↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を追って人間堕ちした神様〜真面目令嬢は、天然わんこに執着されています〜  作者: 焼きそばこっこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/11

神聖力の発現

エンペリオン城に来て、一週間が経った。

陽光が心地よく差し込む庭園のテラス席で、私は鏡に映る自分の顔を感心して見つめていた。


「……肌のツヤが違うわ」


目の下にあった一生取れないかと思われたクマは綺麗に消え去り、肌はまるで発光するように瑞々しい。体にもだるさは一切ないし、むしろ体を動かしたい気分だ。

その理由は明白で、三食、料理人が手塩にかけた至高の料理を食べ、ふかふかのベッドで八時間熟睡する快適生活である。


「健康って……本当に素晴らしいわね」


しみじみと呟きながら、目の前のティーカップに手を伸ばそうとした、その時だった。


「あっ」


手元が狂って、降ろそうとしたティーカップがテーブルの端から落ちそうになる。

とっさに手を伸ばす。間に合わない――と思った瞬間、胸の奥からじわりと温かい何かがが湧き上がってきて、体全体に広がったような気がした。


  ふわっ


「……え?」


私の手のひらから、温かな金色の光が溢れ出した。 すると、落下しかけていたティーカップが宙でぴたりと静止し、まるで目に見えない優しく温かい手に包まれるようにして、静かにテーブルの上へと戻ったのだ。


それだけではない。 光の余波が広がり、庭園に咲いていたつぼみたちが、一斉に美しい大輪の花を咲かせていく。


「……ん?」


自分の手と、満開になった花々を交互に見つめ、私は盛大にフリーズした。


「だ、大丈夫ですか、ロムティア様?!…一体先程は何が起こったのでしょうか…」


遠くで見守っていた側近のモースが、慌てて駆け寄る。彼も今、この場で一体何が起こったのかを理解できていないようだった。 周囲にいた侍女たちも、口ぐちにざわめき始める。


「な、なんですか今の光は……!?」

「私にはロムティア様がコップを止めているように見えました…」

「侍女長!昨日まで蕾も無かったアイリスの花が咲いています…!」


大パニックに陥る周囲を前に、私はダラダラと冷や汗を流した。 周囲の混乱は最もだが、彼らの困惑以上に当の私自身が、この状況を全く理解できていなかったからだ。


カツーン、カツーン…


そこに足跡を響かせながら、ヒュリオスがやってきた。 相変わらずの顔面国宝(無表情)だが、満開の花々と私の手元を一瞥すると、満足そうに鼻を鳴らした。


「騒がしいぞ、モース。……当然だ。私のティアだから」

「ひ、ヒュリオス……これは一体……」


動揺する私に、ヒュリオスは優しく歩み寄り、私の両手を包み込むように握った。


「この世界では一般人(人間)に魔法は使えない。だが、君と私は堕ちたとはいえ神だ」

「そ、それは前世のお話でしょう? 今の私は、ただの人間で……」


「いや。君の体には元々、神のマルガレーテとしての膨大な神聖力が眠っていた。本来であればティアがが話せるようになる頃には、この力が使えるようになっていたはずだった……ただ、カンテェーレでの十年間があまりにも酷すぎたらしい」


ヒュリオスはどこか苦々しい顔をして、私の手をぎゅっと握りしめた。


「極度の睡眠不足、栄養失調、そしてストレス……。あまりに劣悪な環境のせいで、君の体は神聖力を使う余力すら奪われていた。……それが、ここで美味しい食事をとり、十分に体を休めたことで、ようやく君の本来の力が目を覚まし始めたのだろう」


私は彼の解説を聞いて、じわじわと頭を抱えたくなった。

そんな…そんなことって…


「最高じゃないですか!!」

「…元気だな。そんなに嬉しいのか」

「みたところ、私は物を浮かすことができる能力が発現したようですから、この能力を使えば書類整理が格段に効率よくできます!」


パッと目を輝かせた私に対し、ヒュリオスは不機嫌そうに片眉を下げた。


「ダメだ」

「なぜですか!? 確かに休養を目的にこの国に来ましたが、これまでの手厚いもてなしに少しでも恩返ししたいんです…!」

「君の今の仕事は『休むこと』だ。過労は絶対に許さない」


間髪いれずに拒否され、そのままひょいっと抱き寄せられる。 相変わらずの過保護っぷりだが、その腕の温もりに、胸の奥がくすぐって、反抗心が小さくなる。


「……でも、やっぱり…」

「そんなに’恩返し‘したいなら、いつでも私の妻の席に座ってくれて良いんだぞ?」


耳元で囁かれた甘い声に、顔が赤く、熱くなるのを私は必死になって隠し、絞り出した小さな声で呟いた。


「降参です…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。