表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/159

もうね、昼食後の陽気と眠気は反則


遅くなりまして!ほんっとうに申し訳ありません!

サブタイトルはほぼ私の言い訳です!


隊長「これより、裁判を開始する。」


えっ?


 

 昼食の後、リーシアに誘われて俺はまた庭に出てきた。

 座っている場所も先程と同じ木の下。



 ––––サァァァァ………



 やわらかな風がゆったりと辺りを撫でるように吹き抜ける。

 そよ風のリズムにのって枝葉が歌い、小鳥達がそれに合わせて踊る。

 そこに、穏やかな優しく陽の光が加わることで食後の眠気を余計に大きくする。


 実に平和で心安らぐ光景だ。


「ふぁ……眠い………」


「ふふ、リラックスされているようで何よりですわ。」


 俺が座り込んであくびをしているのを見て、リーシアが俺の顔を覗きこみ、嬉しそうに微笑みながら言った。


「うん、眠い……」


 俺はうとうとして鈍くなっている頭で答えた。

 景色を眺め、音に耳をすませている上に、木に背中を預けているせいで眠気がマッハで迫ってくる。


「うふふ、お兄様にも可愛らしい一面があるのですね。」


 かなり俺の素が出た発言に、リーシアはクスクスと上品に笑って俺の隣に座る。


「よしてくれ……青年が可愛いとか言葉の並びが似合わねぇよ。

 あと、今さらだけど座ったら服が汚れるぞ。」


 リーシアの言葉選びに少し抗議しつつ、本当に今さらな事を心配する。


「いえいえ、今のお兄様は可愛らしいです。

 それと、服は汚れても問題ありませんわ。お兄様との時間の方が大切です。」


 すると、彼女がほんの少しだけ座る距離を詰めて言った。


 正直、リーシアが純粋すぎて反応に困る。


「そうかい……そりゃあ、重畳(ちょうじょう)。男冥利に尽きるねぇ。」


 とりあえず、鈍った頭を酷使して返事をするが


「あら、わたくしの事を女性として見てくださっているのですね。嬉しいですわ。」


 ……油断した途端にコレだ。

 義妹のように思っているだけなのだが……言葉選びを(おろそ)かにしたらすぐに足をすくうような発言をしてくる。


 いたずらっぽく可愛らしい笑みを浮かべて言うリーシアに


「やっぱ、貴族って怖い。」


 俺は取り繕うことなく本心をもらす。


「お兄様が勘違いさせるような発言をなさるからですわ。」


「そりゃ悪かったな。」


 スンッと悪びれる様子も見せずに言ったリーシアの(したた)かさに、俺は若干の恐怖を覚えた。


「……はぅ……お兄様を見ていましたら、わたくしも少し眠くなってきました……」


 今の恐怖で少しだけ目が覚めた俺とは対照的に、今度はリーシアが眠そうに目をトロンとさせて、その小さな口であくびをする。


 無防備でほんと可愛い。リーシアの写真撮りたい。


  「……ぅぅん、もう少し……お兄様と………」


 早速、うつらうつらしながら寝言のように呟く彼女に


「少し眠ったらどうだ?」


 俺は思わず顔をほころばせて提案する。


「いえ……まだ…たくさん………」


 しかし、どうしても寝たくないのか、眠気とたたかうリーシア。

 目元を押さえたり、目を開こうとしたり……夜更かしをしようとして失敗しそうな子どものようで、非常に微笑ましい。


「時間はまだある。少しなら大丈夫だ。」


 そんなリーシアの頭を撫でながらそう言うと


「んぅ……ぅ?…お兄様……?……!?………お、お兄様?……その、逆に目が覚めました///」


 彼女はなぜか急に眠気から解放されたのだった。


 あっれー?これって眠るパターンじゃなかったのー?

 お兄様予想がーい!なんでー?


