表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/154

閑話【王国議会】


はいドーン!

閑話だけど許してくださいね!


あ、ちなみに投稿まで時間かかったのは今回出てくる方々の設定作ってました。


 


 ーサンスクリード王国【王都】トラゴエディアー



 とある王城の一室にて、円卓を囲んだ六人の人物がいた。



 一人は金髪碧眼の男性。


 一人は秀麗な顔立ちをし、とがった耳とエメラルドグリーンの長髪をもつの女性。……フラットスレンダー。


 一人は全身が鱗に覆われ、寡黙な男性。


 一人は着物を着て、額に二つの角を生やした背丈の小さな女性。……フラットロリ。


 一人は獣の耳と尻尾が特徴的な男性。……ケモ耳親父。


 一人は背丈こそ小さいが、ガタイがよく、立派なヒゲを生やした男性。



「皆の者、此度はよくぞ集まってくれた。緊急招集とはいえ、即座に駆けつけてくれた事に感謝する。」


 そして、人族の男性、国王ケーニヒが他の五名に向けて口を開いた。


「別にかまへんよぉ?ウチは暇してたさかい。」


 額に角を生やし、着物を着た女性が一番にこたえる。


「ハッ!オレは剣を打ってた最中に呼び出されてクソみてぇな気分だ!」


 すると、ヒゲを生やした背丈の小さな男性が不機嫌そうに吐き捨てた。


「相変わらずだぁ……ピズマの親父ざぁん。」


 そんな男性にのんきに笑いながら言ったのは獣の耳を有した男性。


「彼はいつもそうでしょう。気にするだけ無駄です。」


 そこにとがった耳を有した女性が無表情で言った。


「然り。」


 女性の言葉に、全身を鱗に覆われた男性が同意する。


「あぁん!?んだとテメェら!戦鎚で殴り潰すぞ!?」


 ピズマと呼ばれた男性はその体躯に見合わぬ大きなハンマーを持ち出して怒鳴る。


「あぁあぁ、そないに怒りはったらウチ怖いわぁ。」


 すると、フラットロリ……失礼。角を生やした女性がはんなりとした口調で言った。


「あぁ!?キキョウ!テメェも潰されてぇか!?……って、潰すトコねぇわな!だはははは!!!」


「相変わらずなお人やねぇ。」


「サラッとわたしにも被害が出たのですが……」


 ピズマが豪胆に笑うなか、キキョウと呼ばれた女性はクスクス笑いながら回りくどい毒を吐き、フラットスレンダーな女性が顔をしかめて言った。


「さて、皆の者、談笑はそこまでだ。此度の招集は国家非常事態宣言の発令が発端……ならば、事は早急に対策が必要である。」


「殿、して、いかように?」


 ケーニヒが会話を中断させ、経緯を説明すると、鱗の男性が口を開く。


「あぁ、説明する前にもう一人呼んでいるのでな、紹介させてもらうぞ。」


「承知。」


 ケーニヒは鱗の男性の質問に対してそう答える。


「では、お入り下さい。」


 ケーニヒの言葉の後



 ––––ギィィ



 会議室の扉が開く。


「こんにちは〜、よろしくねぇ〜」


 そこには手をひらひらと振り、笑顔を浮かべる大人の色気をまとったナイスガイが一人。


 短髪の黒髪に黒い瞳をした男性は危険な香りをまといながら席に歩みを進める。


「この方は隣国であるパラディ魔公国を治める七公爵の一人、アスト殿だ。

 此度は二国間平和条約に規約されている緊急事態協力条規により、公爵代表として来ていただいた。」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そりゃあ、お隣さんに危機が迫ってれば駆けつけないわけにはいかないよねぇ〜。

