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68 久しぶりにジャズについて語る1 (ジャズのイメージについて)

 下北沢のジャズ喫茶マサコに週二程度、通うようになったこともあって、僕は再びジャズ熱が高まってきているようです。とは言え、この八年間ぐらいは聴いている音楽はほぼジャズでした。

 後は、一般的なポップスと、ブラックミュージック色のあるローリングストーンズのロックぐらいのもので、クラシックだとワーグナーとバッハが圧倒的でした。ワーグナー愛は、僕の演劇好きと結びついていたに違いありません。そしてバッハは、ジャズと相似性があるので、好きなのはとてもよく理解できることです。以前、オペラ歌手の方に教えていただいたのが、現代音楽好きは大体バッハ好きということで、ジャズもそのカテゴリーで見ると、バッハとつながるそうで、確かにMJQなんか聴くと特にそうだろうなぁと思います。ラストコンサートのやつでしたっけ、始まり方にすごくバッハを感じたものでした。


 ジャズの話をしようとしている時なのに、いきなり他のジャンルの音楽の話になってしまっていますね。しかしジャズというのはそもそも、ジャンルという概念の希薄な音楽ジャンルだと思います。それは七十年代のフュージョンといったものを意味しているだけではなくて、そもそもディキシーランドジャズとスウィングジャズとモダンジャズを比べても、その印象や演奏形態の違いにただただ驚くばかりです。

 ジャズらしいアルバムは、と尋ねられてアート・ブレイキーの「バードランドの夜」を上げるのか、ビル・エヴァンスの「ワルツフォーデビイ」を上げるのかというだけでも、相当にその人のジャズのイメージの中心軸が異なっている気がします。


 ジャズのイメージは何だというと、僕の中では、わりとソニー・クラークのピアノですね。それとケニー・バレルのギター。このあたりが基本的なイメージになっている気がします。それで「ソニー・クラーク・クインテット」というアルバムなんかまさにジャズだなという印象そのもので、「マイナーミーティング」という曲なんかジャズ!ジャズ!ジャズ!という印象。

 もうひとつは白人ジャズテナーのイメージで、ズートシムズなんかがまさにジャズという印象です。

 

 誰かが聴いてもジャズだなと思えるのは、おそらくこういうイメージなのですが、実際にはジャズは無限に広がっていて、違いを楽しむことができる音楽ジャンルだと思います。


 


 だから何と言いますか、ジャズとは何かというのは、あまりこだわらなくなってきました。


 僕の中で、ジャズそのものという印象は、先ほどのソニー・クラークとケニー・バレル。だからと言ってそれで満足するわけではないので、どんどん色々なジャズを聴いてゆこうというところ。

 

 最近、ロックアーティストの方にマイルスの「パンゲア」を紹介してCDもお渡ししましたが、あれだって一般的なジャズのイメージと違う。電化マイルスといってロックファンにも大変な人気がある。それでもジャズを感じるのはどこかというと、ひとつにはアフリカ民俗のアンダーカレントな潮流と即興演奏の芸術性ではないかと思う。


 僕はジャズを通して、ブラックミュージックへの関心が深まり、ローリングストーンズにもハマったことを考えると、僕はブルースやソウルも好きなのかもしれないと思っていたのですが、この頃、アート・ペッパー、ズート・シムズ、アル・コーン、スタン・ゲッツといった白人ジャズテナーも聴くようになったので、もはやそのへんの民俗性の問題は関係ないのかもしれない。


 泥臭いジャズは今でも一番好きですけどね。ローランド・カークや、ボビー・ティモンズは大好き。アルバート・アイラーもけっこう泥臭いなと……。

 


 最近、僕がハマっているのは「セシル・テイラーの世界」というアルバムで、ピアノのフリージャズの名盤なのですが、アーチー・シェップのサックスも入ってきて、ドラミングも原始的な生命力を煽り立てるように迫ってきて、早朝、出勤時に聴くと、その破壊的なエネルギーが、脳内で炸裂して、少し重たすぎますが、単純にフリージャズは中毒性があります。


 ロックファンは、ジャズといえば、まずフリージャズの印象をお持ちになるらしい。それはそれでぶっ飛んだジャズ観で面白い……。


 あとジャズはボーカルの印象が薄い方もいるみたいで、僕なんかはジャズと言えば、ずっとルイ・アームストロングの印象があったので、ジャズとボーカルの感覚はすっと違和感なく入ってきました。ただ、楽器中心の演奏に慣れてしまうと、ジャズ=インストの印象になって、しばらく抵抗感を抱いたこともあります。

 ジャズ喫茶でボーカルがかかっているのを聴いて、サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルド、そしてヘレン・メリル、アニタ・オデイあたりから少しずつジャズボーカルも聴くようになりました。

 すると今度は、反対にノラ・ジョーンズがジャズボーカルなのかよく分からなくなって、抵抗を抱くようになったりと、忙しなく混乱しているような状況。


 まとめますと、まず僕の印象として、まさにジャズだと思えるイメージそのものなのはソニー・クラーク、ケニー・バレルあたりだということ。そしてそこを追求するのも面白いけれど、色々なジャズがあるのを楽しむのが一番というのが今の感想ですね。

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