 つい、いつものようにラウを撫でる感覚でリーシアの頭を撫でていた事に気がついた俺は手を離し、彼女が目を覚ました原因に頭をひねる。


「ぁ………はっ!お兄様お兄様!わたくし!たった今、大変な事に気がつきました!」


 少しぼんやりとした様子の彼女はハッと急に何かに気がついた様子でさらに近づいてきた。


 もう一度言う。無防備でほんと可愛い。


「ん?どうした?」


 リーシアの突発的な行動に、俺はまたしても頰を緩めながら聞く。


「わたくし、まだお兄様の魔獣さんと触れ合っておりません!」


 すると、彼女はまっすぐな瞳で俺を見つめながらそう言った。その可愛らしい言葉とは裏腹に眼差しは真剣そのものだ。


「あぁ……言われてみれば確かに……」


 そういえば、もともとはリーシアにフェルとサティを会わせることが目的だったな。


 彼女の発言によって、今回俺達がこの館に来た趣旨を思い出した。


 という訳でシュティ、フェルとサティは今なにしてる?


 《どちらも起きております。部屋で主様が帰ってくるのを待っているようです。》


 すると、シュティからそんな報告があった。


 フェルとサティも健気で可愛いなぁ………なんかちょっと罪悪感が……それはさておき、転移でこっちに移動させることはできるか?


 《可能です。》


 フェルとサティが驚くだろうけど……頼めるか?


 《承知しました。》


 ありがとう。じゃあ、俺が合図したらよろしく。


 《はい。》


 シュティにそう頼んでから、俺はリーシアにこう言った。


「リーシア、今からフェル達をこっちに呼び寄せよう。」


「別館からは少し距離がございますが……?声が届くとは思えません。」


 俺の言葉を受けて、不思議そうに首をかしげるリーシア。小首を傾げて疑問符を浮かべる様子がとても愛らしく思える。


「ふっふっふ、そこはお兄様マジックだ。今から目の前にフェルとサティを呼び寄せてご覧にいれよう。」


 そんな彼女に俺はふざけながらそう言い、シュティに合図を送る。


 シュティさん!お願いします!


 《承知しました。》


 俺の合図の後、シュティが転移を発動させる。


 すると……



 –––シュン!



