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2-4 深夜の遭遇戦

2020年10月25日-行間や句読点などを修正。内容に変更はありません。

2021年10月02日-戦闘に入る場面を微修正。ほかに、字句などを修正しています。


「おはようございます!」

 夕方『猫のパン』につくと、いつもの挨拶をして、いつも通りにお仕事。

 順調に進んでいたのだけど、最後のお金の計算が合わず、帰る頃にはだいぶ夜も遅くなってしまった。

「心配ないですよ?

 ほんとうに大丈夫ですから。

 まんがいち襲われても、そんなのワンパンで返り討ちですっ!」

 最近町の南のほうがすこし騒がしいからと、ずっと心配してくれるマリオさんに安心してもらえるよう、最高の笑顔をうかべて、お店から帰る。

 そして、念のために大通りを選んで歩く。


 しかし。

 道のりの半分くらいまできたところで、突然感じる怪しい気配。

 何? まさか、治安の良い旧市街で物取りや人さらいなんて、この時間でも考えにくいですし。

 ……ええ、そうですね。これはたぶん、『アレ』でしょう。


 私がそちらに目を向けると、いきなり何かが屋根の上から降ってきた!

 月明かりと街灯に浮かび上がるのは、血を流したヒトガタのモノ。

 それはこちらに気付くと、場にそぐわない笑みを顔に浮かべながら、近づいてくる。


「どうした、お嬢ちゃん?

 こんな夜更けに一人じゃ、危ないよ?

 よかったら、送ろうか?」


 よく見るとなかなかのイケメン、なのだが。

 私にはわかる。このヒトガタ、『アレ』は……『悪魔』だ。

 聖都に入り込んで潜んでいるのがいるという可能性がありそう、みたいな話は昼間聞いたけれど、ユーリ様の真綿の網にかかるのはさすがにまだ早い気がしますね。


 私は、考えながら立ち止まると。おもむろに鞄をおろして、開ける。

 『悪魔』を目に、私の心はどんどん冷静に冷えていく。

 そして目の端では、月明かりを浴びた『宝具』が、ちいさく輝きを返した。


「あれ?

 その格好、学院の制服? お嬢様じゃん!

 ん? もしかして……魔力持ち?

 それは……、オイシソウダ!」


 ニコニコ、改めニヤニヤと近づいてきたそれは、私がすることを気にもとめない様子でそういうと、右手をあげて振り下ろした。


 クインっ


 わずかな音がする。

 宙に呼び出された杭状のものが、高速で私の手足を狙って放たれるのとほぼ同時に、魔力を通して起動した私の宝具に当たって崩壊したときにでたものだ。


「なん……だと……?」

 いきなり悪魔の余裕がなくなる。

 これは、なかなかの小物の模様。


「! ……まさか……『宝具』かよっ!!」


 後ろに跳んで距離を開けようとする悪魔を、魔力で強化した体で追いかける。

 驚愕する悪魔の顔からほんの少しのところまで、私の顔が迫る。


「お口から、人の血の匂いがしますよ?

 今晩、誰かを食べたのですか?

 あ、向こうから足音がしますね。この走り方はたぶん騎士、旧市街で悪魔退治なら神殿騎士ですか。

 その怪我を見るに、追われているのでしょう?

 騎士様もそこそこの使い手とお見受けしますが、

 いちど逃げることができたのは大したものかもです。

 でも、私と会ってしまったのが残念なところでしたね、

 それじゃ、さよならです」


 話しかけた私の言葉を、身動きもせず聞いていた悪魔だったが、最後の一言で動きを取り戻す。

「この、クソがっ!」

 両手を振り上げ、その間に輝く魔力光が生まれ、

 そして、右下から振り上げられた私の宝具に体ごと2つに割られて、そこから掻き消される様に宙に溶け、消えていく。


「夜に明るすぎる灯りをともすと、届かない影はますます見えなくなりますよ?」

 もう聞こえてもいないだろうけどそう言うと、


 カチャ、カチャ、カチャ、カチャ


 遠くに聞こえてきた足音から遠ざかるため、急いでその場をあとにした。


「ただいま!」


 家に駆け込むと、ゆっくり荷物をおいて、そのまま自室に上がる。

 さすがに、ちょっと疲れました。

 主に、走って帰ったのが。


「しかし、ユーリ様が言った、宝具に魔力をまとわせて殴る、って……あれ、なかなかえげつないですね」

 まさか本当にワンパンとは。前の私なら、この時間まで戦っても、まだ倒しきれていたか怪しい。

 でも……私が追っている悪魔では、なかった。

「……まぁ、そんなに簡単に、むこうからノコノコ出てきてくれたりは、しませんよねぇ」


 そのまま体をベッドに倒れ込ませる。

 視線をあげると、私とパパママの肖像画。

「待っていてくださいね、必ず倒してみせますから。

 あれ? あの技、あとから結構疲れがどっと……

 またユーリ様にお話ししないと……

 でも、今日は……もう……おやすみなさい」


 なんとかそう呟いて、そのまま意識を手放した。


興味を持っていただけたり、応援をいただけるようでしたら、ぜひブックマーク・評価・感想などをいただけますと幸いです。


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