクのピアノとの相性もよく、アート・ブレイキーのドラミングも相変わらずアフリカの太鼓みたいである。「ミステリーオーソ」のファンキーな吹きっぷりは味があるし、モンクの「リフレクション」をロリンズが吹くのも聴いていて楽しくなる。いつまでも『サキソフォンコロッサス』は飽きないが、こちらの名盤も今でも聴く度、楽しくなってしまう。
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○○
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●ソニー・スティット『シッツ・イン・ウィズ・オスカー・ピーターソン・トリオ』
オスカー・ピーターソンは今ではあまり聴かなくなったけれど、ソニー・スティットの音色が好きだからよく聴いている。チャーリー・パーカーが自由自在に飛び交うような、いわば立体的なプレイだとすれば、ソニー・スティットはわりと平面的で、地を這う音色で、伸びやかに走り抜けてゆく馬のようだ。そのアルトサックスの音色は甘味たっぷりでひどく気持ち良い。
◎◎
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●ジョニー・グリフィン『ジョニー・グリフィン』
やたらジョニー・グリフィンのテナーサックスの巧さを堪能できるので、今年はよく聴いた。グリフィンは、ウェス・モンゴメリーの『フルハウス』とセロニアス・モンクの『ミステリーオーソ』で以前から聴いていたけれど、甘ったるく甲高い響きが嫌だった。それがこれを聴くと、どうも文句なしに素晴らしいことわかったので、今では降参して神格化しながらよく聴いている。一曲目の「アイ・クライド・フォー・ユー」、バラードでは「イエスタデイズ」。
◎◎
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○○○○
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●MJQ『ピラミッド』
気がついたらよく聴いていた。昔通っていたジャズ喫茶のマスターに「MJQなんて駄目だ」と説教されたけれど、8年経った今でも喜んで聴いている。植草甚一も好きらしい。「ジャンゴ」と「ローマン」がなかなかよろしい。『ヨーロピアンコンサート』や『ラストコンサート』のような激しいアルバムよりも、このくらいの穏やかで典雅な感じのMJQが好き。
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●セロニアス・モンク&ジェリー・マリガン『マリガン・ミーツ・モンク』
モンクを神と崇めている僕は今年、聴いていないモンクのアルバムを一気に聴こうという贅沢な暴挙に出た。その一発目がこれで、すぐに僕の心は木っ端微塵に粉砕された。なんということだろうか。57年というモンク至上最高の年に、まさかマリガンとの共演でこんなにも美しくて、誰でも楽しめる名演が披露されていたとは。マリガンのスモーキーなバリトンサックスの音色が魅力的で、勿論、モンクのピアノはいつも通り神の偉業である。
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●ジミー・スミス『ザ・キャット』
何故か今年わりと聴いていた。オルガンジャズの古典的な名盤である。ビッグバンドが騒がしい印象もあるけれど、電子オルガンのファンクなノリがよい。かつてはジャズ喫茶でコルトレーン並みに流されていたらしい。本当かいな。しかし独特な世界観があってカッコよく、オルガンのファンキーな味わいは今通っているジャズ喫茶を連想させるので好きになった。「メインタイトル・フロム・ザ・カーペット・バッガー」もカッコ良い。
◎◎
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○○○
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●エロール・ガーナー『コントラスト』
数年前、お茶の水のディスクユニオンで『ミスティ』を買おうとしたら高すぎて、代わりにこちらを購入した。こちらにも「ミスティ」が収録されていて「ユーアーマイサンシャイン」のリズム感はもはやジャズピアニストの鑑。モンクのイメージが強い「スウィート・アンド・ラブリー」が思いきりエロール・ガーナーの宝石のようなワールドに変化していて、驚きいった。今年、聴き直してみたら物凄く良いので再び、愛聴盤に。
◎◎◎
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○○○○
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●ソニー・クラーク『ソニー・クラーク・トリオ』(ブルーノート盤)
なんだかんだでいつも聴いている。これほど中毒性のあるピアニストも珍しい。リズムのなんと言えない粘り感が、気持ちいいような気持ち悪いような感じで、骨髄に染み渡り、結局、いつも酒を煽るように聴いている。同名のタイム盤は、なんだかんだいってあまり聴いておらず、悩むとついこちらにしてしまう。
