#057 : 善政か死か☆サクラ流領主教育
前回までのあらすじ
→ みんなであひる口した(可愛い!)
◇◇◇
《天の声:まずはエスト視点に移ります。いつものサクラじゃありませんが、安心してください。たぶんすぐ出てきます。》
── その日の深夜。
突然!外から叫び声が聞こえた。
村人J「と、盗賊だー!」
村人K「きゃー!」
カンカンカンカンカン!
叫び声に少し遅れて警鐘が鳴った。
エスト『盗賊!?』
私は悲鳴に驚き飛び起きると、辰夫と辰美に指示を出したの。
エスト『辰夫!辰美!盗賊が村を襲ってるみたいなの!村人達を助けて来て!』
辰夫「承知」
辰美「はい!」
エスト『……あれ?お姉ちゃん?』
辰夫「……サクラ殿……?……居ないですね?」
辰美「……えっと……?……この騒ぎ…サクラさんの仕業だったりして……。」
エスト『ま、まままままさかー!いくらお姉ちゃんでも…』
私は否定しつつも、心のどこかであり得ると慌てたの。
すると、同時に外から不気味な声が聞こえたんだよ!
\\ あーっはっはっは!!逃げろッ!逃げろーー! //
\\ そうだぁー逃げまどえーー! //
\\ この私から逃げられるものならなぁーー!!! //
\\\\ ぎゃー! // //
同時に人の悲鳴が聞こえたんだ……。
(沈黙)*警鐘がカンカンカン
エスト『お姉ちゃんだ……あの人……何やってんの……』
辰夫「サクラ殿…ま、まさか!?」
辰美「サクラさんだ!やっぱりあの人ぶっ飛んでる!ちょっとカッコいい…」
辰美の様子がおかしい!
◇◇◇
《天の声 : ここからサクラ視点に戻ります。残念ながら騒がしくなります。》
3人が慌てて外に飛び出してきた。
……すると!盗賊団を縛り付けている鬼の姿が目に入った。
何を隠そう、その鬼とは美しい私の事だった。
サクラ「あら?3人とも遅かったわね。盗賊団なら全員捕まえたわよ。」
私は振り返りながら言った。
エスト『良かったー!てっきりお姉ちゃんが盗賊団を率いて村を襲ってるのかと思ったよー!」
エスト様が腰を抜かして座り込んだ。
辰辰「「うんうん!」」
その後ろで辰夫と辰美が高速で首を縦に振っていた。
サクラ「そんなわけないでしょ!小娘ッ!トカゲ共!後で覚えてろよッ!むきー!!!!!」
…
サクラ「ふん。まぁいいわ。」
私は気を取り直して、説明をした。
サクラ「どうやら盗賊団の狙いは、そこで縛られて誘拐されかけてた領主様だったみたいですね。」
辰美「サクラさん…いっそ私も…縛って…いえなんでもないです!」
辰美が壊れていくが無視した。
私は情けない姿の領主に目を移すと、領主が言った。
領主「な、縄をほどいてくれ……」
すると、盗賊団が言った。
盗賊団A「クソッ!俺たちは……そこの領主のせいで苦しんだんだ……」
「税が払えないと家畜や畑を全部持っていきやがった。そのせいで冬を越せなかった家族もいる…」
別の盗賊が苦い顔をして続けた。
盗賊団B「俺の家も畑を取られて、村を出るしかなかった…」
サクラ「……ふーん……なるほどね。」
私は領主に近寄り、領主のアゴに手を伸ばした。
領主「な!なんだ!……酒クサッ!!!」
領主は怯えながらも虚勢を張った。
そして……私はその手をゆっくりとアゴから頬まで伝わせる。
サクラ「……ふふ……領主様……?……私はね……権力者が私服を肥やすというのが……大嫌いなの……だからね?……これからは善政を心掛けると……約束しなさい。」
領主「ひぃ……」
次に頬から首に手を伝わせる。
サクラ「それから…この村を発展させる為に全力を尽くしなさい。技術者や農家、労働者を移住させなさい。……ふふ…領主…お前はさっき盗賊団を捕まえる私の強さを見たわよねぇ……?」
サクラ「さらにね?こんな奴らも従えてるのよ?……辰夫ッ!辰美ッ!へんしーん!」
私は声を張り上げ、辰夫と辰美を見つめると首をクイッと上げて無言の指示を与えた。
辰夫「ふむ。なるほど。」
辰美「はははっ!」
ずももももも……(人 → 竜)
辰夫と辰美はドラゴンの姿に戻り、領主を睨みつけた。
領主「ひ!ひいいぃっ!」
サクラ「私はこの2体の主。そして……何よりも美しく強い。こんな私を敵に回す覚悟があるなら……」
刀を抜き、ゆっくりと領主の首元に向ける。
……刀の刃が月明かりに反射して、領主の喉元でぴたりと止まる。
その瞬間、ふと──
(……漬物石をどかしたら、下にいたのはおじいちゃんだったのよ。忘れてた。)
(……おばあちゃん、それどういう状況……おじいちゃん大丈夫なの……?)