 まぁ、おじちゃんの事は気軽にアストって呼んでねぇ〜」


 ケーニヒの紹介にアストは陽気に渋い声で話す。


「アスト殿にも我らサンスクリード王国の各族長を紹介しよう。

 まずは、王国北部に住まう《エルフ族代表族長》の【ナトゥーラ・シア・アポストル】。」


 そして、ケーニヒは最初にエメラルドグリーンの長髪をもつ女性を紹介する。


「よろしくお願いします。アストさん。……とはいえ、初対面ではありませんね。」


 ナトゥーラは一礼してからそう言った。


「そうだねぇ〜、けど、結構久しぶりだねぇ〜」


 アストも笑みを浮かべてこたえる。


()()()()くらいでしょうか。」


「それくらいかなぁ〜」


 ナトゥーラとアストは知り合いらしく、アストが少し懐かしそうに話す。


「さて、次は王国東部に住まう《ドラゴニュート族代表族長》の【ツツジ】。」


 紹介を受けたのは全身が鱗に覆われた男性。


「お初にお目にかかる。」


「よろしくねぇ〜」


 アストは親しげに手を振って言った。


「そして、王国極東に住まう《極東部族代表族長》の【キキョウ】。」


 続いて紹介を受けたのは着物を着た女性。


「アストはん、どうぞよろしゅう。」


「東の鬼人族かぁ〜、似た者同士よろしくねぇ〜」


「あらまぁ、嬉しいわぁ。」


 キキョウは、はんなりとした雰囲気でにこやかに笑い、アストは変わらず親しげに微笑む。


「それから、王国南東に住まう《ドワーフ族代表族長》の【ピズマ】。」


 その後、立派なヒゲをたずさえた背丈の小さな男性が紹介される。


「よろしくな!」


「意外と友好的なんだねぇ〜、よろしく〜」


 先ほどまでブチギレていたが、今はうってかわって友好的なピズマに、アストも少し笑みを深める。


「最後に、王国南部に住まう《少数部族連合代表族長》の【クラフト】。」


「初めましでぇ、オラはクラフトだぁ。」


「獣人族の割に温厚そうだねぇ〜、よろしく〜」


 若干訛りのあるクラフトに対し、アストは意外そうに呟いた後、ひらひらと手を振った。


「では、紹介も一通り終えたところで席に着こうではないか。」


 全員を紹介した後、ケーニヒは皆に着席するように促した。


「わかりました。」


「そうだねぇ〜」


「はいなぁ。」


「あいよ。」


「んだぁ。」


「承知。」


 そして、全員が座るのを確認するとケーニヒは口を開く。


「では、早速だが、此度の国家非常事態宣言の発令は我らが創神教の最上位神様であらせられる御柱、それも三柱からの勅命によるものである。」


「それは一大事だねぇ〜……」


「あらまぁ、怖いわぁ……ほんまに非常事態やねぇ。」


「んだんだ。」


「武器いるか?作るぞ?」


 ケーニヒの言葉に各々が反応するなかで


「………」


「ナトゥーラ殿、いかがなされた?」


 険しい表情で黙り込むナトゥーラにツツジが話しかける。


「……いえ、なにも。続けてください。」


 しかし、ナトゥーラが答えることはなかった。

 ナトゥーラをケーニヒは一瞥するも、重々しい口調で続ける。


「勅命の内容についてだが、要約すれば、ただ一人の大罪人を王都まで連行することであるが……これが一筋縄ではいかん。非常に難題であるのだ。」


「どういうことかなぁ〜?人物像や居場所がわからないとかぁ〜?」


 ケーニヒの言葉にアストは疑問を投げかける。


「いえ、居場所も名も全て神託を受けております。」


「それやったらぁ、何が問題なんやろかぁ?」


 疑問に対する答えに、今度はキキョウが首をかしげて言った。


「その大罪人の実力と居場所である。」


「王様よ、そんならもったいぶらずにとっとと言っちまえばいいじゃねぇか。」


 もったいぶるケーニヒにピズマがしびれを切らしたように言う。


「……深淵の森、中心部である。それも、一時的にではなく、そこに住んでいるようだ。」


 すると、ケーニヒは憂いのこもった声でもらすように呟いた。


「へぇ〜?」


「……それ、ほんまぁ?」


「なんと………」


「んだぁ……」


「だはははは!!そいつは傑作だ!」


「っ…………!」


 その言葉を聞いた瞬間、ピズマを除く全員の顔色が変わった。


「誠に残念だが、事実である。


 その者の名はシミズ・タケシ。

 そして、その者は近くリンドブルム領地のシュトルツに姿を現わすという……そこで、御柱はその者を捕え、王都まで連行せよと………しかし、我らではその者を殺すことは出来ぬと仰せになられ、丁重に扱うようにと命ぜられた。