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●デクスター・ゴードン『ゴー』
デクスター・ゴードンも謎の中毒性を持っている。リズムにのるとかそういうことはなく、音の波が押し寄せてくるのに呑み込まれる感じ。シンプルでミニマルなようだけど、豪快一直線なので、物足りなさはまったく感じない。とにかくジャズらしさのある一枚。このアルバムの一曲目「チーズケーキ」の印象がやたら強く、ジャズ喫茶=チーズケーキのイメージがついた。実際、四谷のいーぐるに行くと必ずチーズケーキを食べることにしている。
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○○○
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●アル・コーンとズート・シムズ『アル・アンド・ズート』
朝聴くのにふさわしい白人ジャズテナーは、と探していたところ、昔通っていたジャズ喫茶のマスターが『アル・アンド・ズート』をかけてくれたのを思い出して聴いてみた。これと合わせて、ズート・シムズのアルバム『ズート』、そしてアート・ペッパーの数枚で、午前中はあまり重たくない爽やかな朝ジャズを楽しめるようになった。
◎◎◎
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●レイ・ブラウン『サムシング・フォー・レスター』
前にジャズ関係のラジオで知り、今でも愛聴している。なによりもシダー・ウォルトンの知的なピアノが素晴らしい。圧巻は「オホス・デ・ロホ」のピアノの衝撃。
◎◎
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○○
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●ウィントン・ケリー『ピアノ』
ウィントン・ケリーが脚立の上でイカしているジャケットで、すごく好きなのだが……脚立に跨ってはいけない。ケニー・バレルのギターも素晴らしい。実はウィントン・ケリーのピアノの、ガチリと奥までで叩くようなきつい音と、スウィングしすぎな感じが苦手だったが、名盤に出現しまくるので、ジャズファンとして逃げ場を失い、今年、好きになってしまった。
◎◎
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●グラント・グリーン『グリーン・ストリート』
ジャズギターを深めようと考えていたところ、黒々としたジャズギターということで、ケニー・バレルと並んで「ジャズ批評」に紹介されていたので聴いた。今、通っているジャズ喫茶でもこの奏者のアルバムが流されていた。これは素晴らしいとしか言いようがない。
◎◎
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●ボビー・ティモンズ『イン・パーソン』
今通っているジャズ喫茶で何度もかかっているのを聴いている。実は、四ツ谷のいーぐるの後藤マスターの本で知って購入し聴いていた。今通っているジャズ喫茶で繰り返し聴いているうちに、ボビー・ティモンズの黒々とした雰囲気があらためて好きになった。考えてみれば、僕は「モーニン」のボビー・ティモンズのピアノソロからジャズが好きになったのだった。そういう意味でも、これは今や絶対的なアルバムになろうとしている。
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●ケニー・バレル『ミッドナイトブルー』
これもまた絶対的なアルバム。ジャズが誇る至上最強のジャズギターアルバム。このブラックミュージックらしい煙くさい雰囲気がたまらない。また思いきりブルースらしい曲もある。吉祥寺のジャズ喫茶メグが閉店していて、音吉メグに変わっていて、一度来店した時、このアルバムをリクエストしたことがある。それ以外のジャズ喫茶でも何度か耳にしている。僕としても必ずベスト10に入るほど好きなジャズ名盤なのだった。
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【ジャズボーカル】
●エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロング『エラ・アンド・ルイ・アゲイン』
ジャズボーカルを深めつつあるこの頃。『エラ・アンド・ルイ』はバラード中心で、スキャットしないものと決めつけていたが、『アゲイン』では「サヴォイでストンプ」でのスキャットの激しい絡みがあると気づいた。エラのスキャットは軽快でスウィンギー、ルイのスキャットはじんわりと沁みる味わいがある。気づいて以降、やけに頻繁に聴いていた。聴いているとスキャットが楽しすぎて、ひとりでニヤニヤと笑ってしまう。
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●エラ・フィッツジェラルド『エラ・リターンズ・トゥー・ベルリン』
