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魔王がポンコツだから私がやる。これ、私の黒歴史。見るな。【10万PV大感謝!】  作者: さくらんぼん
第07章 : カエデとツバキ──全世界が“理解”を諦めた日。
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#091 : 聖女(仮)と勇者(Lv1)☆布教の予感


──再会の感動から5分後。街は怪光線騒ぎに包まれていた。


カエデ「ツバキ!そのビーム止めて!?周りのものが全部消し炭になってる!」

カエデが慌てながらツバキを揺らす。


ツバキ「こ!こここここの身に宿されし破戒の光輪……いまだ鎮まらぬ……ッ!!」


ツバキの両目からは相変わらず謎のビームが放射され続けており、街の看板やら樽やらが次々と蒸発していく。


ローザ「あの……ツバキ様……」

そこへビームを軽々と避けながらローザが近づいてきた。(何者?)


カエデ「え?誰?」

カエデが驚いて振り返る。


ローザ「はじめまして!私はローザと申します!ツバキ様の付き人として布教の旅を……」


ツバキ「ローザ……居るのか…我が眼は、未だ光に囚われている……」


ローザ「私もツバキ様のご尊顔が眩しくて見えません。」


──


ツバキが深呼吸をし、手で目を覆うとようやく光線が止まった。


カエデ「ローザさんはツバキと一緒に旅してるの?」

カエデが興味深そうに尋ねる。


ローザ「はい!ツバキ様は神の使いですから!」


ツバキ「くっ……また誤解が増殖している……!」


おっソロ「おーい!何だい?この騒ぎは!」

そこへ駆けつけてきたのは、おっソロ。


カエデ「おっソロさん!」


おっソロ「カエデ、そちらの方々は……?……って、なんで街が半分焼けてるんだ?」


カエデ「えーっと……感動のあまり?」

カエデがチラリとツバキを見た。


ツバキ「ごめんなさい!」(土下座)


◇◇◇


──その日の昼下がり。


カエデ「……ねえツバキ?…2人はこの世界で何をしてるの?」


ローザが目をキラキラさせて答える。

ローザ「ツバキ様のカメリア教の布教の旅です!」


ツバキ「……世界が……勝手にそうした……」

ツバキが下を向いた。


カエデがパンと手を叩く。

カエデ「じゃあ!私も一緒に布教の旅に参加する!」


ツバキ「え?」

ツバキが振り返る。


カエデが真剣な表情になる。

カエデ「だって、ツバキと離ればなれになるのは嫌だもん。それに……」

「この街で宅急便の仕事しようと思ってたけど、そろそろシツコイって怒られそうだし……」

「何よりね!?実は、私……この世界では"勇者"なんだ」


ツバキ&ローザ「「……は?」」(目をパチクリ)


カエデ「へへーん!私、勇者なんだよ!?魔王倒すアレ!」


ツバキ「世界の均衡が揺らぎ始めた……よりにもよって、貴様が勇者とはな……」

ツバキは信じてない様子だ。


ローザ「ゆ、勇者様……!?ほんとに!?」

ローザが思わず叫ぶ。



カエデ「うん、ちょっと見せるね──ステータスオープン!」


カエデのステータス画面が表示される。


\\ ♪ピ〜ロリロリ~ン……ポヨォォォ〜ン //


ツバキ&ローザ「「なにそのまぬけな効果音!?」」


【カエデ / 勇者 / レベル1】

【スキル:ウィルソンを投げつける Lv836】

【称号:パンくわえて転ぶ者 / 草さん / 草の者 / 草属性】


ツバキ「……イチ。」(食い入るようにステータスを見るツバキ)

ローザ「……イチ。」(マジマジとステータスを見るローザ)


カエデ「だって!怖くてモンスターを倒せなし!でも私、"勇者"だから!」


ツバキ「なんか見たこともない数字のスキルもあるが……勇者……称号にどれだけの信用があるのか……?」


カエデ「わたし!……勇者だから、困ってる人を助けたいの!この世界で一人だったとき、何度も死にそうになったんだ。魔物に襲われて、道に迷って、雨に打たれて……」


ツバキ「……。」


カエデ「でも、おっソロさんが助けてくれた。あの人がいなかったら、私はきっと……」

「だから、私も誰かを助けたい。この世界で困ってる人がいるなら、その人たちのところに行きたい」

カエデの声が震える。


ツバキ「……そういうことなら、断る理由はない。レベル1でも、勇者は勇者だ」

ツバキが静かに頷く。


カエデ「本当?」

カエデが目を輝かせた。


ツバキ「ああ。むしろ、二人で旅するより心強い……いやでも……カエデか……」

ツバキが下を向いた。


ローザ「素晴らしいです!聖女様と勇者様が一緒に旅をなさるなんて!」

ローザが感激の表情を浮かべる。


ツバキ「だから聖女じゃ……まあ、いいか」


カエデ「……そういえばさ、私たちがこの世界に来たってことは……もしかしたらサクラも……どこかにいるかもしれないよね?」

カエデがふと空を見上げて、ポツリと呟いた。


ツバキ「……!サクラ……時の狭間に消えた名。だが未だ、我が胸の刻に残る、絶対の記憶……」

ツバキの表情がわずかに揺れる。


カエデ「なんとなく、呼ばれてる気がするんだ。サクラにまた会えるような気がするの」


ローザ「サクラ様とは?」

ローザが首をかしげる。



ツバキ「私たちの友達。元の世界でのね。大切な仲間よ」

ツバキが答える。


カエデ「もしサクラもこの世界にいたら……」

カエデが目を輝かせる。


カエデ&ツバキ「「大魔王になってるね。」」

ツバキとカエデが同時に言った。


ローザ「サクラ様とはいったい…」

ローザが首を傾げた。


ツバキ「……ふむ、ならば我らが征く先に、きっと"その声"もあるだろう。探すのは簡単だ。うるさいとこにサクラは居る。」

ツバキが小さく微笑む。


カエデ「えっと……『生きてるだけでえらいって?ちげぇよ。“生きてるなら暴れろ”が正しいだろうがああああ!!!』」

カエデがサクラのマネをした。


ツバキ「……うわ、声まで思い出せる……あははははは!」



(つづく)



◇◇◇


──今週のサクラ語録──

『生きてるだけでえらいって?ちげぇよ。“生きてるなら暴れろ”が正しいだろうがああああ!!!』


■解説 :

サクラ式・生存の美学。

生きてるなら、黙って拳を振れ。優しさ?癒し?

そんなもん、ぶん殴ってから考えろ。

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