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いつかの歴史の幕開けを  作者: 星月夢夜
隠者の催し編
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21/22

第21話 獲物

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

最近ほぼ毎日寝落ちをしています。

睡眠の質云々というよりかは、

電気が点けたままの方がとても気になります。


では、本編スタートです。

 敵の目的地へ向かうために、敵を自分たちのいるところへ誘き出す作戦を立てたソルト、ローズ、リリー、ホワイトの4人。先の戦闘でホワイトが敵から奪い取った笛を使って敵を呼び、現れた彼らを奇襲し、その中の1人を捕まえて脅して、彼らの目的地まで連れて行ってもらう。作戦はそういったものだった。


作戦を実行しようと、地上に身を隠した4人。ホワイトとローズは各々の武器を、リリーとソルトは戦闘時に敵が落とした麻酔銃を持っている。全員の準備が整ったことを確認したホワイトが笛を思い切り鳴らす。甲高い笛の音が静かな森の中に響いて消える。


(……)


それぞれ少し離れた位置に待機している4人は、何も言わずに敵の襲来を待った。普通ならそんなことはしないと思うが、同じような状況になっているであろうヒビキたちが敵の目的地にいる可能性を考え、思いついた作戦であった。


(……?)


そんな時、身を潜めていたホワイトが森の奥の方から何かの気配を感じた。笛を鳴らしてから少ししての気配。何者かは想像に難くなかった。


(……来たね)


案の定、ホワイトたちの方へ木の上を伝って敵が近付いてきていた。いくら彼らが森に慣れていたとしても、木の葉を揺らす音を隠すことはできない。ホワイトの耳は、その音を余すことなく拾っている。敵は静かに地面に着地すると、同胞たちが倒れている現場をみて騒然としていた。その間にも、ホワイトが情報を拾う。


(来た敵は5人。その他は気配なし……いけるね)


そう判断したホワイトが、ローズへ合図を出す。それを確認したローズ、そしてホワイトがそれぞれの武器を構えて一気に敵の方へと飛び出した。突然姿を見せたローズとホワイトに敵は驚く暇もなく、まず1人ずつが瞬間で潰された。残った3人が目の前の状況を理解したその直後、後ろで待機していたリリーとソルトが麻酔銃でさらに1人ずつ眠らせる。あっという間に、残るは1人のみ。


「……っ!」


ものの数秒で仲間を黙らせたホワイトたちに、残った1人はただ恐怖の表情を浮かべて立つしかなかった。


「さぁ敵さん。突然で悪いけど、ボクたちのお願いを聞いてくれる?」


そう言いながら、手の中でくるくるとナイフを回すホワイト。口は相変わらずの笑みを浮かべていたが、目が笑っていなかった。彼の後ろの方から身を潜めていたリリーとソルトも姿を現す。


「だ、誰が……っ!」


敵は完全に虚勢を張っており、この場から撤退しようとじりじりと後ろへ後退している。だがそれを、ローズが許さなかった。


「あら、どちらへ行くんです?」


「ひっ……!?」


突如背後から聞こえたローズの声に、敵が小さく悲鳴をあげる。大きなアックスを背負って笑みを浮かべているその姿は、死神と言っても過言ではないかもしれなかった。


「駄目ですわ。ホワイトさんがお頼みしていらっしゃるでしょう? ちゃんと聞いてください?」


甘くだが支配的に囁くローズの言葉と麻酔銃を構えたリリーとソルト、そして未だ笑みを浮かべているホワイトの姿を一度に受け、頭が混乱する。その混乱を全て払拭するように、敵が項垂れた。


「……な、なんだ」


ホワイトがにっこりと笑顔になる。


「ありがとう! それじゃあ……」


そして不意に笑顔を消すと、敵の首にナイフを当てた。触れるか触れないかギリギリの距離を保って。


「君たちがボクたちを連れていきたい目的地まで、案内してくれる?」


「……!」


敵からすれば、ホワイトたちの要求は意味の分からないものであっただろう。この森の外へ案内しろではなく、自らさらにこの森の奥へと進むと言っているのだから、おかしくなったと思わざるを得ない。