とにかくエラ・フィッツジェラルドのスキャットが好きで、愛聴盤になっている。「A列車で行こう」のリズミカルなスキャットは超絶技巧を通り越してもはや神業。最近、僕もエラの真似をしてスキャットの練習をしているが一向にそれらしくならない。余談だけど、同じくジャズボーカルの巨人、サラ・ヴォーンのたっぷりとタメを効かせて歌う、音域のやたら広いスキャットも好き。
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●アニタ・オデイ『アット・ミスター・ケリーズ』
白人美人ボーカルという謎ジャンルがあって、美しい女性のジャケットに目を眩んでいるみたいで敬遠していたが、アニタ・オデイとヘレン・メリルを聴いて、考えをあらためることになったのだった。アニタ・オデイのリズミカルな歌声には凄まじいものがある。勿論、スキャットもする。それと古き良きアメリカの女優のようなお洒落なジャケットも好き。
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●ノラ・ジョーンズ『ノラ・ジョーンズ』
いつも通りの名盤である。ここでしか味わえないものがある。現代ジャズボーカルというのはどこから始まるのやらわからないけれど、なによりもノラ・ジョーンズの印象が強い。現代のジャズボーカルは何人も聴いているけれど、ノラ・ジョーンズほど味わい深くて説得力がある歌声はない気がする。そういうわけで気がついたら、ノラ・ジョーンズのこのアルバムばかり聴いている。「シュート・ザ・ムーン」はいつ聴いても感動。
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●ダイアナ・パントン『チアフル・リトル・イアフル〜幸せの合言葉』
これが好きといったらジャズ喫茶から追い出されそうだけど、好きで聴いている。まったりした現代ジャズボーカル。ダイアナ・パントンの限りなく優しい歌声にいつも癒されている。荘厳なジャズ名演も素晴らしいけれど、たまには息抜きも必要じゃないかな。
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【古き良きジャズ】
●ジョー・ヴェヌーティとエディ・ラング『ザ・クラシック・コロンビア・アンド・オーケー・ジョー・ヴェヌーティ・アンド・エディ・ラング・セッションズ』
この壮大なアルバムの曲をすべて聴いたのではなくて「ダイナ」と他何曲かを頻繁に聴いていた。ジャズギターを深めようとして、「ジャズ批評」を参考にしたら、ジャズギター創始者がエディ・ラングなので聴いてみた。時代が極めて古く、20年代から30年代初頭にかけての録音ということで感慨深い。
◎◎
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○○
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●ディジー・ガレスピー『デューク・エリントンの肖像』
デューク・エリントンのオリジナルアルバムを聴きたかったのに何故かこれに落ち着いた。ディズのトランペットが素晴らしく粋だったのと、エリントン風の楽団の摩訶不思議な感じに満足できたので、これ以降、デューク・エリントンのオリジナルアルバムを探し求めるのをやめてしまった。とにかく「キャラバン」が素晴らしい。
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【芸術的なジャズ】
●ソニー・ロリンズ『ヴァレッジヴァンガードの夜(完全版)』
正直、今年そんなに聴いていない気もするが、自分の一番好きなアルバムに挙げ続けているので、今回、説明した方がいいと思った。僕にとってはブラックミュージック感、ルーズさ、大胆さこそがジャズそのものだ。ソニー・ロリンズのアドリブ芸術は、圧倒的な迫力と黒々とした雰囲気をもっている。
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●セシル・テイラー『セシル・テイラーの世界』
フリージャズを深めたいと思っていたところ、数年前からセシル・テイラーは頻繁に聴いていた。植草甚一本を読んだら「セシル・テイラーの世界」が出てきたので聴いてみたらすごく良かった。アーチー・シェップも参加している。フリージャズといえば管楽器の震え叫ぶような音色というイメージがあるが、さすがにピアノは聴きやすく、フリージャズ入門にも向いているのじゃないかしらん。
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●ローランド・カーク『プリペア・ザイセルフ・トゥ・ディール・ウィズ・ア・ミラクル』
循環呼吸で二十分間吹き続けるという謎の噂を聴いてアルバムを聴いてみたのだけれど、多少息継ぎはしていた。それにしてもすごい世界観。ローランド・カークは大好きなので、またひとつ名盤に出会えてよかった。
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●ローランド・カーク『溢れ出る涙』
