新しい力?です。
黒い子もゴブは嫌い。
─ でも、世界の敵になるつもりはないのでしょう?
眼を細めたまま面白そうにこちらを眺める黒い女神様、心の中の呟きは筒抜けだったらしい。
『ありませんね、まだこの世界がどんなところか良く知りもしないのにそんな興味もない』
─ 良く知ったら世界の敵になる?
『それは多分無いでしょうね、俺の目的はこの世界を長く見て、少しでも長くこの世界を存続させることの手伝いをする事ですから、俺にとってこの世界は絶対的と言っていい味方です、厳しくはあるかもしれませんが敵対は無いでしょう、もし敵対するとなったら、それはその世界に住む存在の方です』
─ 強気、ではないのね、でも貴方がどう思おうとも、貴方は力を手に入れてしまった、この世界でも制御の難しい力、その割に今の姿は随分と面白い事になっているけれど
『ああそうだ、その事で聞いて見たかったんですよ、俺のあの姿はこの世界でどうなんでしょう?』
─ 木の怪物、と言うのなら他にもいる、でも今の貴方の存在は恐らく唯一の物、【混沌の種】として誕生した場合、その生物は新種になる、と言ってもまだ実例が2つしか無いけれど、今後貴方が子孫を増やすことで種として世界に定着すると思う
『子孫、ねぇ』
─ 種としては当然の事では?
『自分みたいなのが増えた世界ってのを想像するとなんとも』
─ 今後どうなるかは私達神々でもわからない、今から嘆いていても仕方ない
『そうしておきます、今は日々を生きて行かねば、【小鬼】相手でも集団だとどうしようもない』
─ あれは魔力が濃いところなら何処にでも沸いてくる、人型をしているけれど生まれてすぐの世代は完全な生物とも違う、だから見境無くこの世界の存在と番って自分達の存在を世界に固定させようとする、だからといって世代を経ても行動原理が変わらない、でも母体の特性を取り込みつつ急激に進化していく、歪過ぎる存在
凄く忌々しそうに黒い女神が呟く、彼女もゴブにはいい思いがないのだろう、聞いてるだけでも異常な存在だと判る。
─ そうそう、触手や手が多いって事で気にしてるのならそこは気にしなくても大丈夫、腕が4本や6本なんて珍しくは無いし、触手だって海洋系の種族にはたまに居る、それに私の眷属には腕だけで数え切れない位持ってる子達だって居る、貴方はその子達から受けがいい
なんだろう、凄く光栄なような、そうじゃないような、複雑な気分。
─ 貴方が知識を求めるならそのうち出逢う事もあるはず
リン、とどこかで涼やかな鈴の音色、黒の女神はそれに気がつくと小さなため息をひとつ。
─ 時間切れ、魂を元に戻す、次に逢う時まで精進するといい
『そうします』
軽く一礼、頭をあげたとき女神の後ろに二人のメイドらしき姿が見えた、二人ともこちらに頭を下げているので顔は良く見えない。
意識が再び浮遊感に包まれ、戻ったときには元のウニョウニョな身体だ。
こっちの身体に馴染んできてるのか戻ったと言う安心感があるのが妙な気分。
貰った知識を早速検証しなくては、何しろ一番欲しかった魔法関連の知識だ。
自分の魔力溜りに違和感、魔力の引出しがスムーズになっている、全身の魔力の経路と組み立てが進んでいく、刻んだと言われたのは知識だけじゃなかったらしい、いや貰った知識に俺の身体が過剰に反応しているのか。
体の各部に魔力の増幅器でもとりつけたかのような感覚、これは前の感覚で魔手を使うととんでもない事になりそうだ。
魔法を使うにはそのための具体的なイメージと、発動の魔力、それを効率よく動かす為の内部魔法回路とでも呼ぶべき物が必要になる、更に効率をあげるなら発動魔法陣の構築だ。
普通の人ではイメージは何とか出来ても発動魔力とそれを動かす力が無い、なのでそこを魔石と呼ばれる魔力を蓄えた物質と属性触媒、魔法陣で代用するのが魔術だ、ただしこっちは使用者の魔力負担は少ないが発動魔力のロスも大きく、大規模魔法を使いたければ魔石が大量に必要になる。
これでは確かに魔法技術が発展しにくいだろう。
だがこれはチャンスだ、俺にはゲームやアニメ、ラノベと言った前世での魔法のイメージはある、後はそれを再現する為の魔法陣を上手く構築さえ出来れば、いや最悪魔法陣無しでもそのための魔力の動かし方さえ理解できれば完全再現は無理でも真似事くらいは自力の魔力で出来るだろう。
次に魔手を出して見る、前の方法は効率が悪すぎると言われた、今ならわかる、確かに俺の魔力を無理やり押し込んで形にしていただけだ、それをまた力ずくで動かしていた、今そんな事をしようとすると逆に難しい気がする。
腕なら腕としてイメージを持ち、はじめに魔力経路をくみ上げる、そこに魔力を通し増幅して送り出す、前の半分も力を使わず人の手に近い形をした新しい物理魔手が2本、両肩から伸びている、相変わらず関節らしいものは無い、成功だ。
俺は前より器用になった新しい腕を手に入れる事に成功した。
この調子で簡単でいいからまず魔法を使える様になってしまいたい。
遠距離攻撃能力が欲しいのだ。
新しい魔手には掌があり、5指に似た触手が伸びて居ますが左右の区別はありません。




