ユリアの瞳④
「……なんだか、ヘイサースユノーの言葉の響きに似てる。何て言ってるかはわからないけど」
「ねぇ、今からこの言葉を教えてくれた人の所に行ってみたくない? ユリアと同じ黒髪だったと思うんだ。ドニーズさんって言うの。瞳の色だって大まかな分け方で言うと同じ緑色だよ」
先程までのトーンと打って変わり、「お茶でもしよう」と話していたかのようにリンは喋った。
ユリアは「え?」と固まり絶句している。
リンは熱い思いを隠した。まるで完全燃焼している青い炎のように。
「今から? ちょっと待って? いきなり何を」
「決まりね! さぁ、行こう。騎士様に言いに行かなくっちゃ」
リンは聞く耳を持たずユリアを強引に引っ張り更衣室に押し込んだ。
「今から15分後に病院前に集合ね」
「ちょっと! リン?!」
リンは困惑しているだろうユリアを置いて走った。ローランを今から魔法のように召喚しなければならないからだ。多少我儘を言ってでも引っ張って来なければと気合いを入れ全力疾走する。
病院を出て、騎士隊の本部まで来た。ものの、5分だった。汗が額から流れ落ちる。
「すみません。つい先日の事件で怪我を負いました。衛生師のリンと言います。そのことでお話があります。至急、ローラン騎士様をお願いします」
リンは受付で騎士隊の受付がローランを呼びに行かなければならないような言い方をわざとした。
受付の方はリンの腕の怪我を見て、リンの言ったことが本当だと思ったようで訓練所の方へ走って行った。
ことが上手く運ぶにはここからが本番だ。あのローランを何としてでも丸め込まなければならない。
考え込むには短すぎる時間で足音がバタバタと聞こえて来た。音がする方向を見るとローランがまあまあの勢いで走っている。
「っ何があったっ?」
余程急いで来たのか息を切らせている。
「っ副作用か?ノーマン医師には診てもらったのか?」
「すみません。違うんです。でも、物凄く急いでいます。ドニーズさんの所へ連れて行って下さい。今すぐ。お願いします!」
リンは何も説明せず、懇願と謝罪で押し切ることにした。頭をガバリと下げて、「お願いします」ともう一度言った。
「理由は? 勤務を抜けることになるんだけど」
ローランが珍しくまともなことを言った。
「友達の将来がかかった危機なんです」
リンは力尽くでも連れて行こうと、ローランの腕を取り引っ張る。
「理由が大き過ぎて抱え切れる気が全くしないんだけど」
引かられる力に抗うようにローランは動かない。
「私も確固たる理由はないんです!」
「無茶苦茶だな」
そう言いながらもローランは受付に、「事件の怪我人警護で抜けるよ」と話し、リンに付いて来てくれるようだ。
「貸しだからね」
何も聞こえなかったことにして、リンはローランと来た道を戻った。
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