「ガウ!?」「……グル?」


 一瞬で目の前にフェルとサティの二頭が目の前に現れたではありませんか。


 フェルはびっくりしたように真上に飛び跳ね、サティは首をかしげながら冷静に辺りを見回している。


 ……フェル、なんかごめん。

 まさかそんなギャグ漫画みたいに数メートル近く真上に飛び跳ねるほど驚くとは思わなかった。


 あと、サティはその前脚に備わっているブレードを仕舞いなさい。シャレにならない斬れ味だから。


「がう!がうがう!」


「……グル。」


 フェルの驚きぶりに少しだけ反省していると、当の本人が俺の存在に気がついたらしく、尻尾が千切れそうなほどの勢いで左右に振りながら駆け寄ってくる。


 同時に、サティも俺に気がついたようで、のそのそと近づいてきている。ブレードを仕舞い、尻尾を大きくゆらゆらと揺らしているので機嫌は良さそう。


「がうっ!」


 そんな事を考えているうちにフェルが俺に飛びついてきた。


「よーし、いい子だ。びっくりさせて悪いな。」


「クゥ、クゥン……がう!」


 俺が頭やあごを撫でてやりながらフェルに話しかけると、フェルは甘えた鳴き声を出しながら俺の胸元にグリグリと頭を擦りつけた後、元気に返事をした。

 頭に手をやると、耳を垂れて頭を手にぐいぐいと押し付けてくる。


「はわぁ……この子がフェンリルの………綺麗な瞳と毛並みです……」


 フェルを撫でまくっていると、隣にいるリーシアが呟いた。


「おう、フェンリルのフェルだ。図体がそこそこデカイくせに可愛いだろ?」


 そんな彼女の呟きを聞いた俺は笑いながらそう言った。


「は、はいっ!とっても可愛らしい子ですね!……えぇっと、それでですね………もし、よろしければ……その……」


 すると、リーシアはフェルに負けないくらい元気よく答え、もじもじと何かを言いたそうにする。


 ふふふ、リーシアの言いたい事が俺にはわかるぜ。

 リーシアもフェルを触りたいんだな?そりゃそうだ、こんなにサラッサラなのに加えて、銀の毛並みをしているんだから触りたいのも無理はない。


 リーシアの言いたい事を察した俺はニヤニヤしながら提案する。


「リーシアも触るか?」


「はっ、はい!ぜひ!」


 俺の提案に対して、リーシアは青い瞳をキラキラと輝かせて頷いた。


 リーシア可愛い。笑顔の花が咲く、という言葉を如実に体現してる。


「おーけー……フェル、リーシアもフェルのこと触っていいか?」


 そんな事も考えつつも、とりあえずリーシアが急に触ってフェルが驚いたりしないようにする為に確認をすると


「ガウ?ガウゥ……」


 すぐにフェルは『え?やだ……』みたいな反応を示した。


「グルルル……」


 さらに、フェルがリーシアの方を向いて牙を剥き、威嚇するように唸る。


「あ、こら!そんな事したらダメだろ!」


 流石に焦った俺はフェルの頰をぐにぐにと軽く揉みながら怒る。


「クゥ………ガウ。」


 俺に怒られた事で反省したのか、フェルは大人しく引き下がった。


 俺自身も忘れていたが、フェルと最初に遭遇した時は思いっきり威嚇されたんだった。

 その警戒心はいまだ健在らしい。アホの子なのにそこはしっかりしている辺り、流石は野生の獣だ。



 《いえ、これは警戒心というよりは………》


 え?違うの?


 《……言わぬが花、知らぬが仏というものでございます。》


 なにそれ気になる。


 《いずれ判明するでしょう。》


 そか、じゃあ我慢しよう。



 シュティの意味深な発言はさておき。

 すっかり懐かれていた為に忘れていたフェルの警戒心の強さを思い出し、反省しながらリーシアに視線を移すと


「あの………すみませんでした。」


 彼女は下を向いて悲しみを帯びた声で静かに言った。


「リーシアが謝る事はない。むしろ、こちらこそすまん。

 フェルは今でこそ俺にここまで懐いているが、初めて会った時は今以上に威嚇されたんだ。

 忘れていた俺が悪い。本当にすまない。」


 明らかに落ち込んでしまったリーシアに対して、俺は言い訳がましい謝罪をする。


「い、いえ……大丈夫、です……はい、大丈夫です、お兄様………」


 すると、リーシアは顔を上げて引きつった笑みを浮かべながらそう言った。


 ……いや、めちゃくちゃ落ち込んでるのがわかるからね?リーシアはポーカーフェイスが苦手のようだ。


 痛々しいまでに彼女が悲しそうに笑いながら強がるその姿を見て、噴火しそうな勢いで罪悪感が湧いてくる。


「……なぁ、フェル。ちょっとでいいからさ……ダメか?」


 なんにせよ、期待させるだけさせておいてこの結末はあまりにも酷なので、フェルの目を見つめながらお願いする。


「ガウ………」


 そっぽを向いて即座に否定するフェル。


「そこをどうにか……ダメか?」


 しかし、俺も引き下がる訳にはいかない。


「…………ガウ。」


 すると、フェルがしばらくの沈黙の後、俺に瞳を向けて『わかった。』と返事をするように鳴き、リーシアの近くへと歩みよって地面に伏せた。


「あ………フェルちゃん、よろしいのですか?」


 その行動に気がついたリーシアは少しだけ雰囲気を明るくしてフェルに問う。


「……がう。」


 すると、フェルはそっぽを向いて『勝手にどうぞ。』と言わんばかりの塩対応。

 対応の仕方がまるでサティだな。


「フェル、噛み付くなよ?」


「ガウ。」


 念のため俺がフェルに注意すると、フェルは『わかってる。』と返事するように鳴いた。


「リーシア、触ってもいいみたいだぞ。」


 フェルの返事を聞いた俺はリーシアに笑いながら言う。


「あ、ありがとうございます!」


 すると、リーシアはパァッと表情を明るくして元気を取り戻した。


 よかった………リーシアの落ち込み方が今生(こんじょう)最大の絶望みたいな感じでもの凄くいたたまれなかったんだ。

 物分かりの良いフェルには後でご褒美をあげないとな………あれ?フェルが喜ぶご褒美ってなんだ?