 だが、これと同じくしてルイス辺境伯からは『問題なし』との報告が上がっているのである。

 最悪の場合、これはルイス辺境伯の敗戦を意味する。


 そこで、あくまでも我らの使命はその人物の捕縛および、ルイス辺境伯の解放にある。

 その後、御柱が大罪人に裁きを下されると思われる。


 それと一つ、因果関係は不明であるが、近頃リンドブルム領地の方面から異常な魔力波を感知する事がしばしばあったのだ。

 ルイス辺境伯の魔力とは別物であることは、余が一番理解しているつもりである。」


 それを追撃するようにケーニヒが説明をしていく。


「ん〜、それは参ったねぇ〜……あの森にまともに住んでるとなると〜、実力は冒険者でいえばSランク相当が妥当かねぇ〜……最悪、それ以上かもしれないねぇ。」


 背もたれに背を預けながらアストが瞳を閉じて考え込みながら言い


「無理難題もええとこやねぇ……」


 それを聞いたキキョウは苦笑を浮かべる。


「難題こそ、我らの誇りにかけてその使命を全うするべし。それこそ誉なり。」


 だが、ツツジは鋭い眼光でケーニヒに訴える。


「オラは勝てないと思うだ……」


 そこに、クラフトが耳を垂らして弱気に発言すると


「なにを腑抜けたこと言ってやがんだ!勝つ必要なんざねぇ!!要は連れてくりゃいいんだろ!?なら、そいつを王都まで連れくりゃそれで勝ちだ!!」


 ピズマが大声で叫んだ。


「ピズマはん、たまにはええ事言いはるなぁ。」


「あぁ!?普段は俺がまともじゃねぇってのか!?」


 少々脱線しつつも、三者三様の意見が飛び交う。


「………………」


 だが、やはりエルフのナトゥーラだけは険しい表情のまま黙り込んでいる。


「………なぜ……ですか、アルラウネ様……どうして……」


 しばらくすると、ナトゥーラは何かに戸惑いを抱いているかのように呟いた。


「ナトゥーラ、何か心当たりがあるのか?ささいな事でも構わん、情報が欲しい。」


 それを見逃さなかったケーニヒがナトゥーラに問う。


「………これは、ひと月ほど前の事なのですが……私たちの住まう森に精霊神様が降臨されました。

 そのお方は何を隠そう、かの深淵の森の中心部に居られるアルラウネ様です。」


 ケーニヒの問いに対して、ナトゥーラはしばらくの沈黙の後に答えた。


「なんだと?なぜ報告を……いや、今となってはどうでもよい。

 それよりも、かの大英雄殿が降臨されたとは誠か?」


 それに驚きを隠せないケーニヒは軽く目を見開いたままで確認をする。


「はい、事実です。精霊の巫女であるわたしの目の前に姿を現わされました。


 ……そして、アルラウネ様はこう仰られました。

『面白い人物を見つけた。これから仲良くしていけそうでとても楽しみ。』と。」


 それに対し、ナトゥーラは目を閉じてうつむき気味に淡々と話す。


「………頭が痛くなるな。」


「あらまぁ………」


「まざがぁ……」


何故(なにゆえ)か……」


「めんどくせぇな!?えぇ!?おい!」


 ナトゥーラの話にほとんどの人物が頭を抱えているなかで


「ん〜……じゃあ、()()()()()なのかねぇ〜……?」


 アストが不敵に笑みを浮かべ、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


 一名を除く全員が一様に沈んだ空気を醸し出す中で


「……しかし、憂いていても事は進まぬ。こうしている今もルイス辺境伯に危機が迫っておるのだ。


 そこで、余は王国騎士団の大派遣などの兵站や時間を大きく消費するものではなく、Sランクないしは、Aランクの冒険者による少数精鋭部隊の派遣を考えている。これであれば必要最低限の時間で派遣する事が可能だ。」


