第19話 迎撃
皆さんこんばんは、星月夢夜です。
クライト家に便乗して森に行きたいです。
リュックの中身まで考えたのですが
彼らのように機会には恵まれませんでした。
では、本編スタートです。
自分たちを攻撃し、その後森の奥へとまるで誘うように逃げていった敵を追ってソルト、ローズ、リリー、ホワイトの4人は森林の奥地へと進む。最初にホワイトが木の上で受けた攻撃以降、敵はホワイトたちに何もしてくることはなくただ奥へ奥へと逃げ続けている。そんな彼らの動向に、ホワイトは違和感を抱いた。
「ボクたち、誘われているね、多分」
呟くようにそう言ったホワイト。それを聞いたローズは、隣を行くホワイトを見る。
「森の奥の方にです?」
「うん。目的は分からないけどね」
ホワイトはその雰囲気がいつもとは全く異なっており、彼が真面目に物事を行う時はこうなるのかとローズは内心ながらに思っていた。それは主であるヒビキが危険な目に合っている可能性があるからなのか、はたまた別の要因なのかは分からないが、ホワイトがその気になっているのならばそれにのらない手はない。そう考えていた。
「でしたら、そのお誘いにのるのはいかがですか?」
ローズの急な提案に3人は思わず彼女を見る。
「ほ、本気ですか姉様」
「えぇもちろん」
リリーの心持ちとは裏腹にローズは笑みを浮かべていた。まるで、これから起こることを楽しみにしているかのように。
「今、私たちの前を行く方々のお誘いにのり、彼らの目的地まで連れていってもらうのです。もし、彼らが途中で攻撃をしてくるようなことがあれば、その時はそれを迎撃する。ただそれだけのことです」
「……」
ホワイトはローズの話を無表情で聞いていた。この時彼が何を考えていたかは彼自身にしか分からないが、元々好戦的なローズと意外に好戦的なホワイト。彼らの性格を考えれば、ホワイトがどのような答えを導き出すかは想像に難くない。
「いいね、それ」
案の定、少ししてホワイトは楽しそうな笑みを浮かべたのだった。
「……」
「……」
彼らの後ろを行くソルトとリリーは無言で目を見合わせる。ホワイトとローズがそういう人たちということを知っている2人は彼らの考えを聞いて、リリーは笑顔を見せ、ソルトは肩を落とすのであった。
「……!」
そんな時、前方の敵が不意に動きを止める。
「止まって」
それと同時にホワイトも動きを止め、また残りの3人も止まる。敵の姿は直接は視認できず、その気配で存在を感じ取ることしかできないがそれで十分と言わんばかりにホワイトは木々から目を離さずにいた。その瞬間、先程とは違う笛の音が森の中に鳴り響く。
「こ、今度はなんですか!?」
再び鳴る笛の音に驚きを隠せないソルト。そんな彼の隣で、ホワイトはその意識を変わらず木々に集中させていた。
(……増えたね)
笛が鳴ってから少しして、木々の上の敵の気配が増えたことを感知するホワイト。どうやら先の笛の音は増援の合図だったようだ。
「みんな、ここで迎え撃つよ」
ローズが言った可能性がここに来て現実のものとなり、ホワイトがそれを3人に告げる。
「え?」
ソルトはそんなホワイトの言葉に戸惑うものの、対して双子は笑みを浮かべていた。
「あら。ひょっとして、今の笛は戦闘開始の合図かしら?」
「もしそうなら、姉様の予想が当たったことになりますね!」
ホワイトもまた笑みを浮かべる。
「そんなとこだね」
そう言いながら自身の武器であるナイフを構えるホワイト。その直後、今まで木の上にいた敵が次々と下りてきてその姿を表す。ソルト、ローズ、リリーの3人もそれに合わせるように各々の武器を構えた。目の前の敵は先の黒マントの者たちとは違い見た目は普通の人間だが、その目は明らかに殺気立っており今にも襲いかかってきそうだ。
「さぁ、やろうか」
そのホワイトの言葉により、クライト家の使用人たちの戦闘が始まった。
イベントの主催者テセラの使用人たちの迎撃を開始したホワイトたち。敵の数はホワイトたちが想像していたよりも多く、まるで強風に吹かれて落ちてくる木の葉のように木の上から次から次へと落ちてくる。戦闘力の差は歴然だったはずが、そうも言ってられない状況に変わりつつあった。
(……?)
