6.EX.ホウセの呼び声
インヘリト特別市、魔術省の官舎で。
こんこん、と自室の扉を叩く音と共に、わざと間延びさせた声が彼を呼ぶ。
「ディーゼームーくーん」
「何だ……」
ディゼムが玄関の扉を開けると、そこには声の主、ホウセがいた。
彼女は半眼で笑いながら外を指さして、言う。
「見た? アケウがファリーハとお出かけしちゃったよ?」
「下世話だなお前も……いいじゃねぇか当人同士好き合ってんならよ」
呆れつつそう告げると、彼女は眉を吊り上げてディゼムを罵った。
「バカ、分かんないの!?」
「だから何がだ!?」
「か~っ、ちょっとプルイナ、何とか言ってよこの子に!」
ホウセがそう言うと、部屋の隅に佇む黒い鎧が、赤い眼窩を明滅させながら音声を発する。
『自分の口から言うべきでしょう』
「ひ、人の心の分からん奴めぇ……」
プルイナに対して怨嗟の声を漏らす、ホウセ。
「…………」
ディゼムは彼女の意図を察しつつも、自分からそれを口にするのは憚られて、別のことを口にした。
「……あー、その……多分お前が言わせようとしてることとは違うと思うんだけどな?」
「なに」
ホウセは半眼で彼を睨む。
ディゼムは気後れしつつも、言葉を考えつつ口にした。
「……お前がメイエに溶かされた時、俺もまぁ、驚いたっつうか……
割とすぐ元に戻ったから、そういう言葉をかける余地が無かったつうか……
その間中、心配はしてた。何も言わなくて、悪かった」
「それもあるけど! それだけじゃなくてさぁ!」
「……その」
言い募るホウセに、彼は観念して、提案した。
「俺らもどっか、出かけるか……?」
「……!」
ホウセが目を丸くしつつ、赤面する。分かりやすいほどに。
彼女はそれを誤魔化すようにして、もじもじと身体をひねった。
「し、しょうがないなぁ~……どこ行きたい?」
「……とりあえず、うるさくねぇとこかな……」
『いってらっしゃい』
連れだって玄関を出る二人を、黒い鎧が見送ってそう言った。
お疲れさまです。これにて第六章終了です。
天空に浮かぶ巨大都市、ウィッシェルに向かったディゼムたち。
そこでは魔術で生成された意思が統治する、高度な文明が運行されていた。
しかし、その都市には重大な秘密があり――次章『魔王、誕生』。
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