意地の悪い男①
ローランはリンの上司に「あんなことがあった後だから聴取はまた明日にします。騎士が送って行った方が安心でしょうから。」と抜け抜けと言っていた。
リンは訝しげな目線をローランに送り続けた。心の底から、面の皮の厚さを誉めてやった。
リンを送って行く最中も「よかったよ。今日、犯人が全員捕まったから書類整理で忙しいんだ。押しつけて帰れるんだから、ラッキーだよ。」と足取りが軽そうであった。
さぼるために使っているのだと言われたようなもので苛立ちを覚えた。
そんなリンの様子をローランは「面白いな」と機嫌良さそうに笑い飛ばしていた。
「私は満身創痍なんです。不快なのでもうここでいいです!」
睨みつけてローランを寮のすぐ近くで追い払おうとするも、
「任務は最後までこなさなくっちゃ。我慢してよ。」
とまるでリンが我が儘を言っているかのように言われた。
ーー本当に癇に障る男だ。
もう二度と会いたくない。ーー
そんな心の声は神に届かず、翌日に療養休暇を与えられたリンへ聴取に来たのはローランと黒髪の騎士だった。
「おはよう。よく休めた?」
と爽やかに挨拶された時は、手当たり次第に物を投げたい衝動に駆られた。
「まだ、疲れてるさ。ローランもう揶揄うのはやめてやれ。」
「アレクサンド、揶揄ってなんかないさ。本心で喋ってる。失礼なことを言うやつでごめんね。」
リンにとってはアレクサンドの意見を支援したいところだが口を挟む前にローランの手にかかればアレクサンドの方が悪者のようになっていた。
アレクサンドは肩を落として呆れたように「本当にすまない」と謝ってくれた。当のローランは全く謝る気配もなく飄々と立っている。
「アレクサンド様、どうにか担当を代えてください。昨日から腹が立ち過ぎて、頭の血管が切れそうなんです。」
アレクサンドはローランの肩を平手で叩いた後、
「本当にすまない。やつは気に入った人にはいつもこうなんだ。」
とまた謝った。その後ろで叩かれた肩を回しながら「アレクサンドが謝罪しても担当は代えられないけどね。」とローランが口の端を上げている。
「私、こんなに腹が立つ人に会ったのは祖国以来です。」
「俺もこんなに面白い人に会ったのは親友以来だよ。」
ローランはくすくす笑い始めた。
「おい。これ以上やめろ。聴取にならないだろ。事実関係がはっきりしないと奴等に刑を確定させられない。」
アレクサンドが笑うローランをさらに後方へ押し、「俺が聴取するからね」と記入帳を開く。
「お願いします。」
それには大賛成だ。ローランがいると何日経っても聴取は終わらないだろうと思った。
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