外圧
「そこの青い上着着たお姫様」
紫羽が、コンビニ前で煙草を吸っている二条に声をかけた。二条は周囲を見渡すが、青系統の上着を着ているのは自分だけだと理解し、思わず自分を指差す。
「?」
「そうそう、君だよ」煙草に火を点けながら紫羽は言った。「お姫様が最近玖礼と一緒に居るのを見かけるから、ちょっと気になって」
「えっ」
二条は慌てて傷を隠すようにサングラスをかける。
「あ、いいよいいよ、俺はそういうの気にしないから。玖礼も顎に傷あるでしょ」
紫羽は顎を指し、受け流すように笑う。
二条は言われはしたものの、サングラスを外さなかった。
「紫羽さん、お兄さんの傷知ってるんですね」
「俺と玖礼、赤ちゃんの頃からの付き合いでさ。アイツ不良だったから、学校じゃ暴力王子って呼ばれてたんだよね」
「暴力王子…」
二条は笑いを堪えるが、もう完全には堪えきれていない。
「龍臣の奴、目付きは悪いけど顔面良すぎるだろ?その上、薔薇背負ってそうじゃん!だから暴力王子。お姫様、アイツと知り合ってどんくらい?」
「多分、一ヶ月弱かな…」顎に手を当て、脳内で大まかに数える。
「じゃあ、アイツに手出されてない?」
俺、と言いかけて二条は飲み込む。「私、お兄さんの事怒らせるの上手いのか、ついこないだ頬に拳を当てられて…」
乾いた笑いを浮かべつつも、胸の奥が少しドキッとする。
「殴ろうとしたんだ?へぇ…嫌だった?」
「私が怒らせてるんで、嫌とかはないですね。こないだもめちゃくちゃ怒られちゃいましたし」
「それでも一緒に居るんだ?」
紫羽は楽しむように、探るように、二条の返答を見守る。
「お兄さんと居ると楽しいので」
「手出したって事は、よっぽど心を開いてるんだな。アイツ、俺と綾斗以外にそんなことするの見ないからさ」
そこから暫く会話が続き、二人は連絡先を交換した。
「お姫様、男だからって気にせず、素のままで来て良いからね。うちの店、意外と男も来るから。龍臣には暴力王子の話したのは内緒ね、宗親クン」
紫羽は軽快に話す人だった。そしてバイクに跨り、姿はあっという間に小さくなっていった。
「嵐のような人だった…(中性的に女声にしただけじゃ、やっぱバレるもんなのか)」