 ケーニヒが再び口を開き、考えを示す。


「一理あり。」


 すると、ツツジがケーニヒの意見に賛同する。


「けど、それは冒険者さんにリスクが大きいんとちゃいますかぁ?受けてくれはる人がおるんかなぁ?」


「そりゃそうだ!誰も死にたかねぇからな!」


「んだぁ、雇うのも一苦労だぁ。」


 だが、キキョウ、ピズマ、クラフトの三名が難色を示した。


「ですが、だからこそのAランク、Sランク冒険者では?

 ここで向かわせずして、何のために基準を定めてその称号を与えているのですか?」


「そうだねぇ〜、冒険者ってのは基本的に危険をかえりみない大バカ者の集まりだからねぇ〜……それに、Sランクの貴重な活躍の場じゃないのかねぇ?」


 それに対してナトゥーラとアストが反論する。


「それはぁ……そうやけどねぇ?その分の報酬もちゃぁんと必要やさかい。危険性を考えたらバカにならへん金額になるよぉ?」


 キキョウはナトゥーラ達の意見に同意しつつも問題点を指摘する。


「それは心配ない。王国の危機とあれば国庫から報酬を支払おう。

 それに、相手が話に応じる可能性もない訳ではないのだ。……希望的観測に過ぎず、根拠もないが。」


 指摘された点にケーニヒが答えるが、彼自身も不安が拭えきれないらしく、顔色が優れない。


「ちと、不安材料が多くねぇかい?冒険者だってバカって訳じゃねぇんだぜ?」


「名誉か死か、二つに一つ。しかして、戦場(いくさば)に死の危険は常なり。」


「それで納得して死地に飛び込む野郎共がいるか、って言ってんだ。」


「怯え退く者に冒険者の資格なし。」


「逃げるのも戦術の一つだぜ?」


「されば国の滅びは必定(ひつじょう)。」


「チッ……!」


 ピズマとツツジが言い争っていると、アストが不意に提案を出す。


「そうだねぇ〜……このままじゃあ話が進まなさそうだし〜、おじちゃんからは斥候(せっこう)役を出そうかぁ。あの子なら斥候と近接戦は出来るからねぇ〜」


「アスト殿からのお墨付きであれば有難い。しかし、よろしいのですか?」


 アストの提案にいくらか顔色が良くなったケーニヒが問う。


「大丈夫だよぉ〜?あの子ねぇ、死なないから。それに、こういうのは得意なんだよねぇ。」


 その質問に対してアストは不敵に笑いながら答える。


「それ程の実力があるものが斥候ならば奇襲などの危険性はかなり下がる。……後は王都の冒険者がどれだけ集まるか。」


「では、もう一押し、前衛として拙者が(おもむ)こう。」


 ケーニヒの言葉にツツジが口を開いた。


「なっ……良いのか?」


 驚きながら聞いたケーニヒに


強者(つわもの)との闘争こそ己を高める最上の機。橘花(きっか)流の担い手としての本懐なり。」


 ツツジは若干脳筋の発想で答える。


「結局、戦いたいだけじゃねぇか。言いたい事には賛同するけどよ。」


 そこに苦笑しながらピズマが意見を挟む。


「否、実戦こそ至上の鍛錬なり。」


「間違ってねぇじゃねぇか!」


 なぜか否定するツツジにピズマがそう言うと


「だ、だっだらぁ、オラもいくだぁ。」


 続いてクラフトがおどおどしながらそう言い出した。


「クラフトはん、あんさんまで何を言いはるん?」


 クラフトの発言にキキョウが呆れ気味に言うと


「オ、オラだって!獣人族の族長だぁ!……だ、だがらぁ、みんなを守るのはオラの……オラの役目だぁ。」


 その態度に見合わぬ威勢で言い放った。

 しかし、言葉の最後には勢いを失う。


「……はぁ、仕方のないお人やねぇ。どうぞお好きに。」


「い、言われなぐでもそうずるだぁ。」


 そして、キキョウは諦めたように止める事をやめ、クラフトは少々強気に出た。


 その様子を見ていたケーニヒは


「……そうか、ツツジ、クラフト、誠に大義である。

 できる事ならば余も共に行きたい……だが、それは一国の王としては許されぬ。1()5()()()と違い、余には責務がある。


 故に、その勇気に心より感謝する。

 どうか、余の戦友であるルイスの力になってやってくれないか。」


 真剣な眼差しで二人に頼み込んだ。


「まかされよ。」


「んだぁ!」


 その言葉を受けた両名は頷きながら応えた。


「誠に良き臣下を持ったものだ。では……「お待ち下さい。王。」


 先のやり取りを最後に、議会の意見をまとめようとしたケーニヒにナトゥーラが待ったをかける。


「どうした?」


 ナトゥーラに視線を移したケーニヒが問うと


「深淵の森、中心部に住まうというその人物にわたしも会いたいのです。

 アルラウネ様の仰った人物がもし、その人物であるならば……アルラウネ様の現状を、そして、お考えを知ることができるかもしれません。」


 彼女は淡々とした口調で話した。


「……理解はできる。しかし、仮にかの大英雄殿が見込んだ人物であるとすれば、それはナトゥーラが寝返る可能性もあるということだ。

 ただでさえこちらのリスクが大きいのに加えて、不確定要素が存在されてはかなわん。


 よって、棄却する。」


 だが、先ほどとは違ってケーニヒは手放しで喜ぶ事はせずに、冷静な判断でナトゥーラの意見を退けた。


「わたしが一族を率いてまで王国に仇をなすと?」


 少し目を細めて抗議するナトゥーラに対し


「あくまでも可能性の話ではあるが……ナトゥーラ、お主はその可能性の一切を否定できるか?