「……っ」


だが敵はそんなことは言えなかった。なぜと聞き返すこともできなかった。首に添えられるようにしてあるナイフの銀色の光に目が眩む。


「……わ、分かった……」


またホワイトが笑顔を見せる。


「良かった! 断られたらどうしようかと思ったよ」


要求を断ればどうなるかは想像に難くない。


「じゃあほら、早速歩いて。連れて行って?」


ホワイトは敵からナイフを離したが、その距離は近く保たれている。その後ろに続くアックスを持つローズ、麻酔銃を構えるリリーとローズも常に警戒していた。この敵が逃げ出そうとしたり、何か不審な動きを見せたらすぐに対処できるように。そして敵が歩き出す。


だが、その時。森の中に再び笛の音が鳴り響いた。それは今まで1番大きく、まるで何かの開始を知らせるように。



 過去慣らされたものとは違う笛の音に、流石のホワイトも驚きを見せた。そして同時に、嫌な予感が頭の中を一瞬で駆け巡った。ホワイトが敵の胸ぐらを掴む。


「この笛は何? 答えて」


珍しくその瞳には余裕がなくなっていた。対して敵の方は先程までとは違い、恐怖で汗を滲ませながらも引き攣った笑みを見せている。


「……狩りだ。狩りの始まりの合図だ」


「狩り? 何の?」


間髪入れずにローズが聞く。


「……狩りは狩りだ」


ローズからの問いに対するその返答は支離滅裂で、どうやら答える気がないようだった。ローズが問いただそうとしたその瞬間、遠くの方で微かに、だが確実に一発の銃声が聞こえた。


「い、今のって……!」


ソルトが怯えた声を出すその傍らで、ホワイトの顔から一切の色が消えた。笛の音が聞こえた時とは比べ物にならないほどの嫌な予感が、ホワイトを満たしていく。


(……ヒビキ様)


参加者を眠らせて拉致、狩り、そして銃声。これだけでもこの先、いや現段階で何が行われようとしているのか安易に想像できた。できてしまった。自分たちとは違い、もしヒビキたちの方が敵に眠らされていたら。自分たちよりももっと森の奥の方へすでに連れて行かれていたら。そして今の銃声。最悪の可能性が浮かび、ホワイトはそれを即座に潰す。


「急いで」


それは普段からは想像もつかないほどどす黒い声だった。ローズ、リリー、ソルトの3人がほぼ同時にホワイトを見る。


「ホ、ホワイトさん……?」


リリーが思わず名前を呼ぶが、今のホワイトの目には3人の姿は映っていない。敵も笑みを消した。


「急げっつってんだろ」


その時、再び遠くで銃声が聞こえた。時間がない。


「……チッ」


短く舌打ちをした後、苛立ちをぶつけるかのように目の前の敵の頭をナイフの柄で殴った。敵の体がぐらっと傾き、そのまま地面に倒れる。死んではいないがしばらく起き上がらないだろう。


