#056 : ラップバトル☆増税マン vs サクランマン
前回までのあらすじ
→ ノリで領主に挨拶することになった。
◇◇◇
温泉には馬車が止まっていた。
どうやら領主はすでに温泉を満喫しているようだ。
エスト『うわぁ☆豪華な馬車だなー☆ いいなー☆』
エスト様が目を輝かせながら言った。
サクラ「え?そうですか?こんな馬車よりも、こっちの馬車達は飛ぶし、ブレスも吐けますよ?』
辰夫「馬車……達……?」
辰美「……辰夫さん。なんかここまで来ると逆に気持ち良くなってきました。」
辰美は何かに目覚め始めていた。
◇◇◇
しばらくすると村長と ご機嫌なおじさん達が出てきた。
どうやらこのおじさん達が領主とその用心棒といったところか。
領主「いやぁ!ここの温泉は最高だなー!村長!」
村長「気に入っていただけたようで何よりです。」
領主「我が領土にこんな素晴らしい温泉が出るとは!私も鼻が高いよ!はっはっは!」
領主はご機嫌のようだった。
ここでエスト様が切り出した。
エスト『あの。領主様。ご挨拶宜しいでしょうか。』
私たちの姿を見た領主は驚き仰け反った。
領主「な!なんだお前たちは!?モンスターか?」
用心棒達がすかさず身構えたが、村長がすかさずフォローに入った。
村長「お待ちください!…領主様!」
「こちらの方々は過去に我が村を救ってくださったリンドヴルム様と、そのご一行様となり、村の大切な客人です。」
「さらにこの立派な温泉施設を作ってくれたのもこの方々です。」
辰夫「…ふむ。」
辰夫は少し得意気な顔をした。
そして、そんな辰夫を見た私はイラッとした。
エスト『私の名前はエストと申します。旅の途中でこちらの村に滞在させていただいております。』
領主は鼻で笑った。
領主「ほう……これが噂の客人か。だが所詮、温泉を利用して肥え太った余所者に過ぎん」
その視線は冷たく、周囲の村人ですら息を呑む。
用心棒たちが一歩踏み出し、鎧の金具が軋む音が広場に響く。
エスト様が無意識に肩をすくめたのがわかった。
(……なるほど。これが“増税マン”の本性か)
サクラ「ご挨拶を──」
私は一歩前へ出た。領主の視線が刺さる。
そのまま、にやりと笑って──
サクラ「私はサクラ♪ 領主 に 送る この ソウル♪ 今日 は 領主 にもの 申す♪ 」
私も負けじとラップで挨拶をした。今日も押韻は絶好調だった。
エスト『お姉ちゃん!何も申さないから!』
サクラ「ちぇッ…」
エスト様に抑止されると、私はアヒル口をした。可愛い!
領主「と!とにかくだな!いつ襲ってくるかも分からない……お前たちモンスターの話なんぞ聞かん!」
エスト『私たちはこの村にお世話になってから誰にも迷惑はかけておりません。』
エスト様が反論した。
すかさず村長がフォローを入れてくれる。
村長「その通りです。先程ご報告させていただ温泉の工事からモンスター討伐・採集した素材の寄付とお世話になりっぱなしです。」
(ふむ。この村長、なかなかの人物だな。)
私は感心した。アヒル口のままで。可愛い!
そして領主が核心に触れた。
領主「そ、それで!私に…い、いったい…な、何の用だ!?」
エ『えっ?』
サ「えっ?」
夫「えっ?」
美「えっ?」
エスト『…………しッ!集合ッ!』
エスト様が皆に号令をかけた。
エスト『……え?あれ?何の用だっけ?』
サクラ「……誘拐では?」
「イラッとするし、いっそ埋めませんか?」
辰夫「……ふむ……。」
辰美「……ノリって怖い……」
そして4人でアヒル口をした。可愛い!
エスト『ほ、本日は領主様にご挨拶をさせていただきたかっただけでございます。』
エスト様が慌てて取り繕ってた。
領主「そ、それならもう分かったから帰れ!」
エサ夫美「「「「はーい。」」」」
私たちはトボトボと帰った。アヒル口で。
(つづく)
\\次回予告!//
領主との初遭遇!
ラップで圧倒☆サクランマン!
震える領主!逃げ惑う村長!
だが次なる舞台は──深夜のリンド村!
突如現れた盗賊団!
そしてその背後には「増税の影」!?
正義か、悪か、善政か、死か──
次回、
#057 : 善政か死か☆サクラ流領主教育
\\お楽しみに!//