 《目一杯に遊んであげればよろしいのでは?》


 そんな事でいいのかな?


 《いいのではないでしょうか。主様と一緒に思いっきり運動する事は何かと少ないですから。》


 んー……まぁ、それもそうか。うん、そうするか。



「で、では、失礼します………」


 シュティと脳内会話をしているうちに、リーシアが恐る恐るフェルに手を伸ばしていた。


「あっ、サラサラとしていてとても気持ちいい手触りです………少しひんやりとしていますね。」


 恍惚とした表情でフェルを撫でるリーシア。心から魔獣が好きだというのがよくわかる。


「銀狼と美少女か………絵になるねぇ。」


 そんなリーシアに頰を緩ませていると


「……グル。」


 後ろからサティが俺に話しかけて(?)きた。


「んー?どったの、サティさんや。」


「グル。」


 俺がサティに応えると、サティは『私にも構え。』と言いたげに距離を詰め、こちらを見つめてくる。


「素直なのはいい事だ。ほれ、ここか?ここがええんか?ほれほれ。」


 普段はクールなのに実は甘えたがりなサティの行動に俺は笑みを深め、アゴの下を撫でてやる。


 わしゃわしゃと撫でられるのが好きなフェルとは対照的に、サティは指の甲や指の腹で優しく、くすぐるように撫でてやると喜ぶ。


「グル……グゥ………」


 撫で始めるとすぐに目を細めながら俺にすり寄り、隣に座った。


「ははは……図体はデカイのにな……これじゃ甘えん坊の猫と大して変わらんぞ。」


 サティ自身も己の体格の大きさを理解しているらしく、フェルよりは控えめに身をすり寄せてくる。

 それでも全長5mはあるのでそこそこ力は強いが。


「お兄様!サラサラのモフモフです!最高の触り心地ですわ!」


 サティと触れ合っていると、リーシアが俺に向かってそう言った。

 その瞳と表情は感動に満ちており、心から満足しているのがよくわかる。


「お気に召したようでなによりだ。」


 自分の事のように嬉しくなった俺はリーシアに笑いかけながら返答すると


「……がう。」


 フェルが『……よくない。』とスネた様子で小さく声を上げる。


 うーん、明らかにご機嫌斜め……どうしたものか……


 俺は空を見上げて考え込む。


 《不機嫌なのは知らぬ他人に触れられているのも理由の一つなのでしょうが、おそらくは主様と離れたのが一番の理由ではないでしょうか。

 部屋で主様の帰りを待ちわび、その主様が目の前にいるにも関わらず触れられない。それが最たる理由かと。》


 あまりフェルが不機嫌なのもリーシアに申し訳ないので、なんとか解決できないかと思案しているとシュティがそんな事を言った。


 わーい!ものすごい罪悪感!そりゃあ不機嫌にもなるよね!


 《わたくしがその立場なら泣きますね。……それだけが理由ではありませんが。》


 え?他にも理由があんの?


 《失言でした。お忘れくださいませ。》


 えー、あるじさまは気になるなー?


 《……幼き心であれども想いはここに……例え異種とて馳せる想いは同じ、でございます。》


 ヒントなのか答えなのか知らんが、とにかく俺には理解出来ない事が理解出来たぞ。


 《左様でございますか。では、諦めてください。》


 わぁい、シュティさんが反抗期ぃー!


 俺がシュティの言葉にふざけて返していると、彼女(?)は淡々と言葉を紡ぎ始めた。


 《……やはり、その姿であるが故にアドバンテージなど皆無ですね。むしろ、どれほど焦がれようとも報われる日はこない。

 ………仕方ありませんね。ここは志を同じくするモノの(よし)みです。もし、望むならばわたくしが少しだけ力添えすると致しましょう。》


 あの、さっきからなに言ってんの?


