星は巡る③(改編)
カイルからの手紙で時の流れを漸く感じた。毎日が精一杯で1日はとても長いのに、1年は高速に過ぎていく。
カイルからの手紙に使われていた便箋に青い花が描かれている。以前贈ろうとしてくれたのは、確か赤いチューリップだった。
「花言葉を知らないのか?」
そう言ったのもカイルだったように思う。
この青い花にも花言葉があるのだろうか。
カイルのキラキラ輝く白金色の金髪と青い瞳を飴玉と共に思い出した。確か、初老の男性サイモンに、「トゥール ユヌ ユノー」と月の妖精の呪文を込めて贈ったのだ。
あれから、もう2年も経つのだ。
無茶をした両手が痛むが、些細なことのようにリンは感じた。
きっと、数年すれば今日のことも懐かしく感じる日が来るだろう。夢中で駆け抜けた日々はあっという間に過ぎていく。
そして、ロザリーとの思い出も、決して色褪せないと思っていた。実際に色褪せたと思っているのではない。ただ、昨日のように感じることが出来なくなってしまったのだ。
リンはベッドに寝っ転がって、天井を眺めた。
ロザリーのことを思い出すと胸を突き刺すような悲しみが今もまだ襲ってくる。
でも、当時のような痛みではない。当時は、何とかして黄泉の国から、ロザリーが戻ってこないものかと、目を瞑り永遠に瞼が上がることのないロザリーの前で叫び続けた。
「戻って来て。ロザリー。お願い。目を開けて」
ロザリーは心臓が止まり何時間も経っても、まるで眠っているようだった。
ただ、ロザリーの合わされ組んでいる両手に、リンは自分の手を重ねることやロザリーに縋って泣くことが出来なかった。
ロザリーの体温がないであろう冷たい手に触れてしまえば、その冷たさを感じ、死を受け入れなければならないのではないかと思ったのだ。
現実を受け入れることが出来ず戻って来てくれると信じて叫び続けた。
異様な光景だったと思う。大勢の大人たちから止められたのだから。
あの時、リンは13歳だった。もちろん、死についてちゃんとわかっていた。
だが、死を認識することと許容することは違う。怒りの矛先は、ずっと不満に思っていたスーモア国の女性蔑視へと向いた。だから、今があるのだ。
13歳のリンが許容出来なかったロザリーの死は18歳になり、漸く受け入れることが出来るようになった。
だから、あの冬の匂いがする棺の前でロザリーに触れなかったことを後悔している。叶わないとわかっていても、あの時に戻り優しい優しい春風のようなロザリーの手に触れたい。例え、ロザリーの手が温度のない冷たい手だったとしても。最後にもう一度触れたい。
リンはカイルの手紙を胸に置きながら、ロザリーの灰色の絹のような髪と青紫の瞳を思い出の中で追いかけていた。
ロザリーとの思い出の中に閉じ籠ってしまいたいと思ったことは一度もない。それでも、ロザリーの面影をいつも何処かで探している。
何度、星が巡ってもロザリーを忘れない。ロザリーとの思い出は私の一部だから。
リンは星も見えない天井を見ながら、ロザリーと見上げた星空を脳内で再生していた。
毎日、22時に投稿しておりましたが、
急な引っ越しが決まりましたため、不定期更新となります。
いつも足を運び目を通して下さって本当にありがとうございます!励みになっています!
投稿再開は早ければ年末、遅ければ年始になる予定です。




