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【012 回想バクラの戦い(一) ~白銀の竜・漆黒の一角獣~】

【012 回想バクラの戦い(一) ~白銀の竜・漆黒の一角獣~】



〔本編〕

 話はさかのぼり龍王暦一〇五〇年二月一八日。ジュルリフォン聖王子がバルナート帝國に対して宣戦を布告した日である。それから十日後の同年同月の二八日。ソルトルムンク聖王国の軍は各地域の兵を徴集しながら、バルナート帝國との国境の町『バクラ』のはずれの草原に進出した。聖王国軍は、近衛兵を含め十五万という大軍であった。

 しかしながら、まだこの時には予定の五万あまりの自国の兵とバルナート帝國を除く六カ国の軍が加わっていなかった。この頃のソルトルムンク聖王国は聖王国とバルナート帝國を除くヴェルト大陸の残り六カ国全てが自分側につくと信じて全く疑っていなかった。二八日の黄昏たそがれ時、聖王国軍がバクラの南方の草原にたどり着いた時、そのバクラの北方の草原にはなんと十万もの大軍が展開しており、その中央付近に一辺十メートルに及ぶ二つの巨大な旗がたなびいていた。

 一つの旗は赤地の横長に中央部に白い大きな円があり、その円から上下左右に白と黒のラインが伸びている そして中央部の白地の円の中に黒銀の剣に白銀のドラゴンが巻き付いている姿が描かれていた。バルナート帝國の国旗であった。

 しかし、聖王国軍を驚かせたのは、もう一つの旗の方であった。その旗は群青ぐんじょうの地に、中央部に大きく漆黒しっこく一角獣ユニコーンが前足をあげて、いなないている姿が描かれていた。西の小国ミケルクスド國の国旗であった。見間違えようがないものであった。

 この時初めて、ソルトルムンク聖王国はミケルクスド國がバルナート帝國側についたのを知ったのである。

 既に、この地にバルナート帝國、ミケルクスド國人員十万人、竜五万頭の配置が整っていた。聖王国軍は先手をとられた形であったが、聖王国の優秀な三将軍が冷静に兵の配置を指揮し、バルナート帝國、ミケルクスド國、二國連合軍と対峙たいじすることとなった。

 聖王国の優秀な三将軍とは、天時てんじ将軍ブルムス、地利ちり将軍グラフ、人和じんわ将軍ムーズのことである。聖王国では天・地・人。つまり天の時、地の利、人の和がなければ何事も成し遂げられないという考え方があり、聖王国の軍事の最高責任者にその名がかんされているのである。

 さて、聖王国軍の誤算が他にまた一つあった。バルナート帝國は、(聖王国軍が構想していた机上の戦略の)七カ国連合に対し、帝都を中心にして守りを固めるとみていた。まさか、帝國が国境付近に、しかもこんな大軍団を展開してくるとは予想していなかったのである。聖王国としては帝都に着く間に軍の編成を終わらそうと勝手に思いこんでいたのである。

 さらに、この現状を見てもなお聖王国軍には楽観視していることがあった。それは、帝國側から積極的には攻めてこないという考え方である。ミケルクスド國の裏切り――聖王国はそう考えている――は予想外のこととしながらも、まだ戦力差で優位に立っているため、バルナート帝國は小規模な兵の投入という消極的な攻撃をするか、或いはこのまま何もせず対峙しているだけだろうと安易に考えていた。

 非常に甘い主観的な考え方であったといえる。帝國側からすれば敵兵が集まりきらない今がチャンスであり、あとは逐次ちくじ投入されてくる敵兵を各個撃破すればいいのだから……。




〔参考一 用語集〕

(神名・人名等)

 グラフ(ソルトルムンク聖王国の三将軍の一人。地利将軍)

 ジュルリフォン聖王子(ソルトルムンク聖王国の王子)

 ブルムス(ソルトルムンク聖王国の三将軍の一人。天時将軍)

 ムーズ(ソルトルムンク聖王国の三将軍の一人。人和将軍)

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅ウバツラの建国した國)

 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯マナシの建国した國。金の産地)

 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦トクシャカの建国した國。飛竜の産地)

(地名)

 バクラ(ソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の国境にある町)


〔参考二 大陸全図〕

挿絵(By みてみん)


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