その出会いは偶然ではなく。
お約束ではありますが当然話は進みません。
夜明けとともに起床だ、ただし気分だけ。
実際の時間は判らないし、感覚で日が出ているとわかるだけだ。
5本目の魔手を作ってから魔力全消費後の身体のダルさが抜けきれなくなってきた、魔力量は十分に在ると思うがそれだけでは駄目な気がしている。
ダルいからと油断しているとあの咬み付き野郎が接近してくる、強くも無い相手だが一方的に魔力を吸わせてやる気もない、奴は見つけ次第こちらの餌だ。
魔手を伸ばして光を集める、手が届く範囲を回収し終えても数日もあれば地表に近い方には白や緑、黄色の魔力がよく増える、一方地下の方は青や紫、そして黄色、全体的に赤は不足気味だ。
俺が目覚めた時にはまだ結構赤の魔力もあった気がする、見える範囲は俺が全部回収したけれど。
あれが属性の魔力だとすれば、定番では赤は火属性だろうか、青が水、緑が風?、黄はなんだろう地か雷か、白は光で紫が闇と行ったところだろうか、地表と地下での増え方から考えると近い気がする、いつかちゃんと教えてほしい物だ。
うんダルい、ダルくて眠い、眠気なんて随分久しぶりだ、なんせヌシ様の所に居た時ですら寝て無かった、魂だったしな、ここに来る時眠ったような、いやあれは眠りと言うより永眠と言った感覚だった、これほんとに寝てしまってもいいんだろうか?
思考が混濁する、気にしだしたら抗えなくなってきた、眼が覚めた時に咬み付かれてるのは…勘弁願い…た…い……な…
…Zzz
~♪
闇の中にあった意識が覚醒していく、誰かが近くでハミングしている、柔らかく優しい女性の声、こんな目覚めなら悪くない、素直にそう思える安らげる声。
─ あら、ありがとうございます。
聞こえてしまったようだ、思念での会話はこの加減が難しい。
一面の柔らかな草原の上に身体を起こして声の主の方へ向き直る、今の俺は懐かしい人の姿だ、と言う事は魂がここに誘われたのだろう。
この時点である程度の想像は付く、目の前のこの方がこの世界の神と呼ばれる存在だろう、トーガ、いやヒマティオンと呼ばれる物だろうか? 生前ギリシャ彫刻などで良く見たゆったりとした布を巻くように纏った白く長いストレートヘアーの女性、こちらへ微笑み掛ける姿の見た目は二十歳位に見える程若いがその雰囲気はとても落ち着いた物。
─ 見た目だけじゃ無く若いつもりなのですが…ですが、貴方の推測された通り、私がこの世界の神と呼ばれる存在、その一柱です。
ああ、ゴメンナサイ! 礼儀をろくに知らないモノですから。
─ 気になさらず、貴方は創造主より招かれた異界の方、我々とは違う世界に生まれ、創造主ですら及びも付かぬという偉大なる祖たる方の寵愛を受けられた方だとお聞きしています。
なんかものすごい過大評価をされてる気がしますが?
─ いいえ、その魂の強さ、内包された力の強さ、何処を見ても過大な評価では無いかと。
魂に関しては心当たりがある、好き放題に砕かれて弄られたし、力に関して自覚は無いがやっぱりアレだろうか? どっちも心当たりがありすぎだな。
楽しげに改造報告をしてくるヌシ様とあの『受け入れよ』の感覚、いや思い出すのはここでやめておこう、目の前の神様が埴輪みたいな虚無の表情になってる。
─ ず、随分と過酷な体験をなさったようですね… あ、お茶をどうぞ。
草原の中に何故か設置してあるスチールデスクにパイプ椅子、上に乗ってるのは○に茶と書かれた湯呑み、卓上ライトもこっちを向けてしっかり用意されている、うん、そろそろ突っ込んでいいかな? その取調べ受けるの俺ですか?
─ こうすれば早く打ち解けて貰えるだろうと創造主様が言っておられましたが?
飛沫様の仕業か! と言うか元の仕込みは間違いなくヌシ様だな、何を世界超えたレベルで変な入知恵してんですか! 元の知識は俺だよ! ちくしょうどうしようこの状況?
─ おぉ!(ぱちぱちぱちぱち)
なんか眼をキラキラさせて歓ばれてる、胸の前で小さくぱちぱちしてる姿がちょっと可愛い、突っ込み待ちだったんだろうか?
─ 私の周りにそんな反応してくれる方がいませんし、まさか創造主様を超えて祖たる方にまで普通に対応される方が拝見できるとは!
うん、楽しそうでなによりです。
─ とりあえずテーブルを普通にしましょう、堪能させて頂きました。
お粗末さまでした? というかこんなノリで良かったんですかね神様相手に。
─ 構いませんよ、貴方でしたら普通に友人のようにして頂いても、私としても嬉しいですし。
さらりと交換されて出てくる白い丸テーブルと椅子、何故かお茶はそのままだ。
どうぞと促されて座る、湯呑みの違和感が凄い。
─ 今日お越し頂いたのは転生された貴方へのフォローの為、というのもあるのですが、どういう方なのかを直接拝見させて頂こうと言うのがありました。
あー、その前に、俺は大事な事を忘れてた。
『レイジ、いやレージ=コダマです、転生後の姿で名が必要かは分かりませんが、元の、この人の姿の時はその名でした』
自己紹介しとかないとな、転生の時に知ってるかもしれないけど一応は、思念ではなく声に出すイメージで名乗る。
─ 私には名がありません、というより創造主より作られた原初の神と呼ばれる存在は皆名を持ちません、ですから私達はその司る事象を名の代わりとして呼ばれる事が普通です。 例えば私は信仰する者達により「神々を纏める存在」もしくは単に「纏める存在」「白き存在」等と呼ばれていますね。
そこで突然女神様が震えだし、椅子から立ち上がる、空が今にも嵐になりそうな程暗くなり、一点から重苦しい雲が噴出すように沸いてくる、周囲の空気も重く変わった? ここはこの女神様の空間では無かったんだろうか?
─ いえその通りです、ここは私の固有の場、たとえ他の神でも許可なく簡単に干渉できない所です、ましてやこんな大規模な干渉が出来るなど。
女神様の固有の場に大規模な干渉か、誰の仕業か判っちゃった気がする、該当する名が頭の中で2つ、可能性を考慮して1つに絞られる。
―― 我、飛沫也、祖たる母より寵愛受けし汝よ、我は汝の来訪を歓迎する
ヌシ様の近くに居た時に感じた物と似てはいるが異なる気配、男性っぽいイメージの声が響く。
『やっぱり飛沫様でしたか、此度は受け入れて頂いた事、感謝致します。』
何処に挨拶したらいいか不明だったので空、雲が噴出してきた辺りに目線を向け声を出し一礼、こういうチャンスにちゃんと転生のお礼は言っておきたい、次は何時になるかわからないし。
ところで女神様が跪いたまま泣きそうな顔でこっちを見て硬直しちゃってるんですが?
俺はこの状況で如何すればいいんだろうか?
ヌシ様 ───
飛沫様 ──
神 様 ─
主人公は転生直後で良く覚えていませんが実際には転生後しっかり寝てました。