その最中、空中の所々に何か光るものが飛んでいることに気付くホワイト。最初は敵の武器が日光に反射しているのかと考えたが、その光るものは武器が確実にない人間の頭上にも確認できる。そして、それらが上から下に向かって飛んでいると理解したホワイトは地面を見る。
(まさか)
空中のものと同じように地面で光るそれらは、今も木の上から発射されているであろう麻酔針だった。
「木の上から針!!」
ホワイトは咄嗟に大声を上げ、残りの3人に伝える。この状況下において、4人のうち誰か1人でも意識を失えば形勢は一瞬で傾いてしまう。それは誰もが直感的に理解していた。
「ホワイトさん!」
ローズがホワイトの名前を呼ぶ。危機の打破は最も優先すべき事柄であり、これは上のことを頼んだというローズからホワイトへの信頼の証拠であった。
「了解」
ローズから受けとったホワイトは再び木の上へと上がる。あの甲高い笛の音が鳴り響いた直後と同じように、麻酔銃を持ち木の下を狙う敵の姿を確認する。それを排除しようとホワイトが動き始めたその時、銃を持つ者に行かせないと言わんばかりに武器を持った敵たちが姿を表す。木の上という安定しない場所にも関わらず、彼らの動きには無駄がなく地上と何ら変わらない俊敏さを見せていた。
「……面白い」
彼らの動きに興味を抱いたホワイトは、不気味な笑みを浮かべて目の前の敵と対峙する。
一方地上で戦うソルト、ローズ、リリーの3人はホワイトから麻酔針の情報を聞いた後、3人での総力戦という戦闘スタイルから少し変わり、ローズが木の上から降ってくる麻酔針を防ぎつつ3人があまり離れないようにしながら応戦するという状況になっていた。
「あら、良いものを持ってるのね」
ローズは不意に、自身が倒した敵が持っていた武器に目を向ける。もちろん自身のアックスをすでに武器として使用しているのだが自分が防戦向きではないと思ったのだろうか。
「……」
地面に落ちている武器を拾うと、その武器で自身に向かってきた敵をあまりにも素早い動きで切り伏せた。
「……っふふ」
その勢いに乗るように、ローズは自身に迫り来る敵を次々に倒していく。ローズというその名に相応しく、彼女の周りには赤々しく飛沫が舞う。
「姉様、かっこいい……!!」
そんな姉の様子を見ていたリリーは思わず感嘆の息を漏らす。ここでそのような反応を示すのは、彼女がローズの妹だということを何よりも表しているのだろう。そして、彼らの戦いは早くも大詰めを迎えていた。
木の上にいるホワイトもまた、俊敏な動きの敵に全く遅れをとることなく薙ぎ倒している。
「そんなもんで終わりなの?」
彼らの動きに一瞬興味を示したホワイトだったが、蓋を開けてみれば大したことはなかったようで興味を半ば失っている。失っていないもう半分は、彼らがまだ本気を見せていないという可能性に賭けているのである。だがそんなホワイトの期待を裏切るように、木の上にいた敵は全員ホワイトの刃の前に敗れ散る。
「……あーあ」
こうして、彼らの予想とは裏腹にあっという間にテセラの使用人との戦闘は終わってしまったのだった。熱中して損した、と思ったホワイトは早々に木の下へと下りる。同じように少し物足りなさを感じていたローズは、持っていた敵から拝借した武器を興味を失ったように手放した。
「うーん、拍子抜けかなー」
そう言って残念そうな顔を浮かべるホワイト。そしてそれに頷くローズ。
「同じ意見ですわ。ですがおそらく……」
「うん。途中で撤退させたね」
ホワイトの言葉にソルトが驚く。
「ど、どういうことですか……?」
「そのままの意味だよ。多分、ボクらの戦力を侮っていたんだろうね。でも、ボクらが彼らの想像を遥かに超えてきたから、戦力の補充を途中でやめたんだ。合理的な判断だね」
ホワイトはそのまま考え込むような姿勢をとる。
「何か、他に気になる点がありますの?」
ローズからの問いに軽く頷くホワイト。
「疑問点がいくつか。1つ目、彼らがあまりにも森に慣れすぎているところ。2つ目、ボクたちのことをわざわざ麻酔銃で眠らそうとしているところ。3つ目、ボクたちのことをここまで泳がせた理由」