 かの大英雄殿に逆らってでも我らと共に在れるか?」


 ケーニヒはそう問うた。


「…………」


 その問いにナトゥーラは答えず、ただ瞳を閉じて沈黙するのみであった。


「その沈黙は否定と断ずる。

 ナトゥーラを信用していない訳ではない。ただ、お主の中で大英雄殿と我らの優先順位を推し量った場合の話をしているだけなのだ。恨むなら余だけを恨め。」


 その意味を理解したケーニヒはそう言った。


「ん〜、賢王の名は伊達じゃないみたいだねぇ〜、おじちゃん感心感心〜」


 すると、アストが陽気に笑い、拍手しながら場を和ませる。


「王国とは名ばかりの連合国、しかしてその長たる者であれば恨みの一つや二つは当然でしょう。

 ですが、アスト殿にそう言って頂けると心が軽くなりますな。」


 ケーニヒはアストの賞賛にわずかに頰を緩めてそうこたえた。


「さて、では議会の意見もまとまった所で最終確認を取る。


 一つ、パラディ魔公国から斥候を一人と王国議会よりツツジ、クラフトが出向く。


 二つ、その上でAランクおよびSランク冒険者の有志を募り、リンドブルム領地へと派遣する。


 三つ、冒険者達への報酬は国庫からの出す。


 以上の案を可決する。皆の者、よいか?」


 そして、ケーニヒは表情を改めて案をまとめ、可決の有無を問う。


「「「「「異議なし(だぁ)。」」」」」


「うん、おじちゃんもそれでいいよぉ〜」


「では、可決とする。」


 全員が賛同し、議題は可決された。


「では、これにて緊急議会を解散する。余はこれから冒険者を募るのでな。先に失礼する。」


「じゃあ、おじちゃんも帰るねぇ〜?斥候役はすぐに手配しておくよ〜」


 そして、ケーニヒとアストの二名が席から立ち上がってその場を離れた。



「んっ……はぁ、ウチも帰るわぁ。ツツジはん、クラフトはん、ご武運をぉ。」


 二人が去るのを見て、伸びをしてからキキョウも立ち上がって言った。


「感謝。」


「ありがどだぁ。」


 ツツジとクラフトが感謝を述べると


「なぁんにもできんでごめんなぁ。また、鬼のお酒ご馳走するさかい。」


 キキョウはその小さな体に見合わぬ妖艶な笑みを浮かべてそう付け加えた後、場を後にする。


「んじゃ、俺も剣を打ちに帰るか!じゃあな!ドワーフの酒も楽しみにしてろよ!」


 その後、ピズマはそう言いながら颯爽と去っていく。


 この場に残っているのは、ナトゥーラ、ツツジ、クラフトの三名。


「………」


「戻らぬのか、ナトゥーラ殿。」


「まだぁ、大英雄ざまのごどぉ、がんがえでいるのがぁ?」


 未だに瞳を閉じたまま立ち上がる素振りを見せないナトゥーラに、ツツジとクラフトが問う。


「……そうですね。この場で引き下がってよかったのかを考えておりました。」


 両名の問いにナトゥーラは瞳を開け、静かに答える。


「左様か。しかし、殿の言葉もまた然り。」