 《主様が主様であるが故に生み出された事象に対する言葉です。つまり、独り言ですのでお気になさらず。》


 お、おう、わかった……


 シュティの謎の発言、その対象が俺ではない事は理解出来るのだが……この場にいるのは俺を除くとリーシアとサティとフェルだ。

 しかも、この内のフェルとサティは魔獣……となると、消去法で対象者はリーシアという事になるが……うん、深くは考えないようにしよう。

 ぶっちゃけ、考えてもわからん。


 《それがよろしいかと。》


 君のせいだよ、君ィ。

 ま、いいや。


 そんなこんなでシュティとの会話を打ち切り、再びリーシアたちに視線を向けようとすると


 《あ、それとフェンリルの機嫌を良くし、その上で全員が納得する状況を作り出したければこうしてください。》


 シュティがそう言って脳内にイメージ画像のようなモノを浮かべた。


 ……なるほど!その手があったか!!ありがとう!

 善は急げ!今すぐやろう!


 眠気でまだ若干鈍っている思考のせいで俺はその案を可決し、実行に移してしまう。



「フェル、リーシア、こっちおいで。」


 空に向けていた視線を戻してフェルとリーシアの名前を呼び、手招きをする。


「がう?」


「お兄様?いかがなされました……?」


 フェルもリーシアも首を傾げてはいるが、何も疑う様子なく接近してくる。


 あ、リーシアが四つん這いで近寄ってきてるけど、ドレス着てそれするって器用だな……まぁ、それはいいや。


「んじゃあ、リーシアはこっちな。おー、軽い軽い。」


 そして、近寄ってきたリーシアを持ち前の化け物パワーで持ち上げ、俺の膝の上に乗せる。

 正確には俺があぐらをかいて空いたスペースにリーシアをすっぽりと収める感じだが。


「へっ……!?……っ!?おっ、お兄様!?」


 すると、リーシアが耳まで真っ赤になりながらしどろもどろに言葉を発する。


「んー?どしたー?あ、嫌だった?」


「ええっと!あのっ……そのっ、えっと!……いえ!全く嫌ではありましぇん!……うぅ///」


 あ、噛んだ。恥ずかしくて肩をすぼめるのリーシア可愛い。


 言葉を噛んだ羞恥心からか、顔を赤くしたまま借りてきた猫のように大人しくなる彼女。


「そんで、フェルはここ。」


「がう!」


 そんなリーシアを放置して、今度はフェルを俺の横に座らせる。あ、ちなみにサティの反対側ね。


「これでよーし。」


 するとほら、俺のあぐらの上にリーシアで左右にフェルとサティの配置になる。

 これで全員が近くにいて、それぞれに触れ合えるって寸法だ。それと、俺は木に背中を預けているので楽。


「これならフェルとサティにもかまえる事が出来て、リーシアもぼっちにならないな。リーシアもフェルたちに触れ合える。実に合理的だ。」


 所々がすっ飛んだ理論で満足気な俺。


「がう!クゥン……がう。」


「……グル。」


 フェルとサティも異論はないらしく、俺とリーシアの左右をしっかりとキープしている。


「ぅぅ……わたくし、重くないでしょうか……」


 すると、実に乙女な発言をしたリーシア。

 萎縮しているのか、少し肩身が狭そうにしながらうつむいている。


「心配するな。むしろ、こっちが心配になるくらいには軽いから。」


 とりあえず、肩の力を抜いてもらえるようにフォローする。

 実際、リーシアはめちゃくちゃ軽い。中学一年生くらいの年齢でドレスを着ていることを加味しても、体感でだいたい30kg半ばあるかどうか。


 いくら140cm程の低身長とはいえ、ここまでくると痩せすぎである。栄養状態は問題ないのだろうか?実は栄養失調とかじゃないよね?


