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2章1話 テンプレのように

 事件から1週間たった。

 あれからロムロスの手がかりは途絶え、牢に繋がれていた手下は、毒殺されていた。

 事件はもう俺の手から離れ、ミハイルの指揮の元で全容の解明が進められている。あまり新しい情報はないようだが……

 一つだけ分かったのは、当然のようにロムロスは偽名だった。商会の取引先などを当たったが、ロイラスというもう一つの偽名が出てきたぐらいで、それすらもいくつかある偽名の一つにすぎないと予想された。



「では、授業を始めます」

「「はい」」


 エトナの授業に、アプトが加わった。

 家から毎日通い、午後から2時間ほど。

 初級のさらに前、基礎の段階から始めるので、俺は少し離れた席で魔道書を読んでいた。この前買った奴だ。

 ではなぜ一緒の部屋にいるのか。

 一緒に勉強をすることを楽しみにしていたアプトが、寂しがったのだ。


「ほら、よそ見しないで」


 う〜ん、俺がこっちで本を読んでいるのが気になるのか、アプトがちらちらこっちを見てくる。やめて、そんな可愛い顔で見ないで。


「もう、そんなにラフエ……ラフ君が気になるなら、別の部屋にしちゃいますよ?」

「ご、ごめんなさい!い、嫌です!」


 ははは、こやつめ。

 アプトには王子というのは内緒にしていた。

 今更「王子だったんだ」って言うのも偉そうで嫌だったのと、変に畏まられても寂しい気がしたのだ。

 中身は30歳越えてしまったが、今生で同い年の初めての友達、になりたいと思っていた。

 まぁ、さすがにしゃべることがいちいち子供っぽいと言うか年相応なので、合わせるのに少し苦労するが、全く気にせずしゃべれる相手がいるというのは、とても気が楽になった。


「アプト、最初からコップに出すイメージじゃなくて、水差しで少しずつコップに流す感じでやってみたら?」

「うん!」

 

 コップからあふれまくって、机の上がびしょびしょになり、泣きそうな顔のアプトにアドバイスしてみる。魔法は強いイメージの具現化だと思う。


 光読みの儀式で、アプトの属性は水だと確認していた。

 その光はアプトの髪の毛をそのまま光にしたような、透き通った湖にも似た色をした涼しげな青で、しっかりとした明るさを持ち、ビーチボールぐらいの大きさをしていた。

 エトナは「自信無くしそう」と驚いていたが、魔法が無くなってもエトナは十分立派な人ですと言ったら、顔を真っ赤にして頭をなでられた。


「で、出来た!」


 少しだけ足りないが、今までとは格段に綺麗に水が入っている。


「ありがとう!ラフ!」


 花が開いたような満面の笑みをアプトが向けてくる。あぁ、もう、可愛いなぁ、この世界同姓でも普通にやっちゃってるようだし、アプトでも問題ないなぁ。一度あまりに可愛いから、アプトのお母さんに男なのか確認したほどだ。女の子だったら良かったのに……


 いかんいかん!何を考えてるんだおれは!急いで頭を振って集中し、風を起こし、エトナのスカートをめくって煩悩を払う。今日は黒かぁ。


「「こら!」」


 何故か二人から怒られた。


「今は授業中です!」


 はい、授業じゃないときにします。

 それにしても、エトナのパンツが見れたというのに、アプトも怒るなんて……はっ、アプトも実はそっちの人!?やばい!迫られたら、抵抗出来る自信がない!あぁ!受けは嫌!


 一人もだえる俺を、アプトとエトナが変な目で見てくる。

 俺はコホンと咳払いをして読書に戻る。


 その後も、苦労しているときにはアドバイスや実演をしてやり、3日目にはきっちりこぼさずに、コップに水を入れることが出来るようになっていた。

 エトナの話では、得意属性でも3日は早いらしく、俺が異常らしい。


 そんな授業がしばらく続いたある日、午前中ハインラットに剣術の稽古を付けて貰っていると、こちらを熱心に見ている視線に気が付いた。アプトだ。


「あれ、今日は早いね」

「ラ、ラフが、ご飯一緒に食べようって、言ったんじゃないか」


 稽古が終わって、びしょびしょに濡れたシャツを脱いで声をかける。

 なぜか顔を真っ赤にして目線をそらしている。


「どうしたの?アプト?」


 近寄ったら、顔まで背けられた。

 えぇ!?


