30-3 『研究会』ですることは
2024年1月2日-敬称の誤りを修正
そして授業も終わって、研究会。
私は、ひたすら魔力制御の訓練をしていた。
「ご主人さま、イメージが歪みました」
「そうそう、その調子ニャ。
……って、今度は調子に乗りすぎニャ!」
『ヤキトリ』と『バター』が、頭の中から激励を送ってくれる。
魔力制御は、魔力を感じ、把握し、管理する。
魔力を感じるところは、できている。
私の魔力、『ヤキトリ』の魔力、『バター』の魔力。
魔力に意識を向けながら、それぞれの姿を脳内にイメージすれば、これはそんなに難しくなかった。
魔力を把握するのは、難しかった。
でも、混沌としているような魔力も、よく見てみると私と『ヤキトリ』と『バター』の魔力が、複雑に入り混じっているのが感じ取れた。
「『ヤキトリ』、少し魔力を動かしてもらえますか?」
すると、感じる魔力が少しづつ動く。同時に脳裏に聞こえる『ヤキトリ』の声。
「これが私の魔力です。順に、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・筋力の順に強化したあと、術使用を試行します」
ああ、なるほど。
これが、ヤキトリの魔力ですか。
これが、動く……、さすがに複雑ですね。何回か繰り返して覚えるしかなさそうです。
「これが、私の魔力ニャ。同じ順でやってみるニャ」
! 動くのはわかりますが、さっきとまるでパターンというか流れが違うんですね。
ちょっと、これを理解するのは大変そうですよ。
「それじゃ、今度は同時にやってみます」
「組み合わせを変えながら何回かやってみるから、しっかり感じてほしいニャ!」
魔力が、動く。
うわぁ、ちょっとまってください!
なんですか、これ。
こんなの、ちょっと理解できませんよ!
これ、更に私の魔力との相互作用とか、出てくるんですよね!?
……わたし、くじけそうかもしれません。
「おかえり、レンガちゃん。
ラベンダーのお茶は、おちつくのよ~?」
魔力制御の訓練に、しばらく取り組むけれど。
『ヤキトリ』か『バター』だけならなんとかなりそうなものの、2人同時や、私自身が混じってくると、もうどこから手を付けていいかわからなかった。
ユーリ様のお茶を飲むと、いっぱいいっぱいになった頭に、少しだけ余裕ができる気がして。
ごくごく、ごくごく、ごくごく。
あっという間に、飲み干してしまった。
「レンガ、よく頑張ったね。
遠い道のりに見えても、ずっと続けてれば、いつの間にか思わなかったほど進んでいるものさ。
じっくり腰を据えて、粘り強く頑張ろうね。
私も、付き合うからさ」
ラー様の言葉が、暖かく心にしみる。
そういえば、ラー様の射撃もポーションとかでのブーストができずに地道に磨かれたとか、お聞きした気がします。
私も、ラー様を見習って頑張らなくちゃ。
「『ヤキトリ』『バター』、どちらかを使いこなせるだけでも、凄いことだと思います。
レンガ様の持つ力の質が、全く変わるのではないでしょうか。
剣術の考え方で申し訳ないですが、まずは、1つ1つを確実にするのが良いのでは」
ミズナ様がアドバイスをしてくださる。
全ての究極には通じるところがある、なんて聞いたことがあります。
しっかり参考にさせていただきますね。
「まあ、レンガはそんなものでしょうね。
むしろ、悪くないと思うわよ」
『ヤキトリ』や『バター』と私の関係は、レクトの魔導騎士が体に動物や魔物を取り込むのに似ているところがあるみたいです。
だから、魔導騎士を生んだシリル様に悪くないと言っていただけると、なんだか安心しますね。
そうだ、もう少し詳しく、私と魔導騎士の類似点とかお聞きできないですかね?
でも、私が聞いてみようと口を開ける前に、シリル様は続けてミイツ様に仰った。
「それで、レクトの顛末は、その後どうなったのかしら?」
やっぱり、昔ご自分のおられた国ですし、気になるんでしょうか?
ミイツ様は、相変わらず微笑みながら、お答えになる。
「レクト国王は側近と魔導騎士を引き連れて、脱兎のように国に逃げ帰っているわ。
移動速度が異常ね。魔導騎士の力を使っているみたい。
聖王国での失態を挽回する示威にしては他になにも動いていないし、能力や性格を考えても、聖王国の追撃が怖いだけでしょうね。
執政官様がお会いになったときに、ちょっと釘を差していらっしゃったみたいだから、その誘導効果もあるんじゃないかしら。
レンガ様の件とこれで、魔導騎士の実力がまた1つ明らかになっちゃうわね。分析できる国は大喜びだと思うわ。
まあ、残っている魔導騎士団だけでも十分脅威なんだけど、今回の件でケチがついちゃったから、だいぶ使いにくくなったでしょうし、外交的には足元を見られるようになるでしょうね。
あと、聖王国の軍事的評価は急上昇するわね。
シリル様、ガゼル様、フェイ様はそうでもないと思うけれど、今回の原因になるレンガ様の秘密は、間違いなくあちこちから探られるわ。早めに、エビナー侯爵様と騎士団の新武装のせいにでもしておいたほうが良いんじゃないかな。
このあたりは、陛下と執政官様がご相談になるでしょうけれど。
ああ、レンガ様は、呼び出しも覚悟しておいてね」
ええ!?
もしかしたら、国王様や執政官様にお会いすることになるんですか?
……いやいや。
もし呼ばれるとしても、担当の人とかにですよ。
さすがに、そんなすごい人が出てくるとかは、ないですよね。
私みたいな、一般人に。
ちょっと動転してたみたいです。おちつこう。
「そっか。
そろそろそよ風が、だんだんつよく吹き始めたかな。
嵐が来るかも知れないから、しっかり対策をしておかないと。
いつか来る嵐への準備を疎かにするようじゃ、まるで『災厄』前の話みたいだもの。
みんな、よろしくね」
ユーリ様が、お茶を飲みながら、ゆっくりと仰った。
なんだか、ものすごく不穏なお言葉ですよ?
また、聖王国の王都を1日にして失わせたような『なにか』が起きるかもって仰るんでしょうか?
でも、ユーリ様には色々とお世話になってますし、私もできるだけお手伝いしますよ!
「はい!」
答えたあと、一瞬イヤな考えが頭をよぎる。
これって、ユーリ様の『託宣』とかいうやつじゃないですよね?
もしそうなら、本当に『災厄』前の予言みたいじゃないですか。
もしかして、この『研究会』って、そのためのものですか?
だったら、『研究会』は向き合うためと仰っていましたし、『アレ』も絡んでくるんじゃ?
私は変な汗が止まらずに、ユーリ様から落ち着くお茶を何杯ももらって飲んだのだった。
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