「お、お兄様がそうおっしゃるなら……」


 俺の心配など露知らず、リーシアはようやく肩の力を抜く。


「あぁ、お兄様を信じなさい。あと、俺を背もたれにしていいぞ。そのままじゃ逆にしんどいだろ?」


 しかし、彼女は以前として背筋は伸ばしたままである。

 肩の力を抜いてあぐらの上に乗っている状態でそれは流石に辛いだろう。……にしても、さっきから器用だな。


「えっ…!?それは、お兄様に密着しても良いということですか……?」


 リーシアは俺の言葉に少し肩を跳ねさせてからこちらを伺うようにこちらを見る。


「それ以外に方法があるか?」


 何を遠慮することがあろうか、そんな考えのもと俺はリーシアに返事をした。


「あ、いえ、ありませんね。はい、ありません。

 ……ですので、これは必要措置……そう、必要措置ですから………えっと……失礼、します……///」


 ようやく観念したらしい。

 ゆっくりと、何か呟きながら恐る恐るといった様子で俺の胸に背を預けてくる彼女。


「……はぅ………近いです…///」


 やがて、ぽすっと胸元に頭を添えて俺を見上げた彼女はどこかホワホワとしていて、夢を見ているかのような表情を浮かべている。


「はい、よく出来ました。」


 そんな彼女に優しく笑いかけてから金髪に手を伸し、ポンポンと軽く当たる程度に何度か手を上下させる。


「〜〜〜〜っ!?」


 《あ、これキャパシティオーバーですね。》


 えっ?


 シュティの唐突の発言に理解が追いつくよりも先に、リーシアが くたっ とこちらに体重を預けてきた。


「おい!どうしたリーシア!?」


 リーシアが急に倒れこむようにこちらに体重をかけてきたのが気になった俺は彼女の顔を覗き込む。


 すると……


「きゅう………」


「き、気絶してる……!?」


 リーシアは目をぐるぐると回したかのように気を失っていた。


 驚きを隠せない俺をよそに、シュティがこう言葉を放った。


 《純真さと男性に対する免疫のなさからこの少女の心の容量を現在の状況によって大きく上回ってしまったようです。》


 つまり?


 《主様がトドメを刺しました。》


 物騒な言い方はやめて!?



 なんとなくサスペンスな雰囲気になりそうな言い回しに抗議すると



 《では、別の言い方にしましょう。

 主様が頭をポンポンした事で少女の心が限界を迎えました。》


 ものすごくやわらかい表現をしてくれた。



 わぁ、なんか前にも似たようなことあった気がするー……


 《主様が少女を抱きかかえた時ですね。》


 ………この子ほんとに純真過ぎない?こんな様子だと見合いとかも普通に出来ないんじゃないのか?


 《さぁ?少なくとも主様が心配する事ではありませんね。》


 うーん、それもそうだな。



 シュティのもっともな発言を受けて、第三者の俺が介入する事ではないなと結論を出す。



 《………朴念仁(ぼくねんじん)唐変木(とうへんぼく)、鈍感。》



 すると、シュティは静かに、けれども少しの呆れを含んだ口調で俺に言ってきた。



 ……ねぇ、最近シュティさんの口が悪い気がするの。

 なんで?前はあんなにも忠義を尽くしてくれて堅苦しかったのに……あの可愛いシュティは何処(いずこ)へ……


 《さぁ、気のせいでは?ご自分の胸に手を当てて考えてくださいませ。

 わたくしというものがありながら最近になって口の悪い冥土を雇った……あ・る・じ・さ・ま?》



 すると、シュティはスネた口調で俺を責め立てるように言葉を放った。

 ていうか、『自分で考えろ。』って言ってからすぐモロに答えを出してくる辺りがすごくキュンとくるんだけど。

 ま、それはともかくとして、心当たりがある俺はシュティに問いかける。



 なぁ、もしかしてだけどさ。


 《はい。》


 ベルを雇った事に対してかなり根に持ってる?

 割と反対する感じだったもんね?


 《……さぁ。》



 すると、少しの沈黙の後に曖昧な返事。

 あれかな?構ってほしくてスネちゃうめんどくさい系彼女かな?



 根に持ってるじゃん……あ、それとアレもか?

 ベルを雇った日の夜に話をするはずだったのに完全に忘れてた俺への遠回しな抗議?


 《はぁ……どうしてこういう時だけ主様は勘が良いのでしょうか。》



 俺の言葉に対して、シュティは少しため息をついたあとに不服そうな声色で言った。

 けれど、その中にはどこか嬉しそうな雰囲気も混ざっていて非常に愛らしい。



 お、当たってるのか。ははは、愛いやつめ。実体があれば抱きしめてやるところだ。


 《では、実体化するのでお願いします。主様からの抱擁はぜひとも味わいたいので。指をくわえて見ているのはなんとも焦らされているようで落ち着きませんから。》



 俺の冗談めかした発言を機に、シュティが大真面目な声で畳みかけるように言い放った。



 ……………え?