「あ、ごめん、汗臭かった?すぐお風呂入ってくるね。出てきたらお昼にしよ」


 アプトには勉強部屋で待ってもらい、さっと湯浴みして着替えて出てくる。


「ごめん、忘れてたわけじゃないんだよ?」

「う、うん、ラフは剣術の稽古もしてるんだね」

「まぁね、魔法の勉強も大事だけど、やっぱり体も鍛えないと、いざって時は大事だと思うんだ」

「すごいなぁ、ラフは。僕も体鍛えた方がいいのかなぁ」

「なら、一緒にやる?ハインに頼んでみようか?」

「ええ!?でも、僕お金ないし」

「お金なんていらないよ。将来ポラルトの魔法使いになってくれるなら、だけどね」


 ここでにこっと笑ってみる。

 将来のための布石だ。今のまま進めば、アプトは必ず中級以上の魔法使いになる。子供の頃から恩を売っておけば、必ずポラルトに忠実な魔法使いに……とまでは考えていないが、やっぱり友達は大事にしないとね。


「ぼ、僕なんかがなれるかな……」

「大丈夫、俺が保証する!」


 俺がこう宣言すると、また光り輝くような笑顔で「うん!」と返事をする。抱きしめたくなる衝動を抑える。


「え、ラフ、何、ちょっと怖い」

「え!?あ、ごめん!」


 あわてて、無意識にアプトの髪の毛をわしゃわしゃしていた手を引っ込める。びっくりした。自分が怖い。



 こうして、アプトも翌日から稽古に参加することになった。

 基本まだ体が出来ていないと言うことで、体力作りとちょっとした剣の型だけなのだが、ハインラット曰く、普段から体になじませる事で、いざという時に体が自然に動くようになる物らしい。

 とにかく今は練習練習。


「アプト!お風呂入ろうよ!」

「え、あ、うん」


 城の奥にある大浴場ではなく、使用人達が使う小さいお風呂にいく。

 稽古の場所から近いし、いつも使ってる場所は王族専用だったからだ。


「え!一緒なの!?」

「そりゃそうだよ、お湯がもったいないし」


 俺が先に服を脱いでお湯をかぶっても、脱衣所でもじもじしている。


「どしたの?」

「な、なんでもない」


 ぬるめにしてある湯船に入ると、思わず声が出る。あぁ、日が高い内に入るお風呂って、なんでこんなに気持ちいいんだろう。

 浸かっていると、体にタオルを巻いたアプトがおずおずと言った感じでお風呂に入ってくる。


「あ、先に体を流さないと」


 そのまま湯船に浸かろうとしたアプトを制止して、水を頭からかけてやる。


「ひゃあぁぁ!」


 アプトが驚いた拍子に、体に巻いていたタオルが床に落ちる。

 透き通った白い肌に、あるはずのモノがない。


「あれ、アプト、男の子って……」

「ご、ごめんなさい!」


 そのまま勢いよく隠す様に湯船に入るアプト。


「え?あれ?」


 お風呂から出た後アプトに確認した所、女だとバレたらこの話が無くなるんじゃないかと、隠していたらしい。

 まぁ、男尊女卑が激しい世界だしね。

 でも、女だからと言って才能のある人間を失うようなことをするのは、馬鹿のすることだ。

 念のためアプトが女の子だとゼレスに伝えたところ「そうか、可愛いとは思ったが。だからといって軽い気持ちで手を出さないように」と、別の心配をされた。

 重い気持ちならイインデスネ。


 一度女だという事が分かると、普通にお風呂はアプトと一緒になった。

 どうも最初びくびくしていたのは、女だとバレるのが怖かっただけで、一緒に入るのは何とも思わないらしい。そりゃ子供だもんな。

 逆に俺が恥ずかしがっていると「どうしたの?」と寄ってくるぐらいだ。


 やめて〜、やめて〜、寝た子を起こさないで〜!

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