やたら好きなアルバムでこの数年、聴いている。ローランド・カークの作品はどれも素晴らしく『ヴォランティアード・スレイヴリー』も最高点レベルだけど、まだブラックミュージック色と超絶的な技巧のジャズという点ではまともな作品、エキセントリックな妖しい世界観の見事さと気迫の点で、この『溢れ出る涙』を一押ししている。
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●アルバート・アイラー『ミステリー・ミュージック・イズ・ザ・ヒーリング・フォース・オブ・ザ・ユニバース』
フリージャズといえば誰だろうと思ったら、まずアルバート・アイラーを聴いてみようと思った。泥臭いサックスの音色と世界観に惹かれた。素晴らしい。フリージャズもひとつ好きになるとそればかり聴いてしまう。このアルバムも繰り返し聴いているが味わいは深まるばかり。
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●ビル・エヴァンス&ジム・ホール『アンダーカレント』
物凄い好きなアルバムで、あまり語ることもない。色んなところで語りすぎて正直もう語ることがない。エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターの繊細なインタープレイである。今通っているジャズ喫茶で一回リクエストした。すべての曲が素晴らしいが「スケーティング・イン・セントラルパーク」が一番好き。
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●セロニアス・モンク『モンクス・ミュージック』
意味不明なところが素晴らしい。感動的な合奏から始まる時点ですでにおかしい。その次の瞬間、いきなり不穏な空気の中で、元気いっぱいの「ウェルユーニードント」が合奏されるも常人には理解できない雰囲気が漂っていて好き。コルトレーンがお昼寝していて、モンクが「コルトレーン!コルトレーン!」と呼んだり……。やたらとかっこいい「ルビー・マイ・ディア」も訳の分からないエネルギーに満ちている。超名盤。
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●セロニアス・モンク『ソロ・オン・ヴォーグ』
もっとも素晴らしい叙情的なモンクのピアノソロ盤。ミニマルなピアノの素朴な響きに涙がちょちょぎれる。「煙に目が染みる」の素晴らしさは、数多くのモンク信者を育むであろう。デューク・エリントン風のハンマー打鍵(ガーン!というやつ)もまだ少なめのこの時期は比較的聴きやすい。余談だが、もっとも初期のモンクの演奏を聴きたければ『ミントンハウスのチャーリークリスチャン』を試聴されたし。
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●バド・パウエル『ジャズジャイアント』
ズシリと重みがある上、猛烈な弾き方で、おまけに独特な引っかかりのあるパウエルはあまり得意ではないけれど、この一枚はどう考えてもすごい。油井正一さんの本を読むまでは『ジーニアス』や『アメージング』の方を主に聴いて「パウエルは苦手だなぁ」と思っていたのが、本の中でこちらが紹介されていたので、聴いたところどハマりした。今パウエルを聴こうと思ったら何よりもまずこの『ジャズジャイアント』を思い出す。
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●チャールズ・ミンガス『チャールズ・ミンガス・プレゼンツ・チャールズ・ミンガス』
ミンガスは名盤『道化師』から好きになった。そしてこれも大好きなアルバムだ。これを聴きながら街を歩いている時、悟るものがあった。つまりそういう啓示的な芸術ジャズだと思っている。ミンガスとエリック・ドルフィーのインタープレイ(?)が、耳から脳へと伝わると、自己の内面の奥深いところで何かが起こる。
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●エリック・ドルフィー『イン・ヨーロッパVol.1』
こいつはすごい名盤だ。以前から『チャールズミンガス・プレイズ・チャールズミンガス』の時のエリック・ドルフィーのプレイにひどく感動していた僕は、このアルバムの壮絶な「オレオ」を聴いて、エリック・ドルフィーは哲学的で文学的な芸術家だと確信した。それは潜在意識をごりごりと削るような激しい音なのだ。そしてそれは人間の言語のように、なにか啓示的なメッセージを炙り出すようにも聞こえる。
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●セロニアス・モンク『セロニアス・ヒムセルフ』
モンクの最高傑作。あまり難しいことを考えずに哀愁のこもった深みのあるブルースだと思って是非聴いてほしい。和音がどうとか、上手く聴こえないとか、そんなことを気にしている人はきっと芸術を頭で考えすぎなのだろう。モンクの指によって生み出される、ピアノの音色のひとつひとつが、心地よく、優しく、心をゆさぶって、涙を誘ってくれる。
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