 《なんて……ふふっ、冗談でございます。ご安心を。》



 予想外の展開に固まっていると、シュティがすかさずそう断りを入れてきた。

 クスクスと優しく笑うような口調は今までとは打って変わってかなりフランクな印象を受ける。



 な、なんだ、びっくりさせるなよ………全然、それはもう全くもって冗談に聞こえなかったけど……


 《実体化しようと思えば出来ますからね。あながち嘘と断ずる事も出来ませんよ?》


 マジですか……


 《はい♪……それに、わたくしが実体化すれば様々な欲求のはけ口にして頂いても構いません。》


 ちょ!?ほんと急になに言ってんの!?


 《わたくしは主様の一部です。

 ですから、わたくしをどの様に扱おうとも主様が自分自身をいじっているだけ……なんの気兼ねも罪悪感も躊躇も必要はございません。あくまでも自分だけの行動ですから。》


 よし、シュティよ。いったん黙ろうか。クールダウンだ。何事も冷静にな?


 《……これは失礼致しました。申し訳ありません。

 わたくしとした事が少々お(いた)が過ぎたようです。》


 よし、冷静になってくれたな。なら問題ない。

 とりあえずまぁ、なんにせよ……体は大切にな?


 《ふふっ、主様らしいですね。》


 当たり前だバカ。というか、シュティが俺の扱い方をよくわかってる気がするんだが……


 《当然です。()()()()()()()()()し、()()()()()()()()()から。》


 なんかその言い方だと今後は見てくれてないみたいに受け取るが?


 《おや、これは失礼しました。今も、これからもずっと貴方様のお側にいます。ずっと貴方様を見守っています。》


 チクショウ、お前は最高の相棒だよ……一心同体とはまさにこの事か。よく言ったもんだな。


 《わたくしと主様の場合、文字通りそのままの意味ですよね。》


 冗談抜きで同じ身体の中に存在してるからな。


 《ふふ、嬉しい限りでございます。》


 その魂はきっと、二つで出来ていた……


 《触れちゃいけないモノ()に触れるのでやめてください。安易な考えで行うと怒られますよ。》


 すまん。


 《いえ、ご理解いただければ構いません。……ふふっ。》


 ?……どうして笑うんだ?