(沈黙)
私は一瞬だけツッコミを入れたあと、すぐに表情を戻した。
サクラ「……これまで通りに好きになさいな……?」
その瞬間、領主の顔色が見る見る青ざめていく。
《天の声補足》
領主は震えながらサクラを見つめた。
この鬼の女はただ恐ろしいだけではない──
背後のドラゴン達を従える絶対的な力。
視線の奥に潜む底知れぬ闇。
『逆らったら殺される』そんな単純な恐怖ではなく、
『逆らったら何をされるか想像もできない』という未知の恐怖が、
領主の背筋を冷たい汗とともに駆け抜けていった。
領主「……わ、わかりました!何でも言うことを聞きます!」
サクラ「あら?何でも?」
領主「は!はい!」
領主の耳元に顔を近づけ囁く。
サクラ「……じゃあ……お前の領土を……全部……ちょうだい……?」
領主「そ、それは……」
領主から手を離し仰け反り《のけぞり》笑った。
サクラ「あっはっは!冗談よ!お前が善政を尽くすなら何もしないわよ!」
そして、もう一度ゆっくり領主に近づくと耳元で囁く。
サクラ「……今は……ね……?クスクス……」
領主「ひぃっ!」
これで領主を完全に掌握したと言って良いだろう。
…
さて、次だ。私はキッと盗賊団を睨み付ける。
サクラ「それから盗賊団のお前達!」
盗賊団「「は!はい!」」
サクラ「お前達はこれから…私の配下となり働いてもらう。……私はこの村が大好きなの。村人に少しでも危害を加えたら……言わなくても分かるわよね?」
盗賊団「「は、はい!」」
サクラ「ああ、断っても良いのよ。断れるものならね。」
辰夫と辰美にめくばせをすると、辰夫と辰美が盗賊団を睨み付けた。
盗賊団「「わ、わかりました。」」
── こうして元盗賊団の人間の配下20人が増え、村の発展のために人材が送り込まれてくる事になった。
…
エ『お姉ちゃん!カッコよかったよー☆』
夫「うむ。」
美「サクラさん大好きです!」
辰美の様子がやはりおかしい。
(……サクラさんが笑ってる時だけ、胸の中がポカポカするの)
(……どうしてかは、まだわからない。でも、きっとそれが──“希望”ってやつなのよね)
辰美はそっと自分の胸に手を当てた。
サクラ「いえいえ、遅くまで酒場で飲んでたらたまたま盗賊団が領主を誘拐してて、ラッキーって♪……あッ!そうだ!辰夫ッ……はいッ♪」(ドンッ!)
そう言うと、私はスキップで辰夫に近づき、居酒屋の請求書を渡した。
辰夫「ば、バイト代が……」
請求書を見た辰夫は泣き崩れた。
── そして。遠巻きにこちらを見ていた領主と目が合った。
(あの領主……へぇ、あんなに震えてたくせに……まだ何か考えてる顔ね)
(……ふふ、やるならやってみなさいよ。漬物石になる覚悟があるならね?)
…
(つづく)
◇◇◇
《征服ログ》
【征服度】:2.7%
領主への支配・盗賊団吸収により実質的な領地掌握進行
【支配地域】:リンド村+周辺領地(領主は形式上存続)
【主な進捗】:
・領主との初接触:圧倒的暴威と言葉攻めで完全服従に成功
・盗賊団20名を一括配下に組み込み、村の労働力として再教育開始
【特記事項】:
・カッコつけたくなるとサクラは歌う(今回はラップ)
・辰美が“サクラLOVE属性”に開眼。従順化加速中
◇◇◇
──【今週のおばあちゃん語録】──
『漬物石をどかしたら、下にいたのはおじいちゃんだったのよ。忘れてた。』
【解説】
権力に圧し潰されたものは、時として存在ごと忘れられる。
だがサクラは思い出す。おじいちゃんが好きだから。