「……銃声がした方へ行くよ。もうコイツはいらない」


そう言って歩き出そうとするホワイト。


「ま、待ってくださいホワイトさん!」


ソルトが呼び止めると足を止めた。


「ど、どうして倒しちゃったんですか……!?」


「銃声が聞こえたでしょ。それで行く方向は分かった。だからいらない」


「でも……!」


焦るソルトを他所目に、ローズは凛とホワイトを見ていた。


「……ホワイトさん」


「……何?」


振り返らず答える。


「今の銃声で、何かお分かりになったのではありませんの?」


「ね、姉様……?」


こちらもいつもとは違う様子であり、それに妹であるリリーがすぐに気付いた。ローズはさらに続ける。


「だからそんなにも焦ってらっしゃる。貴方らしくありませんわ。ひょっとして、ヒビキ様が関わっておりますか?」


「……!」


ホワイトの目が少し見開かられた。


「……分からないかい?」


3人の方へ振り返った。


「ボクたち参加者をわざわざ麻酔銃を使って眠らせ、地図にはない森の奥の方まで連れていく。そして狩りが始まり、銃声が聞こえた。これだけで十分だよ」


淡々とそう言うホワイトを見て、3人の中に緊張が走った。


「テセラの目的はこの森に人を集め、そして狩りをすること。そしてその狩りの標的は……」


そこに表情はない。


「……イベントの参加者だ」



 ホワイトたちが真実に気付く少し前。森の中の見知らぬ古屋にいるカーネは、再び鳴らされた甲高い笛の音を聞いた。カーネと共にいる他の参加者の女性たちの表情が、一斉に恐怖の色を帯びる。その直後、カーネのすぐ隣にある小屋の扉が、大きな音とともに開けられたのだった。


「!!」


驚いたカーネは瞬時に後ろへと下がり、大腿に仕込んでいる折りたたみ式の槍を用意。その後、開けられた扉から1人の男が姿を見せる。その手には、銃。


「出ろ」


ただ一言だけ告げる男。だがそれだけで、その威圧感は伝わってきた。出なければどうなるか想像に難くない。


「……っ」


参加者の女性が1人、怯えながらゆっくりと小屋の外へ出る。それに続いて、他の女性も外へと出た。本当は女性たちを外へ出したくなかったカーネだったが、ここは敵の言うことに従う他なかったのだろう。1番最後に、カーネも小屋の外へ出た。


「……」


そうして小屋の外に出されたカーネと、参加者の女性5人。そのまま訳もわからず小屋の前にいると、銃を持つ男は何も言うことなく突然木の上に素早く上り、そして姿を消した。それにより、鬱蒼とした森の中に6人で取り残されてしまう。


「どうしたらいいの……?」


「なんなのよ……!」


「もう嫌……」


女性たちが口々に今の自分たちの状況を嘆く。無理もなかった。自然を愛でるイベントに参加していたと思ったら、いきなり麻酔針で眠らされ森の奥深くに連れてこられ、先程まで銃を持った男と共にいたのだ。


「皆さん落ち着いて。感情的になれば、敵の思うつぼです」


その中でただ1人精神を保っていたカーネだが、冷静ではない5人を1人で相手するというのは途方もないことであった。現に、カーネ自身も戸惑いの色を隠せない。


「皆さん、落ち着いて……!」


カーネがそう言ったその刹那、銃声と共にある参加者の女性の頭に、銃弾が撃ち込まれた。女性は力なくその場に倒れる。一瞬の出来事だった。


「……!!」


地面に赤黒い液体が広がっていく。まるで人形から漏れ出るオイルのようで、現実のこととは思えない。だがそれは、他の参加者の女性たちを恐怖のどん底に落とすには十分であった。皆一様に甲高い叫びを上げたのち、脇目も振らずバラバラに駆け出した。目の前の出来事から、少しでも自分を離すように。


「っ! ま、待って!!」


当然カーネの静止が聞こえるはずもなく、あっという間にその姿が見えなくなっていく。女性たちを守らなくてはならない、そう思ったはずなのに。どこまでも現実は甘くできていない。


「……っ!!」


変われたと思っていた。変わったと思っていた。だがそれは、あの屋敷の中だけだったのだろう。自分よりも何倍も凄い上司がいるあの屋敷の中だけで。こうして1人になれば、何もできない自分に巻き戻る。いや、それが現実だ。


「……それでも、行かなきゃ」


カーネは自分の中に渦巻く良くない感情を振り解く。現実逃避だと言われればおそらくそれまでだが、今はそれでもよかった。今すべきことは、自分の現実を見ることではない。


「待って!!」


気持ちを切り替えて、カーネがある参加者の女性を追う。いくつかの現実を捨てて、たった1つの現実を拾う。それが、今の自分にできることだと信じて。

再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。

今回は核心に迫ったソルトチームのお話です。


ついにホワイトが辿り着いたテセラの目的。

果たして8人は無事に合流することができるのか。

ここから折り返しとなります。予定では。


それでは、本日もお世話をしてくれている家族と

インスピレーション提供の友達に感謝しつつ

後書きとさせていただきます。

星月夢夜

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