「えぇ、理解はしております。ですが、魔族大戦以降は一度も姿を現されなかったアルラウネ様がなぜ、あのタイミングで降臨されたのか……その答えがあるような気がしてなりません。」


 ナトゥーラはアルラウネの不可解な行動の意味を知りたいようだ。


「んだらぁ、オラだちが連れでぐるだぁ。」


「いかにも、大英雄殿と関わりがあるのであれば我らで交渉し、王都まで同行願うのみ。

 たとえ同行叶わずとも、その答えならば持ち帰ろうぞ。」


 すると、クラフトとツツジが妥協点として提案した。


「……わかりました。自ら出向きたいのは山々ですが、王の決定に逆らうつもりもありません。

 お願いできますか。」


 少しだけ考えた後、ナトゥーラはその提案を受け入れる事にした。


「任されよ。」


「わがっだだぁ。」


 ナトゥーラの言葉に二人は頷いて了承した。


「それでは、わたしはこれで。」


 それを機にナトゥーラは立ち上がり、場を後にする。


「………さて、拙者たちも戦の準備を進めようぞ。」


「んだぁ。」


 ナトゥーラの姿が見えなくなった後、ツツジとクラフトもその場から離れた。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 ー冒険者ギルド・リンドブルム支部ー



 オレンジ色の髪を揺らしながらギルド内を歩く人物がいた。


「レヴィー?いるー?」


「はいはーい、アン、ここっすよー。なんすかー?」


 その人物に答えるのは金髪の無気力な少女。


「あ、いたいた。はい、これ。」


 レヴィを発見したアンは一枚の紙を手渡した。


「……なんすか?これ?」


 その内容を見て、レヴィはアンに質問する。


「見ての通りさ。」


 すると、アンは一言だけ答える。


「えー……ウチがっすか?」


 心底めんどくさそうな表情をするレヴィに


「面倒だけどね。でも、仕方ないさ。だから少しボクに付き合ってよ。ボクも手伝うからさ。」


 アンは苦笑しながらそう言った。


「はぁ……めんどくさいっす。」


「じゃあ、決まりだね。」


 呟くレヴィを横目にアンは快活に言う。


「人の話聞いてるっすか?」


 レヴィがジトっとにらみながらアンに抗議すると


「めんどくさいだけで、断らないって事だよね?」


 アンは笑いながらレヴィに言葉を放つ。


「まぁ、そうっすけど。」


 目をそらしながらそう言ったレヴィは席を立った。


「それじゃ、一回ルイス君のところに行こう。」


「了解っす。」


 そして、二人は冒険者ギルドからルイスの館へと向かうのだった。




作者「いぇーい!意外と長かったでしょ!?シリアスなのに頑張ったんですよ!」


隊長「少し描写が雑じゃないか?」


作者「き、気のせいじゃないカナー?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