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魔王がポンコツだから私がやる。 ──恥ずか死した私の黒歴史。  作者: さくらんぼん
第07章 : カエデとツバキ──全世界が“理解”を諦めた日。
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#080 : バレたら死ぬ☆聖女やってます

挿絵(By みてみん)


前回までのあらすじ

→ 勘違いが積み重なって聖女になった第03章のツバキ編の続き


◇◇◇


──我が名はツバキ。闇を纏いし、灼瞳の神子。


されど世の者どもは、我を「聖女」と呼ぶ。

聖女でないとバレたら死ぬので今日も必死に生きている。


◇◇◇


私は夢の中で、カイ様と一緒に闇の洞窟を冒険していた。


「黄昏の紫炎に舞う影よ、時の狭間に響く我が言霊は……」


枕元では、侍女ローザが神妙な顔で筆を走らせていた。


「聖女様!また素晴らしき神託を賜りました!」


朝食の盆を持つローザ。私の第一信者で、最大の誤解者。


「な、何だと?昨夜の……啓示が、汝の耳に届いたのか?」


「はい!就寝中も枕元で聴いておりますので!」


「寝ぇッ!?!?」


思わず素が出た。慌てて咳払いをする。


「──ふん、我が…あの…眠りの中で見た夢を…いや、眠りの底から出る啓示を……汝が聞くとは」


「はい!毎晩、就寝の時間から聖女様の御枕元で待機するよう、大司教様より命じられております!」


「な…!いつからそんな…えっと…儀式?が行われるように…いや、執り行われるようになったというのだ?」


「ホーリービーム♡の奇跡の翌日からです!」


脳内で頭を抱えたくなる。


「それで……私…いや我が…その…眠りの言葉とは?」


「『黄昏の紫炎に舞う影よ、時の狭間に響く我が言霊は──』」


「ぐは!?」


「『現世の責務とは逃れられず…うーん……あと5分……』まで」


「最後おかしいって気付こう?」


それ、カイ様の名セリフ。


慌てて中二病モードに戻す。バレるわけにはいかないのだ。


「ふん……その葛藤こそ、闇と現世を繋ぐ試練……知性なき者には理解できまい」


「素晴らしい御思索でございます!」


ローザの反応に、顔を片手で隠す。よくカイ様がやるやつ。


「……闇の深淵よ、我を包め……いや、抱け、だな」


「本日の儀式は大聖堂での説教から始まります」


「んん!?説教!?私が!?何話せば!?」


「聖女様のお言葉なら、何でも!」


「責任重すぎるよ…いや、“責務”…重すぎるのだが……」


◇◇◇


大聖堂、ぎっしり満員。


文字通り立錐の余地がない。

私の逃げ道も、ない。


黒装束。

裾を踏んでよろけたのを、誰も見てないと信じたい。


(マジでどうすんの?私が?説教を?ガチで?)


不安で膝が震える。頭ん中も震えてる。


(落ち着け……カイ様ならこう言う……)


「…………」


壇上から会場を見下ろす……観客はなぜか静寂。


全員、待っている。


(いける……いや、いく……いくしかない──!)


私は、大きく息を吸い、喉を震わせた。



(つづく)

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