試験開始
挨拶を終えその日は旅館で英気を養い試験に備えた。
翌日ダンジョンのある場所へ案内される。
ダンジョンは旅館の離れにあり、入口には警備がついている。
「それでは試験について説明しますね。このダンジョンの第一層をまず攻略して下さい」
「えっ、それだけでいいの?」
「はい、無事に第一層を抜けられたら合格です。難しいようなら途中で棄権できますのでご安心下さい」
試験内容は鬼ダンジョンの第一層を攻略すること。
一見簡単そうに思えるが、限られた冒険者しか入れないダンジョンなので何かあるに違いないだろう。
棄権する場合は渡された札を使えば外に出られるという。
「準備ができましたら中に入って下さい」
コタローたちは早速ダンジョンの中へと進む。
中は山道になっていて上に進むようだ。
周囲を警戒しつつ先に進む。
いくつか気配を感じるがまだこちらの様子を伺っているようだ。
リンがうずうずしているが何があるかわからないので、こちらも様子見することにした。
コタローたちと周囲の気配は一定の距離を保ちながら前へ進んでいく。
しばらくすると開けた場所に出る。
そこに入った瞬間地面が光り出しそこから一匹の大きな鬼が現れる。
ゴブリンチャンピオンと同じ位の大きさだが比べるのがおこがましい程、段違いの覇気が漂わせていた。
「コタローいってくるね」
リンが嬉しそうに大鬼に向かっていく。
「リンったら仕方ないですね。コタローさん、私は周りを片付けますね」
先程からいた気配はコタローたちの周囲を囲っていた。
気配の正体は小さな鬼たちだった。
肌の色は赤茶色で小柄ながらも筋肉質、金棒や刀といった武器を手にしていた。
まだ第一層なので小鬼たちはゴブリン的な立ち位置なのだろうが、普通のダンジョンなら中盤以降に出るレベルだろう。
リンと大鬼が戦闘を始める。
どちらも金棒を手にし打ち合う。
いつもと違うのは少しリンが押されていることだ。
まだ小手調べとはいえ今までリンが力負けすることはなかった。
鬼人になって以降初めて自分より強いかもしれないモンスターにテンションが上がるリン。
一方メイは小鬼たちの相手をしていた。
メイはいつも通りゴーレムたちに指示を出す。
成長したことにより操れるゴーレムの数は6体に増え、またその姿も変えていた。
半分は以前と同じ人型、もう半分は狼のような獣型になっていてそれぞれがペアとなり連携していた。
ゴーレムと小鬼たちの戦いはゴーレムの方が優勢だった。
小鬼たちも弱くはないが、半液体のゴーレムに苦戦していた。
「むむ、中々やるでござるな。フータ殿たちが自慢するだけのことはありますな」
リンたちの戦いを木の上から観察する人影が一つ。
彼女はコタローたちの試験官、今回の試験を担当していた。
彼女の仕事はコタローたちが鬼ダンジョンに値するだけの実力があるか見極めること。
決して気付かれることなく任務をしなければならないのだが、
「あの、貴方も倒さないとダメなんですかね?」
彼女の背後からコタローが声をかけた。




