幕間6
「はぁ。キスはやりすぎじゃないかしら」
アプロテは、ラフエルが帰ってから先ほどの自分の行動を思い返し、一人いつもの空間で悶絶するほど恥ずかしくなっていた。
「いえ、悪いのはラフエルよ。聞こえてるんなら聞こえてるって言うべきだし、言わないなら盗み聞きだわ。そうよ」
ばんばんと、どこからともなく取り出したクッションを両手で叩く。
「ああぁー!でも、大好きは言い過ぎだわ!いや、大好きだけど、駆け引きも何もあったものじゃないわ!」
また何か思い出したのか、クッションに顔を埋め、足をじたばたさせている。
「まぁ、いいわ。今にはじまった事じゃないし」
気持ちを切り替えたのか、むくっと起き上がり、またどこから取り出したのか、1メートルはありそうな水晶玉のような物を取り出す。
アプロテがその水晶をいそいそといじると、その水晶の中に、輪郭がぼやけた人物が浮かび上がる。
「ちょ、もう」
バンバンと水晶玉を叩くアプロテ。
「……あ、映ったわ」
水晶に映ったのは、ベランダに立つラフエルだった。
のぞき込む角度を変え、少し拡大させる。
「……泣いてる。やりすぎたかしら……!まさかキスが嫌だったとか!」
いや、でもそんなとアプロテがおろおろしていると、水晶にもう一人の人物が写ったと思った瞬間、ラフエルに後ろから抱きつく。
アプロテはあわてて角度を調整し、抱きついた人物を見定める。
「なんだ、アプトとか言う、お兄さまの使徒だった子じゃない。いや、良くはないけど」
むむむとのぞき込んでいると、そのまま何事もなくベッドに戻っていく2人。
「いいなぁ……」
アプトに嫉妬しないと言えば嘘になるのだが、それ以上に一緒にいられるのが羨ましかった。
水晶玉の横に座り、顔を膝に埋め、気分が落ち込んでいく。
「駄目。嫌な子になってしまうわ」
また水晶玉を眺めていると、窓の外から日が差し始め、ラフエルが起きるのが見える。
(ほら、涎がついてる。寝癖も直さないと)
手が届かないのをもどかしく思いながら眺めていると、何かあわただしいやりとりがあり、ラフエルの付き人が集団戦に参加できないとか言っている。
「赤竜……珍しいわね、って、ちょっと!これ以上ヒロインはいらないわよ!って、男なの!?」
クッションをばすばす叩いたり、立ち上がって驚いたり、つっこんだり忙しい。
そしてはじまる集団戦。1戦目は波乱もなく軽くいなして勝利している。
「ま、これぐらいわね」
そう言いながら、自分の思い人の戦う姿に、少しニマニマしてしまうアプロテ。
そして2戦目に。
「むぅ、2戦目はあのキザな騎士なのね。見た目に反して結構実力はありそうだけど……あれ?ちょと、何これ、見えないんだけど」
水晶玉の中に映った映像が、黒い幕で覆われたように見えなくなる。
角度が悪いのかと位置を変えてみたり、さすってみたりするがいっこうにみえない。
「ちょっと!良い所なんだから!」
さらにバンバンと水晶玉を叩きまくるが、水晶玉は黒い絵を映すだけでいっこうに直る気配がない。
「むう、いつもはこれで直るのに……あら?」
しばらく悩んでいると、水晶に映る暗闇の中から、細い祈りの力が届いてくる。
「これは、お父様に捧げる祈りね。でも、ラフエルを通じてこっちに届いている?」
試しに水晶玉に手を伸ばしてみると、黒い幕のような物に触った途端、パチンと弾かれるような感触がある。
しかも、かなりしっかりとした拒絶、排除の感触。黒い幕だと思っていたのは、どうも結界のようだ。
「な、生意気よ!」
アプロテは、今度は両手にしっかりと力を込め、水晶玉を通して黒い結界を バンバンと叩きはじめる。
何度かしっかり力を込めて叩いていると、結界が一部壊れ、亀裂が入るのが見える。
すると、その亀裂から光が延び、自分の体が少し引っ張られる感触が伝わる。
「これは……誰かが神降ろしをしているの?……ラフエルじゃないけど、この力を使えば!」
アプロテはその光に自分の力を同調し、体を乗せる。
(行ける!ラフエルの所へ!)
唐突だった。もっと力を貯めてから顕現する予定だった。
でも、もう待てなかった。感情が溢れてどうしようもなかった。
いきなり行ったらどんな顔をするだろう、喜んでくれるかしら、会ったら何を話そう、最初になんて言おう。
いろんな思いを乗せて、もっとたくさん言いたいことはあったはずなのだが、最初に出た言葉は
「来ちゃった」
だった。
仕事で1~2週更新出来ないかもしれません......