 《いえ、ただ貴方とこうしてお話し出来ているという現実がとても幸せなだけです。》


 ……そうかい。シュティの考えることはよくわからんな。


 《わたくしは人ではありませんから。》


 ははは、それもそうか。

 まぁ、それはともかくとして今日の夜あたりに余裕があれば話そうか。


 《!……はい、約束ですよ。》


 あぁ、そうだな。約束だ。



 そんな訳でささやかな反抗期を迎え、すぐにそれが過ぎたシュティとそんな約束を交わした。




 –––10分後–––



 少しの間、フェルとサティに構いながらリーシアの寝顔を眺めていると


「……んぅ……ん……?……ぁ、お兄様……」


 リーシアが目を覚ました。

 まだ少しふっくらとしている頰に、全体的にあどけなさを残した顔、開いた青い瞳をボーッとさせて徐々に意識を浮上させている。


「…へ?おにい、さま……?」


 やがて、意識を急速浮上させたリーシアは目を点にして呟いた。


「はーい、お兄様ですよー」


 リーシアの言葉に、俺は手をひらひらと振りながらふざけまじりに応える。


「!?どうしてお兄様がこんなに近く……い、いえっ!それよりもっ……っ!?「いでぇ!?」〜〜〜〜っっっ!!」


 今のはまさに『ゴチン!』という擬音が当てはまるであろう。


 三行で説明しよう。


 俺

 リーシア

 ごっつんこ。


 《サボらないでください。》


 はい、すみませんでした。


 眠るリーシアの顔を覗き込んでいた俺だったのだが、目を覚ました彼女が急に頭を上げたおかげで俺の顎下にクリティカルヒットをかましてくれたのです。

 眠りやすいようにリーシアの頭を俺の腰の辺りまで位置をずらしていたのが災いした。


「い、いたいです……お兄様っ………」


 頭を抑えて涙声を出すリーシアだが、痛いのは俺も同じだ。下手すれば『俺が舌を噛む』という二次被害が出るところだった。

 しかし、これで怒るような器の小さい俺ではない。


「大丈夫、俺もだ……とりあえず、いったん落ち着こうか。……よいしょっ、と。」


 ひとまずリーシアを膝の上に乗せ直して位置を元に戻す。


「は、はいぃ………お兄様、申し訳ありません。」


 今彼女がどんな表情を浮かべているか知る術はないが、痛みに悶えている事だけは震えている肩を見ればわかる。


 なんでわかるかって?そりゃあ、生まれたての子鹿みたいにプルプルと震えてるからな。


「別に気にしてないからいいよ。リーシアこそ大丈夫か?かなり痛そうだけど。」


 俺はすでに痛みが引いているが、リーシアの方はどうなのだろうか。


「まだ少しジンジンします……」


 どうやらまだ痛いらしい。


「よしよし、痛かったな。」


 彼女の様子を見た俺はとりあえず頭のぶつけた部分をを撫でてやる。


「あっ、お兄様、くすぐったいです……」


 リーシアは美しい金髪を揺らしながら身をよじらせる。


「あんまり動かないでくれ。撫でにくいんだ。」


 ラウと違って動くリーシアに少しだけ苦笑しながらそう言った。


「そう言われましても……んっ……!ふぅっ……!」


「………」


「ぁ…だんだん慣れて………気持ちよくなってきました……」


「…………」


「そこ……そこをお願いします……ふぁ…っ……」


「……………」



 なぁ、シュティさんや。


 《はい、なんでしょうか。》


 俺はただ頭を撫でてるだけだよね?


 《そうですね。》


 なんか……リーシアがイケナイコトしてるみたいな反応するんだけど………


 《そうですね。こんな小さな子にそんな感想を持ってしまう主様がイケナイ人ですね。通報待ったなしでございます。》


 通報はやめよう?

 ていうか、通報ってどこに……でもまぁ、言われてみれば確かにそんな事を考える俺が最低なのか。


 《主様が何もしなければ問題ありません。考えるのは自由ですが、行動に移すとアウトです。》


 うん、そうだな。



 シュティとのやり取りのおかげで俺が無心でいれば良いという事がわかった。


「はぁ……これはクセになりますね………」


「それは重畳。」


「フェルちゃんやサティちゃんが懐くのも理解できます……」


「……そんな大げさな。」


「本心です。」


「どうも。」


 こんな感じでリーシアとふんわりとしたやり取りをしながら俺たちはしばらくの間、庭でのんびりとしていたのだった。



 しかし



 《む、主様、レーダーに感あり。》


 ん、報告せよ。


 《龍が一体と人間が一人、この領地に向かって来ています。速度はおよそ180km/h、到達予想時刻は10分後です。》


 はぁ!?龍が!?しかも領地まであと30km!?



 ノリが良いシュティの大真面目な報告によって一刻を争う事態となった。





隊長「被告人、何か申し開きは?」


被告人(作者)「……2〜3年ぶりの艦隊指揮、めっちゃ増えてる改二、ぬるくなった2ー4、そして効率的に回しすぎた遠征、バケツ集めに没頭……再びハマって執筆を疎かにしてしまった罪……言い訳のしようもございません。」


隊長「他にもマスター、航空機パイロットなど様々な証拠があるがそれについては?」


被告人「………同じく。」


隊長「そうか。では、被告人は有罪。なにか刑罰のリクエストがあるものは名乗り出る事とする。

以上、閉廷。」



作者(バカ)「はい、という訳でお久しぶりでございます!いやはやつい先日バイトを引退しまして時間が有り余っているのに書かなかったのはサブタイトル通りひたすら寝てました!

明日から少し卒業旅行という事で一人旅をしようと思いますが!移動時間は暇なので書きますよぉ〜!


あと、放置してても増えてるブックマークには本当に感謝であります!

ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」


隊長「長い。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