外勤は危険②
押し込められた車の中で目隠しをされ、手足を縛られた。
車は物凄い振動で走っている。
連れ去られる時にユリアの首が力なく落ちた光景が頭を離れない。
どうか生きていてほしいと真っ暗な視界の中で必死に耳をすませながら祈った。
「ーー?ーーーー!」
男の声がする。きっと運転席の方からだ。
「おい!馬鹿!母国語で喋るな!国が割れると面倒だ!」
野太い男の声が助手席の方から聞こえ、先程聞き取れなかった言葉は異国の言葉だとわかった。
「悪い、動揺してた。なんで、こう上手くいかなねぇんだ。初めの女は騎士に保護されちまった。」
「動揺するのも仕方ないさ。お陰で手持ちの毒を全部騎士に使っちまった。ご主人様からは少なくても2人連れてこいって言われてたのに。これじゃあな。」
ガンガン
車が異常に揺れる。助手席で男が車を中から蹴って苛立っているところを想像した。
「黒髪の女ねぇ、お前が連れて来たもう1人は栗色じゃねぇか。こいつは途中で置いてくか、始末しよう。毒は両方に効いて動けないんだろうな?」
「ああ、最後の栗色の方はほんの少ししか布に足らせなかったが効いてると思うぜ。」
おかしい。
リンは毒を嗅いでいない。
だが、連れ去られる時にマスクの上から布を当てられた気がしないでもない。
ユリアの様子がおかしいのは騎士達と同じ毒を使われたからだとわかった。ならば、呼吸状態をしっかり観察すれば大丈夫だ。
ノーマン医師は「ここでは解毒できない」と言い、搬送を指示していた。それは、搬送先なら解毒出来るということだ。
毒を撒かれた騎士達もグッタリして動けなかったがバイタルサインは安定していた。
それに、男達は「黒髪の女を少なくとも2人」と言っている。要領的に考えると2人攫うまでは出国しないはずだ。それなら、毒が回ってるふりをして油断させればユリアを担いで脱出できるかもしれない。
「おい、良いことを思いついた。仲間2人と引き換えにこの栗色の髪の女を差し出せばいい。人質として。それなら、始末にも困らねぇし仲間も取り戻せる。」
「名案だな!ハーレムの男手が減るとご主人様がお怒りになるかもしれねぇし、取り戻した方が断然いいや。」
縛られた手が震える。
少し冷静になると怖くて堪らなくなった。
車は悪路を進んでいるのかさらに揺れが激しくなる。
ーー大丈夫。必ず助かる。ユリアも私もーー
心の中で何度も自分自身に言い聞かせる。
車は1時間ほど走り続け急に止まった。
乱暴にドアを開ける音と共に、湿った森の匂いがした。カーカーと頭上のずっと上で鳥がなく声も聞こえる。
毒が回り力が入らない演技をしていると、腰を掴まれ男の肩に担がれたようだ。腹部を圧迫されているが声を出さず脱力したまま過ごした。
ガチャガチャと鍵の音がして、木の板の感覚がするところに置かれた。
「ユリアも一緒だろうか」そう考えていると男達が、
「危険だが行くしかねぇ。最低2人だからな。」
「情報が出回る前にもう1人捕まえて、人質と仲間を交換だ。今日中に近場で捕まえよう。」
そう言うと靴音が遠ざかり鍵をかける音がした。
続いて、車のエンジン音がし遠ざかって行く。
静まり返ったことを確認して声を出す。
「ユリア。ユリア!」
返答も物音もない。
「ユリア!お願い返事をして!」
リンが叫ぶと、右の方でタンタンっと床を叩く音がした。
目は目隠しされ、手は後ろで縛られ、両足は伸びたままひとまとめにされている。リンは音がした方向へ転がることにした。
膝を少し曲げて反動をつけ、一回転する。
「ユリア?どこなの?ユリア!」
タンタンっ
近づいている。
転がりながら仰向けになった時に、目隠しのこぶが床に当たり動いた。そのまま、膝を曲げ頭に重心がかかるようにして、こぶを床に擦り付けるようにして身体は上にこぶは下に動かす。
目隠しの平たい布は首にかかり、視界が開けた。
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