ここでホワイトが一呼吸おく。
「1つ目は今考えても答えは出ないから一旦置いといて。残りの2つ目と3つ目は、多分繋がってると思うんだ」
「というと?」
リリーが大きく首を傾げる。
「彼らには、ボクたちを無傷で連れていきたい場所があるってことさ」
「じゃあ、敵が動きを止めた、ここがその場所ってことですか?」
リリーが今度は反対側に大きく首を傾げる。
「うーんどうだろうね。もしかしたら、意識がある状態で連れていくのが好ましくないのかもしれないし、その場所が特定の、例えば家の中とかそういったところなのか、はたまた地帯なのかも分かんないしね」
不意にホワイトが笑みを見せる。
「まぁ何にせよ、彼らにはどこか目的地がある。そこに向かってみないかい?」
急なホワイトの提案に再び驚くソルト。
「え!? ほ、本気ですか……!?」
ソルトの反応を見て、ホワイトは声を出して笑った。
「もちろんボクは本気だよ」
そして、真剣な表情を浮かべる。
「考えてみて。ボクらがこうなってるってことは、ヒビキ様たちも同じような状況に陥っている可能性が高いってことさ。だったら、敵が目指している目的地で会えることも十分考えられるでしょ?」
「……!」
ソルトはホワイトの言葉にハッとする。今まで自分たちのことにしか目を向けられていなかったが、このイベントにはもう1チーム参加している。誰よりも大切な人がいるチームが。
「ですが、今の私たちにはその術がありませんわ。持っている地図はこんな奥地まで描写されていませんし、もちろん土地勘もありませんしね」
「それなら大丈夫」
そこで、ホワイトは1つの笛を取り出す。それを見たソルトが笛を見ながら首を傾げた。
「それは……?」
「さっき敵からぶんどった笛さ。どうやら、さっきのように笛を鳴らすのは木の上にいるヤツの仕事みたいでね」
なぜか得意げな笑みを浮かべてそう言うホワイト。
「ボクの作戦はこうだ。まず、この笛を鳴らして彼らをここへ呼ぶ。その間にボクたちは隠れて彼らが来るのを待つ。そして、彼らがここへやって来たら4人で奇襲をかけ、敵の1人を捕まえて脅し、彼らの目的地まで連れて行ってもらう。どうだい?」
ホワイトの作戦を聞いたローズとリリーは、何を思ったか笑みを見せる。
「良いと思いますわ」
「せっかくなら、木の上であの人たちが使っていた麻酔銃を使うのはどうですか!」
「まぁ、良い提案ね」
意気揚々としている双子の傍らで、ただ1人不安を隠せないソルト。
「そ、そんなに上手くいくものでしょうか……?」
そんなソルトの肩をホワイトが叩く。
「いいかいソルトくん、1つ良いことを教えてあげよう。こういった状況下では、思いついた作戦は上手くいくかどうかではなく、上手くいかせるかどうかだよ」
「は、はい……」
ニコニコと笑顔を浮かべるホワイトに気圧され今にも泣きそうな表情のソルトだったが、やるしかないということも理解しているのであった。
「よし。それじゃあ早速やろうか」
ホワイトの号令を受けて動き出すローズ、リリー、ソルトの3人。木の上や地面に落ちているまだ使える麻酔銃を回収しソルト、リリーの2人が銃を持つこととなった。おそらく敵がやってくるであろう木の上に隠れるのは避け、4人は地上の近い場所に身を隠す。
(……よし)
残り3人の準備が整ったことを確認したホワイトは、敵が持っていた笛を思い切り鳴らした。その音は、再び静寂に包まれた森の中を突き抜けていく。
再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。
ヒビキチームとは違う道筋を行くソルトチーム。
個人的にはヒビキチームの結果が好きですが
少々過激なこちらもありですね。
ヒビキのことを大切にしているクライト家の使用人たち。
それが垣間見えるのがとても好きです。
垣間見えるくらいでは足りないかもしれませんが。
それでは、本日もお世話をしてくれている家族と
インスピレーション提供の友達に感謝しつつ
後書きとさせていただきます。
星月夢夜




